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LIVE REPORT

Japanese

blgtz

Skream! マガジン 2012年03月号掲載

2012.02.04 @原宿ASTRO HALL

Writer 沖 さやこ

2008年8月に行われたミニ・アルバム『blgtz』のリリース・ワンマン・ライヴから3年半。本当の意味でようやく、blgtzがステージに帰って来た。ステージ中央から真っ直ぐ3mほど、花道が作られている。

3年半前と同じく、この日のオープニング・アクトはTHE NOVEMBERS。青く薄暗いライトの中、黒を基調とした衣装でメンバーが登場。花道まで出てきた小林祐介(Vo&Gt)をフロアは歓声で迎えた。1曲目「dysphoria」。髪を振り乱しながら繊細なフレーズを爪弾くケンゴマツモト(Gt)、アグレッシヴなドラミングで聴く者の心を突き刺す吉木諒祐(Dr)、淡々でありつつもうねるように確固たるリズムを刻む高松浩史(Ba)。ソリッドでストイック、虎視眈々と獲物を狙うような緊張感。地下から突き上げるような重量感のあるエネルギーを帯びる。

「永遠の複製」「ニールの灰に」「日々の剥製」とダークな楽曲が続く。心臓や体内に流れる血液を刺激するような、生々しい音像。怪しげで不穏なムード。一見クールに見える佇まいだが、水面下で煮えたぎるような衝動が内包されている。湿度を持った小林の声、歌が全身を駆け巡る。迫り来る狂気。“この音に殺されるのではないか”と思うほど緊迫したステージ。そこには死というものに対峙しながらもしたたかに紡がれる、圧倒的な生命力しか存在していなかった。噴き出すような血液の温度とスピード、それが織り成すリズムと絶叫は美しく、こちらはひたすら飲み込まれてゆく。「dnim」「彼岸で散る青」と、最後まで4人の音はぶれることなく、全てが同じ方向を向いていた。たった6曲、30分のステージで、THE NOVEMBERSは己の生き様を強烈にフロアへ焼き付けた。

映画館の上映直前に流れるブザー音。この日の主役、blgtzの登場だ。田村昭太がひとり、花道まで登場した。しっとりと「Lita」を弾き語ると、途中でステージにバンド・メンバーが。“ようこそ”田村はそう呟くとステージへ。同じ場所に集った4人は、ひとつひとつの音を聴き手の心に打ち込むように音を奏でる。高らかな胸躍るリズムで展開される「イデオロギー」、「ハードコア・サウンドスケープ」「心臓をアルコールに漬けて」と、ハートを振り回す挑発的な衝動を繰り広げる。清涼感が溢れる歪んだ爆音。それに突き動かされるように、田村は高々とギターを掲げた。

この日は昨年リリースされた『同時に消える一日』のリリース記念ライヴ。だがblgtzは過去の楽曲も多く披露した。それゆえだろうか、このライヴはレコ発ワンマンと言うより、田村昭太の“blgtz”という音楽人生のドキュメント、と言ったほうが正しいかもしれない。それはまるで長編映画を見ているような、ドラマティックな心地良さだった。田村と多田祐輔の奏でるギターのコントラストと呼応が美しい「New Song」、田村のファルセットと音色が鮮やかに滲む「瞬間のドキュメント」と、過去の楽曲が現在形のblgtzによってまた新たな息吹を宿す。「リセット」では会場の灯りが消え、田村が手に持ったスポット・ライトだけがゆらめく。花道に倒れ込みながらも彼は歌うことをやめなかった。昔のblgtzは、自分自身の傷を埋めるために、外界からの痛みを防ぐように音を紡いでいたような印象があった。だがこの日、blgtzはひたすら外へと音と言葉を発散していた。研ぎ澄まされた轟音が、心臓に真っ直ぐ飛び込む。全身が幸福に包まれていくのを感じた。

“ここから勢い良く復活していく”と語り「stella」へ。優しく切ない名曲だ。フロアをしっかりと見つめながら、田村は言葉をひとつひとつ丁寧に刻んでゆく。涙だろうか、途中声が詰まる場面も見受けられた。長い間沈黙を貫かざるを得なかった彼の苦悩、それを乗り越えてからの今。そのときに感じた彼の思いがこの1曲に凝縮されていたようだった。「フィクション」ではTHE NOVEMBERSの小林がギターを持って登場。5人の音が万華鏡のように鮮やかな色を放つ。闇を飲み込むほどの強い光を放つ「DJ」で加速し、眩しくて真っ直ぐ壮大な「パラード」は心と心が接するような熱を帯びる。繊細でがむしゃらな音像をぶちまける「コントロール」。バンドはどんどんひとつになってゆく。

「plastic」の前、田村は“同じ場所に一緒に向かっていけたらいいなと思います”と語っていた。その言葉通りこの日のステージは、アンコールの「くしゃみ」までしっかりとフロアひとりひとりと手を握り、目指すべき場所へと連れて行くような優しさと力強さに溢れていた。鋭さ、強さ、穏やかさを持った彼はどこまでも勇敢だ。確かにblgtzは新たな扉を開いたのだ。それを改めて確信した一夜だった。

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