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LIVE REPORT

Japanese

KAIKOO POPWAVE FESTIVAL '10

2010.04.10 @東京晴海埠頭客船ターミナル特設ステージ

Writer 佐々木 健治,遠藤 孝行

1日目:Reported by 遠藤 孝行

無料送迎バスは長蛇の列、会場に到着するともう人で溢れかえっていた。受付を済ませゲートが開くのを待つ。この始まる前の何とも言えないワクワクする感じが皆さんそうだと思うが好きだ。会場に入ってすぐに目に飛び込んで来るのが海。この景色は格別だ。天気が良いのも背中を押して早くもテンションが上がる。たまたま会った友人とも「ここだったら音楽なくても半日は過ごせるよね」なんて会話をする。もちろん今日はFESTIVAL。音楽がメイン。お酒をお供に素敵な一日が始まった。
一日目は曽我部恵一BANDからスタート。トップ・バッターがこのバンドを観れるのは贅沢な事だろう。この日も熱量のある演奏を聴かせてくれる。最初は少し小さいかなと思った音量も場所を変えればそんなに気にならない。やはりMC込みの「テレフォン・ラヴ」は名曲だ。海風がとても心地いい。続いてはテントの中に作られたBLACK EMPEROR STAGEでEccy。小さなステージに太いベースの音が響き渡る。テントにはもう入りきれないほど人が溢れている。HIPHOPやダブステップを経由しながら大きなグルーヴを作っていく。ストイックな感じに観られがちな所もあるが今回はそんな所は全く見せず、オーディエンスと呼吸を合わせるようにライヴを組み立てていく姿はとても良かった。最後はBJORKの「Hyperballad」のリミックスで〆。素晴らしいステージだった。続いてはPSG。注目度もグッと上がってテントはもうすし詰め状態。彼らの事は初めて観たのだけれど、多分この日一番気持ちを持っていかれたのはこの3人組だ。オーディエンスを5秒もかからない内に取り込む瞬発力といい、トラックの格好良さといい全てが破格だった。リードトラック「かみさま」では観客が自然と歌い出す場面も。攻撃的でもなく説教臭くもない、だけど胸に突き刺さる様なラップはとても印象的。それをエンターテイメントにまとめ上げるのだから凄い。沢山の人に聴いてもらいたいアーティストだ。
続いてYOUR SONG IS GOOD。野外がとても似合うバンドだ。インストものも歌ものの独自のパーティ感に落とし込んでいく。演奏力も確かで盛り上がらない訳がない。とても丁寧なMCも演奏の派手さと比べるととても面白かった。アコースティックにしっとりと歌われた「あいつによろしく」が感動的。豪快な演奏の中にやはり音楽への愛が溢れていてこの日のベストに上げる人も多いだろう。続いてテントのBLACK EMPEROR STAGEに戻ってSKYFISH。この時点でテントに入るのさえ一苦労。POPGROUPに所属しHIPHOPを軸としながらダンス・ミュージックやバイレファンキを取り込む彼のスタイルはこの日も異彩を放っていた。ラッパーを従えてのステージだったが基本はビートとフックでオーディエンスを盛り上げていく。沢山のアイデアが盛り込まれたSKYFISHのサウンドはとても刺激的だし、どのジャンルにも収まらない躍動感がある。
さて続いてはこのフェスでは異彩を放つDEXPISTOLSの登場だ。若いオーディエンスがグッと前へ押し寄せる。1曲目はSEX PISTOLS「Anarchy In the U.K.」でスタート。SEX PISTOLSの生みの親であるMalcolm Mclaren死去のニュースの直後だっただけに追悼の意味もあっただろう。もちろんフロアは爆発。一気に自分達のフィールドへ引き込む。後半をループさせながらエレクトロへ。そこからはフィジェットやHIPHOPを織り交ぜながら攻撃的にビートを繋いでいく。自分が今まで観た中で一番ストイックで格好いいDJだった。続いてそのままケン イシイ。このまだ明るい時間でケン イシイを観るのは何だか不思議な気分。踊る気満々のオーディエンスが増える。BPMの早い固いビートがフロアへ投下される。この人はどこで観てもクールな姿勢を崩さない。この日は「I Feel Love」のREMIXを挟みながら昼間のテントの中をディープなダンスフロアに変えていた。ケン イシイも終盤この頃から段々と涼しく少し寒いくらいになった。日が落ちるとまた景色が素晴らしい。
メイン・ステージのKING & QUEEN FIELDへ行くとtoeが始まる。一番大きなステージだが後ろまで人がびっしり。toeの人気の高さを伺わせる。Nujabesのカバーも飛び出し、かなり気持ちの入ったステージ。エモーショナルなドラムが全体を引っ張る素晴らしいライヴだった。彼らは多分ライヴで観る事によって魅力が増すアーティストだろう。続いてまたテントに戻り降神。初めて観る彼らのライヴだが、こんなにも幻想的で神秘的なものだとは思わなかった。反復されるビートの上で流れる様に歌われるラップは話しかけられるスピードでそっと寄り添う。オリジナリティ溢れる降神のライヴはとても感動的でハッと何かを気づかされるようなメッセージを含むとても暖かいものだった。ラストはメインに戻り石野卓球。ロケーションも相まってフロアはとてもいい感じ。DJもオープンでポップなグルーヴでグイグイ引っ張っていく感じ。最後にこんなにも踊らされるとは思わなかった。DJが終わった後、少し今日の余韻を噛み締めながら家路へ。いよいよKAKOOも最終日の二日目へ。

1日目:Reported by佐々木 健治

KAIKOO POPWAVE FESTIVAL’10初日。まず、僕が思い出したのは2005年のKAIKOOよりも1年早い2004年に始まったRAW LIFE。D.I.Y.の精神に則ったインディペンデントなフェスの先駆けとして、(あらゆる意味で)伝説となっているRAW LIFE。
僕は、2004年の夢の島と、2005年の千葉県君津市でのRAW LIFEに遊びに行ったのですが、とても新鮮な体験だった。ちなみに、その2年ともKAIKOOを、POPGROUPと供に発起したDJ BAKUも参加していた。そこには試行錯誤と生々しく熱気に満ちたアイデアと、音楽への愛情が溢れていました。夢の島では、メイン・ステージが至近距離に二つ直角であり、体の向きを変えると次のステージが見えるという配置で、ライヴ中に次のステージで音出しのリハーサルが行われて、音がバッティングしていた記憶がある。そして、君津市の廃墟のようなビルで行われた2005年の夜、廃墟の中の休憩所でたくさんの人々が身体を寄せ合って眠る姿は、さながら野戦病院のよう。そう言えば、ボヤ騒ぎもあったなあ。2階にいたら、煙が階段から昇ってきて、焦って階段を降りたんだ。懐かしい。
そんなこんなも、とても楽しい思い出として僕の中に残っているし、こういうことができるんだと思った人は、絶対に多いはず。
2004年以降に生まれたD.I.Yのフェス(名称にそれを用いられていなくても、フェスと呼べるイベントも含めて)は、このRAW LIFEから受けた刺激、影響がかなり大きいはず。別に今さらそんなことを長々と書くまでもないが、今回のKAIKOO一日目を過ごして思ったことは、RAW LIFEで感じた理念、スタイルはそのままに、全てがフェスとして美しく成熟したものだったということ。なぜKAIKOOの軌跡に合わせて書かないかと言うと、僕は今回初めてKAIKOOに参加することができたから。2008年の横浜も予定が合わず、泣く泣く断念したので、とてもワクワクしながら、この日を迎えた。エントランスよりも手前にあるDJブースに驚きながら、会場に足を踏み入れた。
3つのステージが並ぶメイン・ステージでのgroup_nou。独特のエレクトロ・HIP HOPで踊り、間髪入れずにWRENCHがスタート。この転換のスムーズさは二日間通して変わらず、ストレスを感じることがなかった。ほとんどの人達が目当てのバンドだけでなく、前後のライヴを共有し、フェスならではの未知との遭遇を楽しんでいたところも素晴らしかった。
group_inou、WRENCHというそれぞれ独自のエレクトロなスタイルを確立している二組に続いて、ソウル・フラワー・ユニオンの登場。まさに貫禄のライヴ。「うたは自由をめざす!」「海行かば 山行かば 踊るかばね」などで、踊りまくる。音楽性とメッセージ性の両輪でこれほどポジティヴなヴァイブを生み出すライヴは、ソウル・フラワー・ユニオンにしかできないでしょう。
その後、フード・コートでお腹を満たし、YOUR SONG IS GOODへ。相変わらず、熱いライヴ。そう言えば、YSIGを初めて観たのは、2004年のRAW LIFEだった。ベースの弦が切れるアクシデントにも「あいつによろしく」を急遽演奏して大盛り上がり。フェスがとても似合うバンド。
その後、DJブースに移動して、THINK TANKのYAZIさんのDJで気持ちよく踊る。そして、YSIGでも、DJブースでも、小さな子供が踊る姿がチラホラと。こういう光景は、音楽がしっかりと生活に根ざしている証。本当に嬉しくなる。子供たちもまた楽しそうだし。
そうそう、今回のKAIKOOは中学生までは無料だったんです。残念ながら、ほとんど見かけなかったけれど、中には制服で様子を見にきたという感じの学生も。こういう試みは、知らない世界、刺激的な音や大人の遊び方に触れる機会として素晴らしいと思うので、もっと広く定着してほしい。
そして、こちらも久々に観るREBEL FAMILIA。秋本“HEAVY”武士のぶっといベースとGOTH-TRADの強烈なトラック。強靭な意志の塊としかいいようのないストイックなベース・ミュージックにノック・アウト。
REBEL FAMILIAが終り、メイン・ステージに移動するとtoe。心地よいバンド・アンサンブルと歌声が、夕暮れのメイン・ステージにバッチリはまって気持ちいい。後から聞いた話では、nujabesのカヴァーもやったとか。聴きたかった。
そして、DJ BAKUのドラムン・ベースを軸に、様々なジャンルを横断するDJを堪能。石野卓球のガチなテクノで少し踊ってから、いとうせいこうへ移動。18年ぶりにラッパーとして復帰したいとうせいこう。溢れかえるテント・サイトでポップなトラックに載せて、ラップし、巨大なコール&レスポンスのうねりを生み出すいとうせいこう。アンコールまで飛び出す、素晴らしいパフォーマンスは、音止めの時間ギリギリまで続いた。天才って言うのは、こういう人のことを言うんだな。

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