
Overseas
THE BOXER REBELLION

2010.01.20 @代官山UNIT
Writer 伊藤 洋輔

ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、エイト、ナイン……、THE BOXER REBELLIONのヒストリーとは、テン・カウント直前から立ち上がり、見事、チャンピオンに返り咲く――なんてありきたりな表現かな?……いや、彼らのヒストリーは、そんなドラマチックな逆転勝利を真意に体現した、“傷だらけのボクサー”のように波乱万丈なものだ。03年、PLAYLOUDERのコンペディションでグラストンベリーへの出演を獲得。その後、90年代一世を風靡したブリット・ポップの一立役者であるプロデューサー、Alan McGeeと出会い、レーベルPOPTONESと契約。そして05年、デビュー・アルバムのリリースと、THE BOXER REBELLIONの船出は前途洋々だった。しかし、アルバム・リリース2週間後というまさかのタイミングでレーベルは閉鎖してしまう。天国から一転、奈落の底に突き落とされてしまった。
では、彼らがなぜ復活できたのか?2ndアルバムは英米のiTunesオルタナティヴ・チャートを席巻し、地上初となるレーベル未契約でフィジカル・リリース外の形式ながら米ビルボード・チャートにランクインする奇跡を起こせたのか?その答えとなるのが、この夜の圧巻のパフォーマンスに集約されていた。溢れんばかりのエモーショナルを宿したファルセット・ヴォイス、終始安定感ある鉄壁のアンサンブル。そう、奇跡の裏打ちは、地道なライヴ活動が修練となったものなのだ。
ライヴは徐々にスケール感を拡げるグルーヴ・ナンバー「These Walls Are Thin」でスタート。サビでの突き抜けるファルセット・ヴォイスに繊細なギター・サウンドの絡みは、叙情性の強い世界観だけに空間をじわじわと沁み込むように暖める。やはりライヴはアルバム音源以上の壮大な脳内イメージを刺激する。続くは2ndでのハイライトと呼べる「Evacuate」。イントロのギター・カッティングから一気に駆け抜けてしまう疾走感には、爆発的なかっこよさがあった。

時折簡素な曲紹介を挟むだけで、過度のファン・サービス的なコミュニケーションは見られないが、職人とした淡々とブレのないパフォーマンスが披露される。穏やかなアコギに乗せて歌心溢れる「Soviets」、流麗なフィードバック・ノイズが印象的な「Flashing Red Light Means Go」と、天井知らずな上昇気流を想起するグルーヴを描いていく。そんなグルーヴが化け物のように膨れ上がった「Never Knowing How Or Why」でのカタルシスには驚愕した。2本の轟音ギターの壮絶な絡み合いに「何もしなくとも、死は訪れるんだ!」という歌声は、だからこそ、叫び、音を奏でるんだ、というバンドの魂を振り絞り叩きつけるようなパフォーマンスで感動すら覚えた。
掛け値なしに、本当に素晴らしいライヴだった。唯一残念だったことは、客の入りが芳しくなかったこと。USインディの波が世界中に浸透する中、UKロックの叙情派に属した彼らの世界観は、時流とは一線を画した存在と言わざるを得ない。それでどこか華のなさを感じ食わず嫌いに走ってしまう人もいると思うが、インディペンデントで培った力は、トレンドで登場するバンドとは比較にならない本物の魅力が詰まっている。英米でのブレイクを果たしたいま、VERVEやTRAVIS、COLDPLAYのような存在として、ここ日本でもブレイクしてほしいと心から願っている。
SET LIST
01. These Walls Are Thin
02. Evacuate
03. Semi-Automatic
04. We Have This Place Surrounded
05. Locked In The Basement
06. Spitting Fire
07. Soviets
08. Lay Me Down
09. Flashing Red Light Means Go
10. Cowboys & Engines
11. Misplaced
12. Forces
13. The New Heavy
14. Both Sides Are Even
15. Never Knowing How Or Why
16. Silent Movie
ENCORE
01. No Harm
02. Flight
03. Watermelon
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