Overseas
GIRLS
2010.01.14 @原宿ASTRO HALL
Writer 佐々木 健治
2009年のベスト・アルバム・ランキングにも多く取り上げられたGIRLS『Album』。この極私的なポップ・ミュージックが何故これほど琴線に触れるのか。それは結局、Christopher Owensの書くピュアなメロディと言葉が彼自身の姿を剥き出しにしているからだろう。ソングライターであるChristopherの異質な経歴も相まって、GIRLSの物語は多くの関心を引き寄せた。
Christopherの書く楽曲と、Christopherとその楽曲への愛情の強さを伺わせるJRのサウンド・メイクが持つ純粋すぎるほどに純粋なGIRLSの音楽は、甘美な媚薬のようなものだった。喪失感を抱え、繋がったかと思えばすぐに孤独に引き戻され、それでもコミュニケーションを諦めずに送る日々の生活。そんな極私的な物語を脚色なしでカラフルに描き出すGIRLSの音楽を、一人ぼっちのベッドルームで聴き入っていた人も多いだろう。
そして、彼らの物語を実際に目撃しようと集まった多くの人で会場となった原宿アストロホールは満員状態。
Christopherをはじめとするメンバーが登場すると、大きな歓声が起こる。 「Laura」から始まったライヴは、最初の数曲は音が小さく、バランスも悪かったので、少し不安になる。基本的にGIRLSの音楽がそういうものだということもあるんだろうけれど、それにしても小さい。
インタビュー後の雑談中に「昨晩、Jay Reatardが死んじゃったんだよね。」とChristopherが寂しそうに話していたのだが、そのJay Reatardに捧げると告げて「Darling」を披露した後、「Lust For Life」のイントロのあのギターが鳴り響いたあたりからは徐々に音がよくなり、Christopherの少年のようなピュアな歌声とともにGIRLSの音楽にとって重要な要素であるサイケデリックとシューゲイザー的要素が序盤に比べれば届いてくるようになった。
ただ、それでも音の方から全身を呑み込んでしまうようなものではなく、こちらから切望してやっと手に入るような脆さや危うさすら感じさせるその演奏に、何故か引き込まれていく自分がいる。
GIRLSのコミュニケーションって、こういうものなのかと思いながら、『Album』収録の楽曲にまさに聴き入るという感じでステージを見つめる。集中していなければ、逃げてしまいそうな包容力。
しかし、「Hell Hole Ratrace」だけは圧倒的な存在感を放っていた。音圧も一気に上がり、こちらを呑み込むようにあの切実な叫びそのものと言える美しい歌とノイズがフロアを支配してしまった。そして、そのままシューゲイザー・ソング「Morning Light」になだれ込む。この2曲のためにこの日のライヴはあったんじゃないかというぐらい、この時のカタルシスは鬼気迫るものがあった。
この2009年最大の新人であるGIRLSの初来日公演は、全てが納得、素晴らしいというわけにはいかなかったが、GIRLSというバンドがどういうバンドなのかということが逆に浮き彫りになった気もした。勝手に、そういう気もしただけ。それでいい。
これから、GIRLSがどう変化していくのか、僕達がその物語にどれだけコミットできるか。そこにこの夜の続きが待っている。 「SUMMER SONICに来るかも。分からないけど。」なんてMCで言っていたが、巨大なステージでこの音がどう鳴らされるのかも、観てみたいものだ。
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