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INTERVIEW

Japanese

indigo la End

2013年02月号掲載

indigo la End

-昨年デビューしてから9ヶ月ほどでミニ・アルバムを2枚、会場限定シングルを1枚リリースしてとかなりの速度進んできましたが、去年を振り返ってどうでした?

せわしなかったですね(笑)。全然嬉しくもない出来事ばかり起こったので。

-具体的には?

やっぱりメンバーが定まらなくて、サポートの人が入ってもサポートの人の予定でスタジオに満足に入れなかったし、ライヴをやるために切り抜けるみたいな感じがすごい嫌でしたね。CD出した実感がないというか。

-常に動き続けていたからリリースを噛み締める時間もなかったよね。とはいえしっかりとリリースはしてきて、今振り返ると『さようなら、素晴らしい世界』はどういった作品だったかな。

今は落ち着いて聴けますね、若いなみたいな感じはありますけど。

-もちろん見た目は変わってないんだけど、音の雰囲気だったり言葉の言い回しだったり、1年弱で凄く大人になったよね。『さようなら、素晴らしい世界』って良い意味で今聴くと凄く“ザラザラ”してるよね。「緑の少女」とか凄くポップだけど。

でも今考えたらあの曲もあの曲でザラザラしてるのかも。ポップであることに変わりはないんですけど。

-自分たちの作品って自分で聴いたりしますか?

自分たちの作品を聴くっていうことをあんまりしなかったですね、特に1stの時は。2ndはわりと落ち着いて聴けたんですけど。

-最近もそうかな?

うーん……このフル・アルバムは聴いてます。

-では『渚にて』は振り返ってみてどうだっただろう。

『渚にて』は1stよりはかなり大人になったから――大人になりすぎたかなって今思うんですよね(笑)。自分の思ったように伝わらなかったというか。

-伝わらなかったっていうのは、リスナーに?

そうですね、リスナーの耳が1stみたいな感じの方が求めているのかなっていうのがあって。音楽的にあることと浸透することの葛藤みたいなものがあって。2nd出したときは凄く良いと思ってたけど、それは音楽的な目線だったのかなと思って。

-バンドの成長と、1stでindigo la Endを知ったリスナーがそこに慣れる速度のギャップはあったと思うよね、それはどちらにとっても決してネガティヴな話ではないけど。実際ライヴも含めてリアル・タイムで観てきた自分も『渚にて』を聴いたときに少なからず驚いた部分はあったからね、音の質感は勿論、世界観の緻密さとかに。

1stを出した後の自分の中のモヤモヤ感っていうのがあって。1stのレコーディングをしたのが一昨年の11月でリリースするまで半年くらいあったから、レコーディングの時の気持ちと全然違う感じになっていて。凄く浮ついた感じというか……自分で聴くとわかるから。作品として良いとは思うんですけど、そのギャップでちゃんとした音楽性を示したいみたいなものを思って『渚にて』を作ったんですけど。作った後に客観的に聴けるようになって、今作るものじゃなかったのかなって(笑)。3年後くらいに出したら良かったかなって、(リリースしたことは)後悔はしてないですけど。

-これから続いていくindigo la Endの歴史の中で、2ndに『渚にて』があることは何もネガティヴなことはないよね。

そうですね。逆に3枚目へのクッションとしてのポジションというか、今考えてみるとそうですね。「緑の少女」みたいな曲が先行することで、なんか“ナヨナヨ”とかただの“J-ROCKだ”みたいに言っている奴がいて、自分たちの根っこにあるのはそういうものじゃないし。そういうものを否定するわけじゃないんだけど、ちゃんと伝わってないなと思って。こういう音楽性もあるっていうことを示したかったっていうのが強くて。今思うとエゴだったのかなと思いますけど。

-その時期のライヴの雰囲気にも少し出てたよね、ヒリヒリしてたよねその時期。個人的にそういう刹那的な感じは好きだったけど。

ありますね(笑)。ベースが抜けたりしたことのほうが大きかったですけど。

-そしてワンマンから会場限定EPをリリース、「白いマフラー」は昔からある曲だよね。

そうですね、レーベルの人とかに聴かせたら“良い”ってなって、最初はこの曲をアルバムのリードにしようっていう話だったんです。でも、僕は出したくなかったんですよね、良い曲だとは思うんですけど、1回出した曲をリードにするっていうのは。それでないってなったんですけど、もったいないって話の中で、じゃあシングルでリリースしようとなって。

-会場限定にした意図は?

フル・アルバムをレコーディングしてたし、このシングルのレコーディングもフル・アルバムのプリプロのつもりでやって、途中でレコーディングしちゃおうみたいになってレコーディングしたっていう流れがあったので、流通はどうかな?って。おまけ的にライヴに来た人限定でいいかなって。

-アルバムのレコーディングの時期はいつぐらいだった?

10月の後半から11月前半にかけてですね。

-そしてワンマン・ライヴがありましたね。ライヴハウスでやるワンマンは初めてだったと思うけど、振り返ってみてどうでしたか?

もう、思い出したくもないですね(笑)。

-(笑)。演奏は硬かったけど、そういった雰囲気も含めていいライヴだったと思うけど。

初ワンマンらしい雰囲気というか。でも、今考えてみるとそれはそれで歴史としてって思いますけど、記憶からは抹消されている出来事なんです(笑)。

-その抹消されている記憶を紐解くとどうだろう。

なんかもう(笑)。でもそれを言うと、去年のライヴ全てを抹消しているかもしれないです。

-それはネガティヴな意味で?

いや、ネガティヴというか、変えていきたいと思って。

-それは今のindigo la Endをしっかり見せたいってこと?

そうですね、塗り替えるというか。

-メンバーではワンマンについての話とかした?

ワンマン直前までレコーディングしていたので、あんまりライヴに向かう話し合いをする時間があんまりなくて。フル・アルバムのレコーディングをしていたけど『渚にて』のレコ発だし、みたいな違和感みたいなものはありましたね。

-『渚にて』をフルで再現しようと決めたのはメンバーみんなですか?

あ、それは俺ですね、セットリストも毎回全部決めるので。

-なるほど。ではアルバムについての話をしますね、まずは川谷君として率直な感想はどうだろう、バンドとしてでも勿論いいけど。

3部作の完結として、1枚目2枚目、特に1枚目のフラストレーションみたいなものは9割がた解消できたかなと思ってて、歌を伝えるという意味で。ミックスとかでも前2作より歌を大きくしてみたりとか、伝えるアルバムになったかなと。

-言葉の選び方も変わったよね、言い回しだったりが凄く大人になったと思います。今までのアルバムの中で、1枚の作品として聴くと今までで1番ストレートだと思いました。相変わらずギターやベースのフレーズは独特のフレーズだったりするけど、自分でも言ってるように、歌と言葉がしっかりと残る作品だよね。川谷君の楽曲って展開にしても遊び心に溢れていたじゃない、言葉のチョイスにしても。子供の発想を大人のアプローチでやっているっていう感覚があったんだけど、それが今作では逆転しているなって感じるね。

それは思いますね。色々あったからだと思うんですけど、それだけCDを出すってことは大変だなって思って。CDを出すことによって状況も変わってくるから、状況がバンドを加速させるっていうか。アマチュアみたいな活動、インディーズとかでCDを出さないでやっている1年とは全然違いますね。

-「she」と「大停電の夜に」は昔からやっている曲だよね。

1年半前くらいだと「雨の魔法」もですね。後「スウェル」はイントロだけは1番古いというか、結成当時くらいからありましたね、元々別の曲だったんですけど。もっとシューゲイザーっぽかったんですけどそれを解体して。でもイントロだけ気に入ってて、それはずっと残っててふとした時に弾いてみたら“やっぱいいね”みたいな(笑)。なのでこれをどうにかしてフル・アルバムにいれようとなって。

-1曲目から振り返ると「sweet spider」はいつくらいの曲?

これは7月ですね、これは前のベースの“課長”と久々に一緒にライヴやったときに、ライヴの前にどうせなら新曲作っちゃおうぜっていうノリで作った曲ですね。歌詞はサビの“思い出してよ”っていう部分だけは適当に歌っていて、それからは後付けですね。

-“spider”って言葉をチョイスした理由は?

元々sweet “noise”っていう曲だったんです。それはもう課長とやってた結成当初からあった曲で。それを久しぶりにやるからやろうぜって言って弾いてたらなんか面白くないからテンション高くしようぜっていってこれができて。それで““sweet”“は残したいなと思って。その後の言葉を探してネット・サーフィンしてたらなんか知らないですけど、手塚治虫を調べてて。“スパイダー”っていうのがあって、「sweet spider」いいなぁって思って。

-因みにこのアルバムの中の歌詞で1番ストレートでひねらなかった曲は?

「she」ですね、これはもう完全な失恋ソングなんでストレートですね。その後に「大停電の夜に」を作って。

-ダウナーな時期だったんだね。

ダウナーだったんですけど、バンドは転換期というか。シューゲイザーから歌物に変わりつつあった時。基本的に歌を歌おうがファズ踏んでたんで、“ヴァァァ”って(笑)。常にファズにディレイをかけて音の輪郭もよくわからないようにして。

-そうなんだ、確かに「大停電の夜に」の間奏は言われてみると少し出てるよね。因みにそこの転換ってなにかあったの?

俺の心境の変化が失恋して、バンドにしっかり向き合って(笑)。その時まで適当にやってたっていうか、ゆらゆら帝国が好きだったから、SGでファズ踏んでおけばかっこいいだろうっていう適当感が凄くて。みんな適当だったんですよその時はバンド自体。別になんかバンドでどうこうしていこうと思っていたんだか思ってないんだかわかんないような状況だったし。

-その時メンバーはベースが課長だったくらい?

そうですね、課長も就職決まってたからいつかバンドが終わるのはわかっていたし。

-じゃあこの「she」が転機だったんだ。

はい、みんなも最初はなんか“こんなんやるの?”みたいな感じだったんですけど。でもやっぱり“良い”ってなって、その後「大停電の夜に」作ったのはよくわかんないですけど(笑)。

-この曲は東日本大震災があって作ったわけではない?

この曲の後に地震が起きたんですよね。「大停電の夜に」作ったのが2011年の2月の後半で、3月3日にデモを出したんですよ、そして11日に地震が起きて。

-歌詞も地震の前には書きあがっていたんだね。

そうですね、変わらないです。地震が起きたときに作った曲ではないんですよね。

-なるほど。今回も残作同様インタールードが収録されていますが、これはどういった意味を持たせたかったんですか?

アルバムの曲がバラバラということもあったので、統一感を出すためというかフル・アルバムっていう1つの作品にするために入れようみたいなのがあって。今回12曲だから2曲入れようってことになって。アルバムのタイトルが『夜に魔法をかけられて』だから舞台を夜にして“魔法”って言葉を入れようってなって。ストーリーはわかりにくいっちゃわかりにくいんですけど。“鞠”っていう物を視点にしたものと、鞠で遊んでいた子供が大きくなってその奥さんの視点ですね。でも鞠は遊んでいた頃と同じようにそばにあるっていう少しファンタジックな感じです。

-曲順決めるのは時間はかかった?

元々こういう感じにしようっていうのはあって。元々「マリの回想」と「スウェル」は逆だったんですけど、それを変えたら一気にいい感じになったなって思って。でももう作った後なんですけど、まだどうなのかなっていうのはあったりします(笑)。色々パターンありそうな気はしないでもないです。どう置いても大丈夫かなっていうのはありますけど。

-統一感がないって言ってたけど、歌詞の淡いメランコリックな雰囲気と、音の丸さは通底している感覚はあるよね。

最近の音楽って結構“ハイ”が尖っているものが多くて、ちょっと疲れますよね。ファンタジックな感じってちょっとでないじゃないですか、尖っていると。尖っているものが今主流みたいになっているから。

-確かに尖らせてリスナーにガツガツアピールしていく曲、後はやっきになって踊らせる楽曲とかね。

だからマスタリングの音量もどんどん大きくなっていくし、CDの音量自体が大きいこと自体が良いってなってきて、ラジオとかで洋楽が流れると音がショボく聴こえたり。だから最近洋楽ばっかり聴いてしまうんですよね、耳に優しいというか落ち着いて聴けるというか。その後に邦楽ロックを聴くと“うるせぇ!”みたいな(笑)。自分たちは絶対違うものを作りたいっていうのはあるんです。後は美濃さんと一緒にやっていくうえでそういうところはあります、クラムボンとかもやってますしね。

-『渚にて』も溶け込むというかそういった盤ではあったけど、それよりももっと進化しているっていうのは感じるよね。メンバーの成長もあると思うし、ギターの音も単純に変わっていると思ったけど、ギター変えた?

ギター自体変わってますね、高いやつになりました(笑)。

-そして個人的に今作で1番好きな曲が「スウェル」なんだけど。イントロ以外は後付なんだよね?

そうですね、元々サビとかもアングラというかRADIOHEAD的な感じだったんですけど。

-今作はインタールードも含めて“トム・ヨーク”って単語がちょくちょく出てくるよね。

「she」を作ったときにほんとにRADIOHEADばっか聴いてて、だから“トム・ヨーク”って歌詞を入れて、そこを変えていないんでじゃあインタールードでもトム・ヨークを入れてみるかって。

-“私旅の途中抜けるわ〜”の部分が凄くいいアクセントになっているよね。

その場で考えて。1回その前に転調するじゃないですか思いっきり。そこからサビに戻すのもあれかなと思って、ワン・クッションもう1個欲しかったというか。大サビに向けてガーッ激情になった後にいきなり楽天的な感じを入れるのは面白いなと思って。

-indigo la Endの楽曲の“展開の妙”みたいなものって例えば「秘密の金魚」とかでも感じられたけど、あの楽曲って凄くフィジカルに放散って感じだったけど、「スウェル」って帰結しているというか、凄く完成度が高いよね。

最初はでもサビのメロディが美しかったというか、みんな“良い”ってなって。だからこれにこの展開を付けるのはもったいないんじゃないかみたいな話になって。このままシンプルにまとめた方がいいんじゃないかっていう意見もあったんですけど、俺がそれを押し切って(笑)。入れたいなって思って。

-(笑)。良いと思う、indigo la Endにしかできない曲だと思う。因みに“スウェル”って世界遺産になっているチリの街だよね?

そうです、階段ばっかりの街で。平地がないというかそういうのいいなと思って。後“うねり”っていう意味もあって、それも2つかけてます。元々は全然違う名前だったんです確か、あんまり覚えてないですけど。アダムとイヴの曲だったんですよこの曲。アダムとイヴの話とニュートンの話をかけてなんかすごい皮肉を歌った曲だったんです。

-ある意味意外だったのは「fake street」のロック然としたリフだね。

最初はイントロのアルペジオを弾いてて、そのままいってたんですけどなんかしっくりこなくて。もうちょっとハードコアというかそういうアプローチをしたいなと思って、あまりミュートって使わないから使ってみたらこんな感じのリフになりました。この前初めてライヴでやりました。

-どうだった?

もうちょっと出来るなって(笑)。全部難しいから、ベースはスラップだし、ドラムもわけわかんないから。フル・アルバムにはやっぱこういう曲もあっていいかなって。「大停電の夜に」とか「スプーンで乾杯」もわりとゴリゴリしてるし。

-「X day」と「雨の魔法」凄くいい流れになっているよね。

そうですね、意識して作ったわけではないんですけど。

-「雨の魔法」は昔に作ったって言ってたけど、最後にふさわしい楽曲だね、タイトルも含め。

それもあるし、最後の歌詞で一筋縄で終わらせないっていうか、毒を吐いて終わるというか(笑)。次の作品もまだあるからって。

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