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Overseas

MÅNESKIN

Skream! マガジン 2022年09月号掲載

2022.08.18 @豊洲PIT

Writer 菅谷 透 Photo by Yoshie Tominaga

2021年の"ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト"優勝をきっかけに世界的ブレイクを果たした、イタリアの4人組ロック・バンド MÅNESKIN。"SUMMER SONIC 2022"出演のため初来日した彼らが、"サマソニ"に先駆けた単独公演を豊洲PITにて開催した。

何もかもが制限されたパンデミックの中、海の向こうで突如現れたロック・スターに、その動向をSNSや動画サイトなどでチェックしつつ"いつ生で観られるのか?"とやきもきしていた人も多かったことだろう。念願の本邦初パフォーマンスとなった単独公演は、洋楽アーティストの初来日公演としては異例の規模ながらチケットが即日完売。満員の会場にも、開演前から独特の緊張感と高揚感が漂っていた。定刻になり場内が暗転すると、観客の高鳴る想いを反映したかのような大音量の手拍子が奏でられ、ステージ上にメンバーの姿が見えた瞬間にはもはや悲鳴のような声がマスク越しに巻き起こった。壮大なSEも豪勢なオープニング映像もない、至ってシンプルな幕開けだが、拍手と歓声が最高の序曲となって、テンションを否応なしに高めてくれる。

バンドをブレイクへと導いた「Zitti E Buoni」から演奏がスタートすると、情熱的な赤い照明も相まって早くもダイナミックな盛り上がりを見せる。Damiano Davidの特徴的な歌声や、クールな佇まいで淡々とリフを鳴らすThomas Raggi(Gt)、対照的にアグレッシヴなステージングで低音を支えるVictoria De Angelis(Ba)、どっしりとビートを奏でるEthan Torchio(Dr)と、4人の個性がむき出しになったパフォーマンスは聴覚的にも視覚的にもインパクト抜群。アンプ類とドラム・セットが置かれただけという簡素なステージ・セットも、かえって、メンバーの持つ華々しさや、泥臭くパワフルな演奏を強調しているようだ。サビでDamianoがマイクを向ければ、オーディエンスもイタリア語の歌詞をシンガロングで返していて、その待望度合いが窺える。ラップ・ロックを彼らなりに咀嚼した「In Nome Del Padre」でさらに勢いをつけると、Victoriaのベース・リフからダンサブルな「Mammamia」へ。Damianoの一挙手一投足に大きな歓声が上がる様は、まさにスターの貫禄で、往年の名バンドの初来日公演もきっとこんな光景が繰り広げられていたのではないかと思わされた。

"コンバンハ、ゲンキデスカ?"と日本語も交えたMCで観客の心を掴んだあとは、THE FOUR SEASONSのカバー曲でTikTokでも人気な「Beggin'」や、ウェットな質感の「Coraline」、ストレートなサウンドの「Close To The Top」でまた違った側面を見せていく。Damianoが"So hot......hotって日本語でなんて言うの?"と聞いたあと、"もうひとつ知ってる日本語があるんだ"と、TVアニメ"進撃の巨人"シリーズの楽曲「心臓を捧げよ!」をアカペラで1フレーズ披露。日本のファンには嬉しい、そして意外なサプライズとなった。人気曲の「Supermodel」に続けて、「For Your Love」ではいつの間にか上半身裸になっていたDamianoが巨大なステージ・ライトを振り回し、その光がThomasの鏡面加工されたギターに反射する幻想的なひと幕も。「Touch Me」ではアウトロでTHE WHOの「My Generation」がサンプリングされていたが、シリアスに"This is my generation"と叫ぶ姿は、先達へのリスペクトのみならず、自らが時代を切り拓いていくという意思表明にも感じられた。

ひと呼吸が置かれたあとは、バンドの代表曲「I Wanna Be Your Slave」でさらに加速していく。生で楽曲を体感すると、蠱惑的なリズムとインストのサビ≒ドロップはクラブ・ミュージック的でもあって、突き動かすようなダイナミズムが身体を揺らしていく。終盤では観客全員を座らせ、Damianoの4カウントから一斉にジャンプ。文字通り爆発的な熱狂に包まれた。あまりの白熱っぷりにDamianoも息が上がってしまったようだったが、"ごめん、俺たちも人間なんだ......そうは見えないかもしれないけど"とすぐさまジョークに繋げるのはさすがだ。続けてBritney Spearsの「Womanizer」を官能的にカバーすると、THE STOOGESの「I Wanna Be Your Dog」も披露。クラシック・ロックからポップまで、ジャンルや世代を超えたあらゆる音楽を聴くことができる時代に育ってきた彼らならではの選曲だ。Thomasはフロアまで降りてギターをかき鳴らし、オーディエンスをよりいっそう焚きつけていった。"次が最後の曲だ"とDamianoが語ると実に残念そうな声が会場のあちこちから上がったが、強烈なリフとマシンガンのような早口のヴォーカルでまくし立てる「Lividi Sui Gomiti」で再びの熱狂へ。"アリガトウ!"と日本語で感謝を伝え、本編を締めくくった。

アンコールを求める拍手を受け、Thomasのギター・ソロから「Le Parole Lontane」がスタート。原曲よりも激しさを増したパフォーマンスはエモーショナルだ。続けてEthanによるパワフルなドラム・ソロが繰り広げられたが、その長尺っぷりにも"これがロックのライヴだよな"とつい首肯したくなる、不思議な説得力がある。そしてラストに披露されたのは、この日2回目の「I Wanna Be Your Slave」。男性陣がみんな上半身裸になっていたり、Victoriaがフロアのモッシュ・ピットまで駆け寄っていたりと、実に自由奔放なパフォーマンスを見せ、最高潮の盛り上がりでクライマックスを迎えた。会場に生まれた圧倒的な熱量は、演奏終了後にDamianoが叫んだ"世界中で「日本人は静かだ」って聞かされてきたけど、そんなの嘘だね! お前らマジでヤバいよ! アリガトウ! マタネ!"という言葉が物語っていた。

こうして単独公演を成功裏に終え、後の"サマソニ"やTV番組出演でも日本中にセンセーションを巻き起こしたMÅNESKIN。この夏の躍進の端緒となった単独公演は、きっと伝説の始まりとして人々に記憶されることだろう。今回の来日でより大規模になったであろう日本のファンの前へ、彼らが近い将来また姿を現してくれることを期待したい。


[Setlist]
1. Zitti E Buoni
2. In Nome Del Padre
3. Mammamia
4. Beggin'
5. Coraline
6. Close To The Top
7. Supermodel
8. For Your Love
9. Touch Me
10. I Wanna Be Your Slave
11. Womanizer
12. I Wanna Be Your Dog
13. Lividi Sui Gomiti
14. Le Parole Lontane
15. I Wanna Be Your Slave

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