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LIVE REPORT

Overseas

THE HORRORS|SUMMER SONIC 2011

2011.08.13 @QVCマリンフィールド&幕張メッセ

Writer 伊藤 洋輔

まず、これまでTHE HORRORSの作品に失敗作はない。直情的なガレージ・サウンドに彩られ、強烈なインパクトとなったデビュー作『Strange House』。クラウト・ロックなアプローチから大胆な変貌を遂げたセカンド『Primary Colours』。そしてポスト・パンクもジャーマン・ニュー・ウェイヴも飲み込み鮮やかに飛翔したサード『Skying』。どれも強烈な美学を宿し進化し続ける彼らは、UKシーンで絶大な信頼を寄せられる存在にまでなった。そんな彼らがMIDNIGHT SONIC第2幕に。時間にして深夜12:00を回っているが、オーディエンスの入りはとても良い。デビュー時から常に人気はあるが、新作をリリースしたばかりのベスト・タイミングでもあり、いつも以上の期待の高さを伺える。

ふと開演前に思う。この前に出演したTHESE NEW PURITANSが昨年のNME年間ベスト・アルバム1位だったが、2年前は『Primary Colours』でこのHORRORSがNME年間ベスト・アルバム1位を獲得していた。イギリスではここ2年間ダークな音楽を求めているのだろうか? そう考えると、昨今盛り上がるポスト・ダブステップとかウィッチ・ハウスも妙に納得したりして……もしかしてこの流れの起点はHORRORS!?……なんて妄想をしてしまったが、なによりここ日本でPURITANSからHORRORSの流れが実現するとはフェスの醍醐味であり幸福なことだ。そうこうしていると暗転、メンバーがゆらりとステージに登場し1曲目「Changing The Rain」に突入。新作のオープニングでもあり、緩やかなシンセの響きが徐々に空間を染める。柔らかなトリップで誘い場を完全にHORRORS色に染め上げると、ノイジーなギターと重厚なベースが走る「Who Can Say」!オーディンスの歓声が上がる。己を開放するかのように力強く歌うFaris Badwan、ギターを掻きむしるJoshua Third、妖艶さを醸し淡々とベースを弾くSpider。もうこの時点で参りました!脱帽的なかっこよさである。さらに素晴らしかったのが、後方スクリーンに映された淡いグラデーションの数々だった。これは新作『Skying』のジャケを見て頂くとわかると思うが、あのトーンが楽曲のイメージを見事に拡張させる演出となっていた。

ほぼ、サードとセカンドの楽曲を交互にやりながらパフォーマンスは進む。ノイズとシンセのコントラストが鮮やかな「Scarlet Fields」、静と動の起伏ある「Endless Blue」、冷やかに覚醒感を促す「Sea Within A Sea」、そして圧巻の漆黒グルーヴを描いた「Moving Further Away」。酔いしれるように身を投じたオーディエンスは、個々それぞれにハイライトがあっただろう。どれも素晴らしく、ライヴとしての完成度も高い。ただひとつ問題だったのが、ギター・サウンドの調整がうまくいかなかったようで、度々Joshuaに散漫なプレイがあったことだ。サウンドのこだわりが強いバンドだけにそこは残念だったが、そんなストレスもいい意味で緊張感を生みスリリングだったことも確か。いずれにせよ総括すればそんなマイナス面もチャラにする内容だった。やはり期待を裏切らないTHE HORRORS。作品同様、パフォーマンスの失敗作も皆無なのでは?……それは言い過ぎか(笑)。

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