正直、THE ENEMYの新作にここまで心動かされるとは、我ながら驚きである。ファーストの時点では、その社会派ラッド気質には惹かれるものがあったものの、ソングライティング自体は凡庸に思えたし、セカンドでも、その強い政治的問題意識には敬意を払ったが、そのスケール感を増したサウンドにはあまり馴染めなかった。だが、サードとなる本作には、聴くたびに涙腺を刺激されまくっている。シンガロングなメロディを備えたロック・サウンドに、日々の生活の喜怒哀楽をロマンティックに描いた歌詞を乗せた全12曲。そんな、なんてことないシンプルなアルバムなのだが、こんなにも普遍的な喜びと悲しみを説得力と共に歌い上げることのできるバンド、今やそう簡単にいるわけではないのだ。
(天野 史彬)
2006年2月に結成された、英コヴェントリー出身の3ピース・ロック・バンド。メンバーは以前からの友人同士。結成から僅か2ヶ月後に、THE DAMNEDやElvis Costelloらの初期重要作品を世界に送り出したSTIFF RECORDSと契約。同年12月にファースト・シングル「40 Days, 40 Nights」をリリース。OASISなど大物ミュージシャンと比較され、次代を担うロック・アイコンとして一身に注目を浴びた。2007年7月にリリースしたファースト・アルバム『We Will Live and Die in These Towns』で全英チャート第1位を記録。瞬く間にワーキング・クラス出身のヒーローとしてその地位を確立した。その年の夏、SUMMER SONICにて初来日。メイン・ステージのトップ・バッターという大役を見事に務めた。2009年、約2年ぶりとなるセカンド・アルバム『Music For The People』をリリース。全英チャート第2位。同年6月にOASIS、KASABIAN、THE ENEMY、他というラインナップで全英アリーナ・ツアーを敢行。2012年、名門レーベルCooking Vinylへ移籍。3年ぶりとなるサード・アルバム『Streets In The Sky』を6月にリリースする。