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2009年03月 アーカイブ

2009年03月24日

PRIMAL SCREAM ライヴレポート

去年に引き続き、今年も来日を果たしてくれたPRIMAL SCREAM。東京ではZepp公演が二日間行われた。会場は8割くらい埋まっており、仕事帰りのスーツ姿の人たちの姿も目立つ。いかにもライヴ仕様!という様相の人は、ラウドロック系のライヴに比べると俄然少ない。

定刻から少し押して、ライヴスタート。「XTRMINTR」からの不穏なイントロが鳴り響き、「Kill All Hippies」で幕が上がった。大歓声が轟音のように鳴り響き、重い演奏とシンクロしていく。尚、舞台には大きな映像装置が取り付けられ、「XTRMINTR」のイメージ映像が次々と流されていた。

しかしBobbyは細い!どんな食生活をしたらあんなに細い身体がキープ出来るのだろうか。そんな細い身体をくねらせながら吐き捨てるように歌うBobbyのカリスマ性は、あまりにも圧倒的。そして新作「Beautiful Future」から「Can’t Go Back」へなだれ込む。ギターのディストーションで一気にフロアがヒートアップ。今回のツアーもLITTLE BARRIEのBarrieが参加しているのだが、若いながらもベテランのメンバーに負けじと自己主張しており、とてもたくましく演奏を支えている。

PRIMAL SCREAM至上一番ラウドなナンバー「Miss Lucifer」は2バスのアレンジになっており、一層攻撃性を増していた。緑のレーザー光線がフロアを飛び交い、どんどん非現実的な世界に没頭させてくれる。そして雰囲気が一転し、「Jailbird」ではフロアの緊張感が少し解け、皆陽気に手拍子を送っている。「Miss Lucifer」も「Jailbird」も、紛れもなくPRIMAL SCREAMの曲ではあるものの、ここまで広い触れ幅を持ちながらロックンロールを追求しているバンドなんて他にはいないよなぁと、改めてPRIMAL SCREAMの凄さを見せ付けられた場面だった。

そしてこの日一番のハイライトは、やはり「Higher Than The Sun」であったのは言うまでもないだろう。サイケデリックで幻想的で病的な世界観に引き込まれ、キーボードから織り出されるフレーズの美しさに息を呑み、しばし言葉を失い、思考回路も停止した。

そこから「Beautiful Summer」「Deep Hit」「Exterminator」「Suicide Bomb」までの流れは圧倒的に素晴らしく、ただ踊ったり拳を上げたりするだけではない、ショウの本当の真髄というものを感じさせてくれた。

「Swastika Eyes」は打ち込みが強調され、さながらレイヴのような盛り上がりになり、「Movin’on Up」「Rocks」と、祝祭感たっぷりの曲で、本編が終了し、アンコールは「Uptown」「Necro Hex」「Country Girl」と、BPMが20くらい早くなったアレンジの「Accelerator」。ギターのフィードバック音が鳴り響いたままメンバーが去り、少しの間放心状態に陥った。ノイズがいつまでも耳を劈き、忘れられないライヴ体験となった。

2009年03月27日

ACIDMAN ライヴレポート

BRITISH ANTHEMSメインステージでは唯一の日本人BAND、ACIDMAN。他の出演アーティスト、イベントの客層を考えても、おそらく初見の人も多かったであろう、ある意味で、逆アウェーのような状況でのLIVE。

その状況ゆえに、BANDとフロアに温度差があったことも事実。そこは、BANDも覚悟していただろうし、だからこそ、どういうLIVEをやってくれるのか、密かに注目していた。 一曲目から、アップテンポのナンバーが続き、安定したリズム隊の上を、激しくも、多彩な表情をみせる大木のギターと歌声がグイグイと引っ張っていく。90年代後半からサヴァイブしているACIDMANだけに、安定感と厚みのあるサウンドは、他の出演アーティストを凌ぐ完成度がある。

中盤、ドラム浦山が「高い高い言葉の壁を感じるこのイベントで」と冗談混じりの前置きの後で発した「日本の代表として、日本のロックをやりたいと思います」と力強いMC。これは、冗談交じりの前置きも含め、ACIDMANの本音だっただろう。 そこから、「Free Star」、先月シングル発売されたばかりの「CARVE WITH THE SENSE」。ベース佐藤もフロアを煽り、BANDの熱に呼応するように、フロアのテンションも最高潮を向かえ、最後まで突っ走った。

浦山の言葉に代表されるように、日本語でロックをやることに対して、強い信念を感じさせるACIDMAN。それは、日本人がやる以上、もっとも伝わりやすく、エモーショナルな表現方法であることは間違いない。海外のBAND、しかも、一癖も二癖もある、幅広い音楽性を持つ新人BANDが多い中でのLIVEだからこそ、ACIDMANがこだわり、長い年月を重ね、築いてきた揺るぎない根幹がしっかりと現れていた。

正直な話、どうしてACIDMANだったのかは分からない。もっとイベントの趣旨に合ったBANDはいたはずだし、その対比を演出したいという意図だったのであれば、それはACIDMANにとって、酷な状況でしかない。「高い高い言葉の壁」をものともしない、好奇心旺盛なお客さんが集まっていたのだから。

そこに対する疑問は感じたが、その中でも、ACIDMANは、フロアとのコミュニケーションをとろうとし続け、日本語ロックの王道とも言える、エモーショナルなサウンドで、フロアを巻き込んでみせた。風格さえも感じさせる、熱いLIVEだった。

CHEEKY CHEEKY & THE NOSEBLEEDS ライヴレポート

今回のBRITISH ANTHEMSでぶっちぎりの最若手、CHEEKY CHEEKY & THE NOSEBLEEDS。なにしろ、メンバー全員がティーンエイジャー。まだお酒も飲んでいいやら悪いやらという超・お年頃なこの5人組が、このステージで何を見せてくれるのだろうか。

日本デビュー盤ミニ・アルバム『Thespionage』がリリースされたばかりのこのタイミング、ライヴ1発目はあの曲かこの曲か…とあれこれ予想していたら、その全てを裏切られる形となった。初っ端から、まさかの未収録曲。新人バンドらしからぬ、大胆不敵なセットリストだ。売り込みとしてではない、「いいライヴ」をみせようという気概をまざまざと感じさせる。

予想はさらに裏切られる。人を食ったようなアルバム・ジャケットや、サウンドや歌詞のそこかしこに見られるユーモア・センスから、きっとライヴも一筋縄ではいかない、ギミックに満ちたものに違いないという確信を持っていたのだが、これも大きく外れた。顔を紅潮させながら、唾を飛ばすように歌うギター・ヴォーカルのCharlie Dobneyは、スタイリッシュさをかなぐり捨てた若き日のPaul Wellerみたいだ。同じくヴォーカルのRory CottamもベースのThom Hobsonも、ステージを駆け回ったり拳を振りかざしたりで、観客を煽る煽る。そのパフォーマンスが功を奏してか、手拍子を求めれば会場全体に響き渡るほどの、バッチリなコール&レスポンスが生まれていた。実はCHEEKYS、一ヶ月間に29回ものライヴをこなした経験を持つほど、様々なステージで腕を鳴らしてきたバンドなのだ。明らかに名前も初めて聞いたような観客が、演奏に呑まれていくのは痛快という他ない。

パンキッシュにはじける「Slow Kids」では一部で合唱が起きるなど、早くも熱狂的な人気も見せつけつつ、ダンス・ライクな四つ打ちナンバーも披露しつつ、最後まで青臭く駆け抜けたCHEEKYSのライヴは、おそらくこの日一番の大穴だったろう。実際に自分の周りでも、かなりの語り草になっているほど。すました顔してシニカル気取ってるキッズなんかどっか行けといわんばかりの、CHEEKYSの熱意に、やられた。

THE FRATELLIS ライヴレポート

いよいよの大トリ、気取り屋フラッツ達の登場を目前にして、会場全体の空気がこれまでより引き締まって感じる。バンドTシャツを着た観客がかなりの割合にのぼるフロア。数分後の熱狂がワープして伝わってくるようだ。

メンバー登場。黒のTシャツでシックに決めた、ヴォーカルのJon Fratelliを筆頭に、結成してから4年のバンドとは思えない大物の風格を備えた3人。ドラム・セットには大量のタオルがぶら下げられている(笑)。サポート・ギタリスト兼ピアニストも加わっての完全態勢で始まった1曲目「Coutry Boys & City Girls」で、一気に熱気は沸点まで高まる。続いて「My Freind John」、「A Heady Tale」と、セカンド・アルバム『Here We Stand』の冒頭2曲を連打。「A Heady Tale」はサポートのピアニストが、あのグルーヴを忠実に再現。ライヴならではの重厚なサウンドになるかと思いきや、あの軽快なサウンドが味わえたのは嬉しいところ。そして特筆すべきはMince Fratelliのドラム。鬼のようなテクニックで、グルーヴを1ミリもブレさせない。例え何万人の耳に届くような場所でライヴを行ったとしても、このドラミングならば全員の耳に同じグルーヴが届くだろう。


そのドラムが、聴き覚えのあるビートを叩き始めた。高速のモータウン・ビート。「Flathead」だ!ワッとこだまする歓声。この日の瞬間最大風速が記録されたのは間違いなくこの時だろう。息つく暇もないままにバシっと終わってしまったこの曲は、フロアにいる全員の心をひとつにした。



続いての「Shameless」、高鳴る鼓動を優しく包むかのようなミドル・ナンバー「Whistle For The Choir」。そして「Chelsea Dagger」、「Mistless Nable」、そして「Henrietta」と怒濤の必殺ナンバーで畳み掛ける頃には、もはや今日は単独公演ではないかと勘違いするほどの、圧倒的な熱気が会場を支配していた。イギリスのインディー・ロックというよりは、広大な地平をトラックで突っ走るようなアメリカン・ロックの様相を呈するFRATELLISのサウンドは、いつの間にかインディーの枠に収まりきらない普遍性を手に入れていたのだ。 ラストのラストは「Baby Fratelli」!文句なしの大団円。さすがFRATELLIS、としか言いようのないライヴだった。

GOLDEN SILVERS ライヴレポート

ロンドン出身、ギターレスの3ピースBAND、GOLDEN SILVERS。GOLDEN SILVERSのLIVEが始まる頃には、ほぼフロアが埋め尽くされ、まだ日本デビュー前ながら、注目度と期待の高さを窺わせる。

と分かったような書き出しをしてみましたが、僕も、個人的にGOLDEN SILVERSを最も楽しみにしていた一人です。はい。

アルバムからの先行シングルとなる予定の「True Romance (True No.9 Blues)」からLIVEはスタート。艶かしいGROOVEがディスコ・クラシックのような快楽性をもたらす2009年のアンセム候補だと思っているナンバーですが、緊張からか何なのか、演奏が硬く、あまり乗れず。LIVEでも映える曲なのは間違いないけれど、ちょっと今回は残念な出来。そこから、ジワジワと効いてくるDEEPなFUNKナンバー「Shake」。序盤はじっくりとタメを作っておいてのブレイクのコーラスから、一気に熱が出始める。これはメチャクチャかっこいい。そして、そこから、シングルとして発表されているソウルフルなPOPナンバー「Magic Touch」。音源よりもロックな演奏で、ここで完全にフロアを虜にしてしまった。
GOLDEN SILVERSの真骨頂とも言える、息の合ったコーラスが生み出すハーモニーは、LIVEでもやはり、極上。

ソウルやディスコをPOPに昇華したナンバーから、「Please Venus」のようなバラードまで、様々なエッセンスを取り入れた楽曲それぞれに、心地よいハーモニーが彩りを与え、終始、穏やかなGROOVEがフロアを包みこんでいた。前日に行われたアコースティックセットでのLIVEに行けなかったことが悔やまれてしかたない。 今春発売予定のアルバムが何とも楽しみである。

ROBOTS IN DISGUISE ライヴレポート

今回のBRITISH ANTHEMSに出演する唯一のガールズ・ユニットということもあってか、ステージ前方はライヴを今か今かと待つ女の子たちでいっぱいだ。
白黒ストライプの服で勢いよく登場した、Dee PlumeとSue Denimの2人に、黄色い歓声が飛ぶ。打ち込みのトラックによるライヴかと思いきや、サポート・ドラマーAnn Droidも登場。生音でロック仕様なライヴを楽しませてくれそうだ。

ラフでいてタフなエレクトロ・パンクのトラックに、ドラムの生音が開放感を与える。思い切りフロアを煽り、時折シャウトしながら歌い上げるDeeとSueは、次世代ライオット・ガールの称号が似つかわしい貫禄の持ち主だ。ステージ後方を彩る映像には、2台のロボットがセックスしまくる様子が映し出されている。う〜ん、これほどまでにROBOTSを簡潔に説明できる映像があるだろうか。お見事。

おそらく彼女達の存在を知らなかっただろう観客も、そのパンキッシュなパワーに吸い寄せられるようにステージを注視しだしたその時、繰り出されたナンバーはTHE KINKS「You Really Got Me」のカヴァー!2ndアルバムにも収録された、原曲より猥雑度5割増しのカヴァーを披露し、フロアも俄然ヒート・アップ。パーティー感あふれる、お尻をくねらせる振り付けやダイヴまがいのアクションで、これでもかと温度を上げにかかる2人に、観客がアップアップで追いつこうとする形だ。ステージ前方はすでに沸騰状態である。

間髪入れずに披露した「Don’t Copy Me」は、このライヴ一番の見所。2人が交代交代のデュエットで、「私の真似をしないで!」と歌い上げるこの曲は、ウキウキするような跳ね上がるビートとは裏腹に、辛辣なメッセージを放っている。安易な共感を切り捨て、ファッションや髪型の真似ではない、もっと重要な何かをファンに呼びかけているのだ。

その後もド派手なステージは続き、ラストはニュー・アルバムの表題曲、「We’re In The Music Biz」!この大規模なショウケース的イヴェントで、音楽業界の凄惨さをブチ撒けるROBOTS。用意されたショウの枠内からはみ出そうとするその姿勢は、もはや向かうところ敵無しである。

VAN SHE ライブレポート

オーストラリア、シドニーから現れたVAN SHE。僕も、今回のBRITISH ANTHEMSで初めてLIVEを観ることができるので、楽しみにしていた。BRITISH ANTHEMS翌日のインタビューでは、「君達、オーストラリア人だよね」「そうさ。スペシャル・ゲストだよ」なんてやりとりもあったと笑っていたが、その言葉も冗談にとれないほどの人気の高さは、人で埋め尽くされたフロアが物語っていた。

音源とはまた違う、予想以上に力強くロックな演奏にまず驚く。お世辞にもうまいとはいえないが、力強く、ロックなライヴは、音源とは全く違うバンドのように思う瞬間もあったほどだ。序盤こそ、音源との違いに戸惑っているお客さんもいたようだが、「Talkin」「Virgin Suicide」あたりから、フロア全体もしっかりと盛り上がりを見せる。VAN SHE独特の80’sハードロックのテイストを感じさせる演奏の上に、ヘロヘロのボーカルがのるバランスも面白い。というか、そうでないと、ただのハードロックバンドに見えたかもしれない。

音源との違いはあれど、ライヴでも、素直に踊ることができる楽曲の良さは、さすがの一言。フロアも、これまでとは比較にならないほどの人がリズムを取り、身体を揺らし、踊っている。
そして、ラストには、「Strangers」「Kelly」で締め括り。フロアは、大団円と呼ぶべき、この日一番の一体感を見せた。

予想以上に、ロックな演奏にも驚いたが、演奏の粗さに目をつぶれば、まるで、スタジアム・バンドみたいだとも感じた。音源からはそんなことは全く想像もしなかったことだが、それだけの可能性と懐の深さを持っているのかもしれない。彼らがどう考えているかは分からないが、一過性の流行で終ることも、インディ・ヒーローで終ることもないポテンシャルがあるのではないだろうか。
これから、VAN SHEがどういう進化をみせていくのか、改めて、期待したい。

THE XCERTS ライヴレポート

「BRITISH MUSIC」という、駐日英国大使館がマイスペース上に開設したページから選ばれた5組のUK新人バンドの中から見事選出され、BRITISH ANTHEMSのオープニング・アクトと相成った、話題性バリバリの新人アーティスト、THE XCERTS。いわゆるインディ・ロックのアーティストがステージを飾る中、エモのサウンドを下敷きにしたXCERTSは確かに異色だったが、しっかりと存在感を放っていった。

おそらく、リリースを控えたデビュー・アルバムに収録されるであろう曲を中心に組み立てられたセットリストは、多少聴いたことのある人たちにとって親切とは言い難いものだった。しかし、一曲一曲で盛り上げるというよりも、XCERTSの世界観で場内を包みこんでいくような構成は、少しずつ、早くから訪れた観客を巻き込み、浸食していった。

まるでASHのような瑞々しさをもったギター・サウンドが、エモなどのラウド・ロックが持つ重層感と組み合わさったそのサウンドは、どこか凛とした世界を描いている。例えエモに対して門外漢でも、すっと入っていけるような、間口の広い世界。さらに、ブレのない確かな演奏力が、その世界観にくっきりとした輪郭を持たせているのである。

出演時間はわずか25分。XCERTSはその世界に観客を包み込んだ後、3月初頭にUKで発売されたばかりのニュー・シングル「Crisis in the Slow Lane」で、さらなる接近を図る。惜しむらくは、やはりオープニング・アクトということで、この曲あたりで会場に入ってくる観客が多く、見せ場になり辛かったことだ。もし、この曲以前から観ていれば、ここでググっと引き寄せられたのではないかと思う。

最後となる6曲目は、「Do You Feel Safe」。シングルにもなった名曲である。緩急をつけた曲調が、メロディの持つ切ない感情を、メーターが振り切れるほどに引き立たせる。ヴォーカルのMurrayは髪を振り乱しながら、これまでにないほどのテンションで歌い上げる。これには来場したばかりの観客も、足を止めずにはいられなかったのではないだろうか。曲が終わり、高く放り投げられたドラム・スティックは、熱を帯びはじめたフロアの人波から伸びた手が、確かにキャッチした。

YOUTH MOVIES ライブレポート

今回が初来日となった、元FOALSのギタリスト、Andrew Mears率いる、YOUTH MOVIES。昨年、セカンドアルバム『Good Nature』で日本デビューを果たしたばかりで、日本での認知度はまだまだ低いが、2002年結成、2003年デビューと、実は芸暦は長い。MOGWAIが主催した「All Tomorrow’s Party」に出演したりと、本国イギリスでの活躍はめざましいものがある。

そのサウンドは、プログレッシブロック、ポストロックを基盤にした、ちょっとひねくれたインディロック。

一曲目から、変拍子も取り入れたリズム隊に、ディストーションの効いたツインギターが絡みながら、疾走するアップリフティングなナンバーが続く。
このバンドの特徴の一つでもある、Samのトランペットが、絶妙なアクセントを加えていく。トランペットがなければ、もっと重たい印象になるであろう楽曲を、POPに色付けしているのが、印象的。

どの楽曲も、歌の後には、長いインプロが続くが、ヴァリエーション豊富で、単調な印象を受けることはなかった。
例えば、MOGWAIを初めて観た時のような衝撃はないが、プログレッシブロックを、POPで人懐っこく、響かせる感じは、面白い。

演奏時間が短い上に、一曲が長い為、演奏したのは、4曲。様々なヴァリエーションを持つバンドだけに、もっと長い時間を観てみたかったが、自己紹介としては十分な内容のLIVEだったのではないだろうか。

2009年03月28日

THE QEMISTS ライブレポート

ドラムンベース×ラウドロックという、ハイエナジーなサウンドで、ロックシ-ンのみならずクラブミュージックシーンにも新たな風を巻き起こしたTHE QEMISTS。デビューアルバム『Join The Q』は、メディアも大絶賛し、話題性十分の中でリリースを遂げ、一気に多くのリスナーを虜にしてしまった。もちろん私もその一人だ。今回は、所属レーベルNINJA TUNE主催のイヴェント“NINJAGENERATION QBT”にて初来日。共演者は、YPPAH、THE BUG、THUNDERHEIST、そしてNINJA TUNE総帥COLDCUTという豪華な顔ぶれ!ロックリスナー向けというよりは、クラバー向けのメンツではあるが、非常に面白い取り合わせであることに変わりはないだろう。

THE BUG feat,DADDY FREDDYの素晴らし過ぎるライヴが終了し、COLDCUTの転換DJ中に、フロア前方の人が大分入れ替わっている。Tシャツにタオルというライヴ仕様の人たちがどんどん前に入ってきたのだ。COLDCUTの二人もそんな雰囲気を悟ったのか、だんだん音数を増やしてアゲに入る。ちなみに私はこの日、2回COLDCUTのDJを聴いて踊ったが、当然のごとく素晴らしく、興味深い内容のものだった。


さて、いよいよTHE QEMISTSの登場!一曲目は「Stompbox」。一気に会場はロックのライヴの雰囲気になり、押し合いへし合い状態だ。のっけからダイヴをする人も!ゲスト MCのJENNA G、MC IDの男女二人が、ランニングのような動きで走り回る。尚、JENNA Gは、『Join The Q』の中の「On The Run」で歌っているので、知っている人は多いだろう。
そして間髪入れずに「Dem Na Like Me」へ。アルバムではWILEYが歌っているが、JENNA GとMC IDヴァージョンもなかなかいい。ヴォーカルのオリジナル・メンバーがいないというのはリスクにもなるが、THE QEMISTSの場合はそれが功を奏している。ヴォーカルが変わることによって、曲の持つ別の表情が見ることが出来るのはとても嬉しい。そして「Dem Na Like Me」の途中からテンポチェンジし、「When Ur Lonely」、そして「Drop Audio」へ。メンバーの3人は、あくまでストイックにプレイしているが、表情はとても楽しそうだ。前方はどんどんヒートアップし、サークルピットが出来そうなまでになっている。インタビュー時、自国イギリスでもラウドロック系のファンが多いということをメンバーが言っていたが、とても納得がいった。どんなにダンサブルなビートが基調の音楽でも、こんなにパワー全開のライヴをやられてしまったら、そりゃあ暴れたくなるでしょう!

しかし、ドラムのLeonは大変そうだ。テンポチェンジが多い曲ばかりだし、シンセを同期しているからリズムがちょっとでも狂うと致命的に聴こえてしまうのだ。「On The Run」でも少しリズムに狂いが生じたが、非常に早く立ち直ったので安心した。



そして本編はここでサクッと終了。え!「Lost Weekend」はなしですか!!!と、びっくりしてしまったが、すぐにメンバーが再び登場。そして、DAFT PUNKの「Robot Rock」のさわりから、「Lost Weekend」へ!待ってました!とばかりにフロアはヒートアップし、爆発したような盛り上がりの中、ライヴは終了。ロックの文化とクラブの文化を新しい感覚で融合し、エクストリームなサウンドで踊らせながらも暴れさせてくれる、楽しくたくましいライヴだった。これはもう、今後の活躍にも大きく期待を寄せてしまうのは当然。SUMMER SONIC 09’への出演も決定した彼らだが、必ず、もっともっと多くの日本のリスナーを興奮の渦に巻き込んでくれるはず!

RAZORLIGHT ライブレポート

RAZORLIGHTの新作「Slipway Fires」は、前作までのサウンドとはかなり違うものになっており、皆かなり驚かされたことだろう。ヴォーカルのJohnny Borrellは「Slipway Fires」がリリースされるまでの間、ハリウッド女優とのスキャンダルなど、何かとメディアを賑わせてきていた。故に派手な印象を持たれていたが、そんな印象からは想像もつかないほど内省的で静謐な美しい作品となった。この新曲郡がライヴではどのように響くのだろうか。

会場に足を踏み入れると、「MAKE the RULE」地球温暖化防止キャンペーンのブースが設けられていた。私も早速署名。後のインタビューでは、BjornとCarlも環境保護への思いについて熱く語ってくれた。結果的に230名ほどの署名が集まったそうだ。

フロアへ移動し、すぐにライヴがスタート。一曲目は「Golden Touch」。Johnnyの歌、演奏共に大変安定しており、最早ベテランの風格だ。あまり派手に動くことはないものの、感情がきちんと込められている演奏は、聴いていてとても安心するし、自然に陶酔してしまう。

そして「In The Morning」。跳ねるリズムに印象的なギター、ポップな歌と、前作「Razorlight」では一番、クラブで多くプレイされていた曲。そこから畳み掛けるように、「Dalston」。Johnnyがギターを変え、「Tabloid Lover」へ続く。この新曲は、アルバムでの印象とはちょっと違い、ライヴでは大変エキサイティングに響いている。そして難しい歌もなんなくこなすJohnnyのヴォーカリストとしての成長を垣間見た瞬間だった。
そして、RAZORLIGHTの曲の中でも、一番といっていいほど打つ美しい名曲「America」が始まった途端、フロアは大合唱し、彼らを称えた。
そこから、流れるように「Before I Fall To Pieces」へ続き、「Vice」ではAndyとのコーラスが絶妙に絡み合い、「Hostage Of Love」ではJohnnyがタンバリンを片手に、詩人のように、語り掛けるように歌う。この曲が本日のライヴのハイライトといっていいのではないだろうか。

ライヴは順調に穏やかに、時にエキサイティングに進行し、「Wire To Wire」、そして「Rip It Up」で終了。ほどなくアンコールが始まるが、このアンコールがかなりサービス精神旺盛な内容で、6曲が披露された。特に新曲の「Burberry Blue Eyes」が映えており、これからクラブでかなりプレイされる予感がした。

自信に満ち、豊かな感情表現で圧倒させるヴォーカリスト、Johnny Borrellの存在感、カリスマ性はやはり別格。そしてBjorn、Carl、Andyは、派手なパフォーマンスこそしないものの、時に笑顔で、余裕の風格で演奏を支えていた。
「Slipway Fires」での、予想と違うサウンドに驚かされたファンも、是非ライヴで収録曲を聴いてほしい。また違った曲の表情が見れるし、更にこのアルバムが好きになることは確実だ。

2009年03月29日

cro-magnons ライブレポート

「FIRE AGE '08-'09」と題された今回のツアーは、クロマニヨンズにとって最大規模。全国のライヴハウスを駆け巡った後にホール公演へとなだれ込む、という、ノンストップ雪だるま式のロックンロール・ツアーである。約4か月もの間、日本列島を加速しながら転がり続けるクロマニヨンズは、終盤に差し掛かった2/9の東京公演でも、会場に集まったぼくら猿人の心臓に火をつけてくれた。

会場の渋谷C.C.Lemonホールは、開演前から真っ赤なツアーTシャツに身を包んだ人たちでいっぱい。全席指定であるにも関わらず、場内の空気はライヴハウスに近いものを感じる。なにしろ前説の人が舞台に上がった時点で、すでに一部の人たちは拳を突き上げ「ウオー!」である。これからステージ上で起こる全てのことに、自分たちを賭けようとしているのだ。バンド登場前から、こんなにも熱を感じるライヴは久々である。

前説の「ザ・クロマニヨンズ!!!」というシャウトとともに4人が登場。SEはTHE DOORSの「Light My Fire」のインストだ。ステージのバックには、煌々と光る炎のオブジェが散りばめられている。アルバムやツアーのタイトル、SE、そしてオブジェ。4人がこれから「炎」をコンセプトに、燃え上がっていくことが分かりやすく伝わる。ヒロトは、ゾンビみたいに手をぶらぶらさせながら臨戦態勢。そしてマーシーは、いつものバッチリきまったバンダナ姿で、静かにギターを持ち上げる。あまりにも絵になる2人。きっと20年以上前からこうなのだろう。

一曲目、「ゴーゴーゴー」でライヴスタート。初っ端から、突き抜けるような高速パンク・ナンバー。性急なビートながら決して前につんのめることのない、ドラム桐田とベース小林のリズム隊に、あのカラッとした音色が独特な、マーシーのギターがジャキジャキと乗っかってくる。年々声が若返っているのではないかと思うほど、高音でハジけるヒロトのボーカル。盛り上がらないわけがない。早くも場内はデッドヒート状態である。

しかし、凄いのはここからだ。二曲目以降も、フルスロットルのパンク・ナンバーを立て続けに連打したのだ。「エイトビート」、「ぼうふら」、「独房暮らし」。新アルバム『FIRE AGE』の初頭に収録されたこれらの一撃必殺ナンバーを、余すところなく再現。MCも曲のタイトルを一言叫ぶだけで、ひと休みもへったくれもない。次の「ギリギリガガンガン」で速度が限界まで引き上がり、軽くめまいを覚えるまでパンク・ナンバーの応酬は続いた。

ようやく、ヒロトによる長めのMC。真っ赤な「FIRE AGE」と書かれたツアータオルを指差して、「みなさんご覧のとおり、この水色のタオルにはC.C.Lemonと書いてありまーす」。場内爆笑。さらにC.C.Lemonネタは続き、ステージのバックに掲げられたツアータイトルを指差して、「あそこにもC.C.Lemon」とか、しまいには「今日はみなさんお酒を一滴も飲まずに、C.C.Lemonを飲んで楽しんでってくださーい」。固唾を呑んでヒーローの言葉を待ちわびていたファンを、笑いの渦で煙に巻く。さすがヒロトである。

6曲目からはテンポを少し落として、新アルバムから「ニャオニャオニャー」「自転車リンリンリン」を披露。アルバムの構成と同じような流れにしているのは、リリース後のツアーならではだ。次の「スピードとナイフ」は、現時点でクロマニヨンズ最大のアンセムと断言していいほどの名曲。モータウン調の跳ねたビートに、ヒロトしか作り出せない哀愁のメロディーが絡みつき、胸に突き刺さってくる。これまでパンク・ナンバーで暴れまわっていた人たちも、この曲はビートにあわせて、歌うように踊る。個人的に、この日のハイライトともいえる1シーンだった。
その後は、新アルバムの曲と過去の曲を織り交ぜたセットで続いていくのだが、なんといっても白眉は12曲目、「くじらなわ」。曲が始まる前に、ヒロトが前方のお客さんと何やらヒソヒソ話をしていたので、何が行われるのかと思いきや、曲中にお客さんの名前を歌い上げるという まさかのアドリブ!三文字の名前を探していたヒロトに、「にしだ!」と苗字を叫ぶ人もいたりで大爆笑。ステージと客席の距離を一気に近づけるこのアドリブは、貫禄のなせる技といったところか。

マーシーが楽しそうにリズムを刻む、ゆったりしたレゲエ・ナンバー「海はいい」、そしてアルバム未収録のナンバー「渋滞」などを経て、「レッツゴー宇宙」へ。照明が暗くなってヒロトがタコ踊りを披露する、ミもフタもない宇宙の演出。「1.2.3.4!」の掛け声とともに演奏が爆発する様はまさに見物、コンセプチュアルなクライマックスだ。

そう、クロマニヨンズというバンドの持つコンセプトは明確である。それは、この50年間ですっかり垢がついてしまったロックンロールというアートフォームに、再び原始的で宇宙的な力を取り戻す、というものではないだろうか。アンコール前に披露された、桐田が呪術のように叩きまくる怒涛のドラム・ソロを見ても感じたことだが、様式に囚われてがんじがらめになったロックンロールを開放するような力がこのライヴにはあった。薄曇った複雑な世界の住人であるぼくらの視界をクリアにし、生まれたての猿人並みのフレッシュな感性にしてくれるからこそ、ロックンロールは最高なのだと。実はブルーハーツ時代から、ヒロトとマーシーのロックンロールは元々そういったコンセプトの上に成り立っていたのではないかと思う。20年以上の活動を経て、そのコンセプトを今なお一層ラディカルな形で提示できる2人は、いや、クロマニヨンズは、日本の誇る極上のロックンロール・バンドである。

「レッツゴー宇宙」の後は、再び音速のパンク・ナンバー乱れ打ち、本編のシメはやっぱり「タリホー」!マーシーが弦にピックをキリキリキリっと走らせる音は、無敵という他ない。そしてアンコール、最後の最後は「クロマニヨン・ストンプ」で座席も吹っ飛ぶ大騒ぎ。最高。C.C.Lemonホールが燃え上がったよ!

2009年03月30日

THE PRODIGY ライブレポート

新作「Invaders Must Die」リリース間近、渋谷AXでの一夜限りのスペシャルライヴ。チケットは即ソールドアウトなだけに人口密度がとても高く、真冬なのに湿度が高い。

THE PRODIGYの功績は計り知れない。現在ロックとダンスミュージックをクロスオーバーさせたアーティストの音楽体験の源には必ずTHE PRODIGYがいると言っても過言ではない。そして最新作「Invaders Must Die」は、今までの作品の中でも一際アグレッシブな作品だ。ダンスミュージックファンも、ラウドロックファンも、パンクロックファンも、全て飲み込んでしまう強烈な作品だ。当然今夜のライヴで新曲が披露されることが予想されるので、当然期待で胸がわくわくし、足がウズウズする。とにかく踊りたい!

オープニングアクトは、Keithのプライベートパートナーでもある、GEDO SUPER MEGA BITCHによるDJ。基本的にはミニマルテクノだが、要所要所にアゲどころを持ってきており、聴いていてとても気持ちいい。既にステージには様々なライトが照らされており、最早クラブのような状態だ。

30分弱押して、ようやくメンバーが登場。「Invaders Must Die」に収録されており、ライヴではしばしば披露されてきた「Worlds On Fire」からスタート!フラッシュが焚かれ、空気に熱が増す。メンバーとオーディエンスのエネルギーのぶつかり合い、テンションが天井に向かって、龍のように昇っていく。MaximとKeithは時折向き合いながら、互いを高め合っていっているように感じた。「There Law」「Breath」と立て続けに人気曲が披露され、あまりに高まるテンションに、Maximがフロアに水を浴びせかける。

しかし今回は生ドラムがあまりに強調され過ぎており、あまり打ち込みとのバランスが良くないのが少し残念だ。早くこのバランスが改善されればいいのだが。

そして「Invaders Must Die」からシングルカットされ、アルバムと同時にリリースされる「Omen」。まだリリース前だというのにも関わらず、フロアは大合唱。この曲のキックのアクセントは独特で、Liamのプログラミング技術の計り知れない高さを垣間見ることの出来る曲だ。「Poison」「Warrier’s Dance」と続き、「Firestertar」ではKeithの一人舞台となり、新しいアレンジがなされていた。「Run With The Wolves」は、音源ではFOO FIGHTERSのDave Grohlがドラムを叩いている曲なのだが、なんという攻撃性。踊りながら頭が真っ白になってしまった。ラウドロックファンには特にお勧めしたい一曲だ。

「Voo Doo People」でMaximが再び登場。メタリックなリフと高速のBPMが特徴的な、リズムがブレイクしまくった名曲だ。ここで本編は終了し、間髪入れずにアンコール!「Invaders Must Die」、「Diesel Power」「Smack My Bitch Up」、「Take Me The Hospital」と、アンコールにしてはあまりに豪華な内容。

そして更に、筆者がTHE PRODIGYで一番大好きなナンバー「Out Of Space」!殺す気ですか!というほど楽し過ぎて、踊り過ぎて、足がガクガクしてしまった。KeithとMaximのアジテーターとしての存在感は相も変わらず圧倒的で、Liamもとても楽しんでライヴを行っているのだということが、終始その表情から伝わってきた。


今までの作品からの類稀なる名曲の数々に、「Invaders Must Die」から披露された曲は一ミリも劣っておらず、むしろ更にアグレッシブで新鮮な感動に満ちていた。「Invaders Must Die」は、PRODIGYの名を更に歴史に名を刻む名盤として語り継がれるだろうとういうことが予測出来る、素晴らしいライヴだった。

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