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LIVE REPORT

Japanese

シュノーケル×LIVEHOLIC presents 波風立てないと!!特別編

Skream! マガジン 2018年07月号掲載

2018.06.08 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 吉羽 さおり

昨年、シュノーケルの自主企画ライヴとしてスタートし、今年からシュノーケルと下北沢LIVEHOLICのタッグで通年イベントとなった"シュノーケル×LIVEHOLIC presents 波風立てないと!! Supported by Skream!"の特別編が6月8日に行われた。今回は、シュノーケルのニュー・アルバム『NEW POP』のレコ発記念として、鶴を迎えたツーマン"鶴に恩返シュ"としての開催。お互いに長い付き合いで、シュノーケルの山田雅人(Dr)いわく、『NEW POP』含む再始動後のアルバム3作は、鶴に紹介してもらったスタジオで制作しているという所縁あるバンドだという。鶴の秋野 温(うたギター)は、両バンド合わせて6人中5人がメガネだとも語っていたが、実はこうしてツーマンでライヴをするのは初めて。お互いに結成からは10余年を経て、自身の音楽やライヴを一心に研磨し続けるバンドとしてがっちりぶつかり合うのだから、熱くないわけがない。

その先陣を切ったのが、鶴。"金曜日だね"という秋野のひと声で、1曲目からフロア全員参加で踊る「花のフライデーナイト」でスタートし、"やろうぜ、「ソウル最前線」!"とグルーヴィなサウンドとソウルフルな歌声を響かせると、自然と観客から掛け声やレスポンスが起こる。こちらが跳ね飛ばされそうなほど極太なドラム&ベースをお見舞いするなど、バンド・サウンドは圧倒的にパワフルだが、放つヴァイブスは眩しいほどに明るくて、音を浴びるだけで瞬時にフロアを笑顔で満たしてしまう。問答無用で、集まった人を"ソウルメイト"にしてしまう、これぞライヴ・バンド、鶴の底力。しかも、お馴染みの鶴のポーズで観客を一体化する"こんばんは、鶴です"のコール&レスポンスに、メガネ・ポーズも合わせた"こんばんは、シュノーケルです"という、このツーマンならではのバージョンでも盛り上げる、サービス精神も忘れない。後半は"シュノーケルに捧げる"と「旅人」を披露し、ラストの「乾杯」まで鶴の濃厚なソウルを注入しシュノーケルへとバトンを渡した。

シュノーケルのステージは、ニュー・アルバム『NEW POP』の「取り憑くトリック」でスタート。手拍子が湧き上がって、そのまま前作『popcorn labyrinth』のひねくれたギター・ロック「bug」で、マジカルな螺旋状のメロディを響かせフロアをシュノーケル・ワールドに閉じ込める。MCでは、KABA_3(Ba)に噛み噛みなのを指摘されながらも、西村晋弥(Vo/Gt)が鶴との繋がり、同じレコーディング・スタジオを使っていることなどをマイペースに語る。曲では爆裂しているが、語り出すとマイペースというかアットホームな雰囲気が生まれるのもシュノーケル。『NEW POP』収録のシングル「いいじゃん」では、"いいじゃん"コールも巻き起こし、KABA_3(Ba)と西村のふたりのラップに歓声が湧く。『NEW POP』のレコ発記念ではあるが、ライヴの定番や既存曲もふんだんで、「奇跡」や「無能の人」、「solar wind」や企画イベント名のもとにもなっている「波風サテライト」といった10年以上愛されてきた曲でも盛り上げた。現在、ブラジルやチリといった日本から遥か遠く離れた国にも呼ばれ、日本のアニメ・イベントでライヴをしているシュノーケル。そんな縁から生まれたのが、ブラジルで日本の漫画を扱う会社に依頼されて作った「NewPOP」だ。早口ラップ風の掛け合いとキャッチーでアイディア満載のシュノーケルの冒険が詰まった、新しいポップス、新しいシュノーケルのスタンダードといった感じで、ライヴでも抜群の威力を発揮する。今後のアルバム・ツアーがさらに楽しみになった人も多かっただろう。アンコールでは、先ほど鶴が「旅人」を演奏したのに対して、シュノーケルは「旅人ビギナー」で返答するなど、いいやりとり(というか、忖度というか)が見えたのは、ツーマンならでは。互いの今をぶつけ合った、熱くも温かな一夜となった。

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