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LIVE REPORT

Japanese

UVERworld

Skream! マガジン 2017年11月号掲載

2017.10.04 @日本武道館

Writer 杉江 由紀

歓喜と興奮。感動と衝動。熱情と激情。それらをすべてないまぜにしながら、渦巻く旋風を起こすようにこの夜の日本武道館という場を見事に撹乱していたのは、今夏に約3年ぶりとなるアルバム『TYCOON』を発表したUVERworldだ。

"何本ものライヴハウス・ツアー、長いホール・ツアー、そしていくつもの夏フェスに出てきた俺たちは、今日ここに辿り着いたぜ! みんなでヤベぇ夜を迎えに行こう!!"

真太郎(Dr)の叩き出す肉感的で圧倒的なリズムや、克哉(Gt)の響かせるエッジーなカッティングが楽曲をことさらにドライヴさせていた「DECIDED」。信人(Ba)のバキバキと鳴るスラップと、誠果の高揚するサックス・フレーズ、彰の流麗にして胸熱なギター・ソロが次々と炸裂した「CORE PRIDE」。冒頭からこの2曲で場の空気を一気に沸騰させたところで、フロントマンであるTAKUYA∞(Vo)が咆哮するようにまず放ったのは、先ほどの言葉にほかならない。

自らの存在を"TYCOON=大君"と言い切るほどに、随一のロック・バンドでありライヴ・バンドであることを自認するUVERworldが、久々のアルバムを発表した直後に行ったこのツアーにおいては、作曲クレジットにバンド名が記されていた「IDEAL REALITY」のタイトルが、そのままツアー・タイトルにもなっていたわけだが......そのファイナルを飾った武道館2デイズの最終日にて彼らが我々に提示したものは、まさにバンドとしての底力であり、実力であり、結束力であったと言える。 なお、メンバー全員によるコーラス・ワークが映えた「Don't Think.Feel」においては楽曲のクライマックス部分にて、TAKUYA∞が履いていた靴を客席アリーナに向け勢いよく脱ぎ飛ばすという事態が発生。 "いつもどおりライヴハウスでやるみたいにいこうと思っていたら、なんかテンションが上がってきて俺の情熱という名の靴が飛んでった(笑)。その靴、返してもらってもいい?"
なんでも、今回のツアーでは計4足の靴たちが行方不明になってしまったというが、幸いこの武道館公演については無事にTAKUYA∞のもとへ靴が返還されたことを、ここにしっかりと付記しておきたい。
また、恒例の真太郎によるMCのコーナーでは、今回のツアー中、仙台から青森へ移動する際にドライブがてらレンタカーにて自走し、その途中でヒッチハイクで旅をする男子2人組をその車に乗せたという、なかなかのサプライズな逸話を披露。
加えて、「シリウス」を演奏する前にはなぜか急にTAKUYA∞と誠果がステージ上にてヒソヒソ話を始め、ここでは和歌山でのオフ日に誠果がいきなり親知らずを抜いていたことが暴露されてしまっていた(笑)。
かくして、武道館という大舞台でありながらも、シリアスなだけではないUVERworldの素顔までもが垣間見られたこの公演だが、本編中盤での「奏全域」から「Massive」にかけての8曲は真太郎がセンター・ステージに設えられた別のドラム・セットへと移動し、各メンバーもフロント・ラインのギリギリまで前へと躍り出ることにより、武道館という大空間で、あたかもライヴハウスの如き臨場感満載の演奏ぶりを呈してみせた。この場面では、ある意味でUVERworldの持つ本質や、彼らの放つ音に滲む説得力や表現力たちがより顕在化することになったと言えよう。

"例えばさ。どんな失敗をしようがどんなに恥をかこうが、俺たちからは誰も奪えないものを、俺たちは持ってる。これは誰でも知ってることだろうけど、世間ではCDが売れなくなったって言われてるよね。でも、見てみろよ。それでも俺たちは、10年連続でこうして武道館ライヴをやってるんだぜ。CDが売れなくなったとしても、「ここ」で感じるものはYouTubeやDVDでは感じられないものだって、みんなもそれをよく知ってるからこそ、高ぇチケットを買って、もぎとって、ここに来てるんだよなぁ! これは絶対に、誰にも奪えないことなんだよ!!" TAKUYA∞が訴えるように発したこの言葉のあとに紡がれた「ALL ALONE」、アルバムの中でも独特の存在感を放っていたメロウ&スウィートな「SHOUT LOVE」。これらの楽曲たちも、単なるロック・バンドの範疇には収まり切らないUVERworldの音楽的土壌の豊かさを感じさせるものであり、日々進化/深化し続ける彼らの姿をこのライヴでは誰もが堪能できたに違いない。
また、終盤へと向けたアッパーなダンス・チューン「I LOVE THE WORLD」では武道館が巨大クラブと化した場面があったほか、「IMPACT」では大合唱する観客たちの声を頼りに歌うべく、TAKUYA∞が曲途中であえてイヤモニを外す、という一幕も!

"俺たちは、もうとっくに自分の夢なんて越しちゃったんだよ。でもさ、いろんな人たちの思いを背負っているなかで、まだ先はあるのに「ここでいいや」ってなっちゃうのはどうなんだろう? って考えたりしてね。だから、これからの俺たちは「行けるところまで行こう」じゃなくて、「行きたいところまで行ってやろう」と思ってる。もっと素敵な景色をみんなに見せてやるから、俺たちUVERworldについてこいよ!!"
最後に「7日目の決意」を歌い出す際、TAKUYA∞がこのように述べた言葉にも託されていたもの。それは、UVERworldとしての意志そのものであったはずだ。 来たる11月からは、いよいよ"TYCOON TOUR"と題した全国規模のアリーナ・ツアーに臨むことになるUVERworld。もはや、会場の大小などという問題は彼らにとっておそらく"どうでもいい"ことでしかなく、大切なのはそこで何をすべきかということだけなのだろう。とはいえ、ここはぜひとも"大君"にしか成し得ない偉業というものを、また各地で見せつけてきてほしいものだ。

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