Japanese
BLUE ENCOUNT
Skream! マガジン 2017年05月号掲載
2017.03.20 @幕張メッセ国際展示場
Writer 石角 友香
メジャー2ndフル・アルバム『THE END』を携えて、過去最大級のツアーをスタートさせ、その2本目が幕張メッセという、いきなりハイライトのような行程を組んだことも今のBLUE ENCOUNT(以下:ブルエン)なら納得できる。というのも、ツアー・タイトルが示すようにここ1年ほどのブルエンは、手に入れた評価や形容を"break"して次へ次へと進んできたからだ。ライヴ中、田邊駿一(Vo/Gt)は"夢ってひとつ叶っても、また次が出てくるもんだ"という意味合いのことをリアリティたっぷりに話していたが、おそらく、昨年の武道館公演が成功する前から、彼らの夢はいい意味でもっと漠然と大きなものに変化していったのだ。
ツアー続行中につき、詳述は避けるが、ツアーの中でも幕張メッセという、バンドにとってこれまでフェスでしか出演していなかった場所でのワンマンはひと際思い入れも強かったに違いない。しかしライヴがスタートしてものの3曲程度でそのキャパシティが大きめのライヴハウスのようにしか感じられなくなった。会場の最後方で見ていても、例えばZepp Tokyoで感じるような熱気をステージ上、フロア双方から感じることができたのだ。もちろん、1万人キャパでのオール・スタンディングという、ファンにとっての待望感や高揚感もあるだろう。加えて、ライヴ会場としてすっかり定着した幕張メッセの音響や照明が完全にロック・バンドのライヴ仕様にハマっていることも大きな要因だ。でもやっぱり、一瞬でその場をライヴハウス化したのは、彼らが今の自分たちを叩きつけた『THE END』というアルバム楽曲のリアリティをようやくライヴで披露できることの歓喜、そして曲そのものや演奏の強さがもっとも大きなファクターだったのだ。
アルバムでも最重要なブルエンの現在地を示す「THE END」の静かで強い意志を端正な演奏で届け、また世界的なラウド、エモと共振する「HEART」の熱いのに冷静さを保った演奏や田邊のヴォーカルは、特に突き刺さった。クラウドサーフやリフトも可能だし、実際、ライヴハウス同様にそれらは起こっていたけれど、ファンの行動もエモーションに突き動かされている印象が強かった。そう、ここはレジャーの場所でも暴れるための場所でもない。ブルエンがこれまで発信してきたメッセージが"俺にできたんだからお前もできるはずだ"というスタンスだとしたら、今現在は"俺の夢に対する行動はこうだ、お前は夢に対してどう行動してるんだ?"という、新たなフェーズなのだと思う。それだけついてきてくれるファンをバンドは信用しているのだ。そのことは、これまでなら過去を振り返り、その苦悩や葛藤をMCで具体的に話すことに代えて、「city」という新曲が存在していることにも顕著だ。加えて音源ではビートが打ち込みのこの曲をライヴでどう表現しているのか? も、未見のファンは楽しみにしていてほしい。今回のツアーのキーになるメッセージが満載されている。"居場所以上の街"としてのBLUE ENCOUNTの音楽が鳴り響く場所。まさにこの日の幕張メッセは"city"だった。
また、ソリッド且つ重低音も明確に表現するライヴのキラー・チューンでの筋力の強さはもちろん、じっくり聴かせる「LOVE」でのメンバー全員が歌を表現するような演奏も見事だった。また、ドラマに続いて映画版の主題歌も担当することになった"ラストコップ THE MOVIE"の主題歌「さよなら」は、彼らのポピュラリティをさらにアップさせるような、ど真ん中ストレートなバラード。これぞまさしく日本のロック・バンド! と快哉を叫びたくなる「涙」も合わせて、後悔や悔しさをバネにして進む号泣バンドというイメージをいい意味で壊しながら、それも包摂していくような逞しさが聴かせる曲でしっかり伝わった。
ライヴ序盤は"信じられない景色"と、若干気圧され気味だった4人も、終盤にはむしろ今日しかない、今しかない、ひとりひとりが集まって作られた空間をもっとかけがえのないものにしたくないのか? とばかりにフロアを煽っていた。嫌なことを吐き出して捨てていってもらっても結構だし、どんな自分を曝け出してくれてもOK。その代わり、自分たちも容赦なく次の夢に向かってビルドアップするから振り落とされるなよ――今のブルエンがライヴで発しているメッセージとはそういうものなのだ。それを実感させる初幕張メッセ・ワンマンだった。
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