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Japanese

グッバイフジヤマ

Skream! マガジン 2017年01月号掲載

グッバイフジヤマ

Official Site

2016.11.27 @渋谷CLUB QUATTRO

松井 恵梨菜

ステージ・セットには至るところに"嘘"と書かれた紙が貼られてあり、唯一、マイクスタンドにだけ"本当"の文字。そんなトリッキーな舞台を、登場した瞬間からカオティックな空間へと変貌させたのが挫・人間だ。グッバイフジヤマの初のフル・アルバム『この胸いっぱいの愛を』リリース記念イベントとして開催されたこの日、彼らからのラヴ・コールにより実現した挫・人間とのツーマン・ライヴ。「テクノ番長」でのっけから楽器放置でアイドルばりのダンスを披露したかと思えば、下川リオ(Vo/Gt)が"歌える? デデデデデデデストロイだよ!"との振りからグッバイフジヤマの「ですとらくしょん!」をカバー。でかでかと"嘘"と書いた紙の貼られた、グッバイフジヤマ 中山卓哉(Vo/Gt)の拡声器を下川が手に持ち、本家よりも歪みを効かせたアレンジに、極めつけは"ちゃんと俺たちを祝って!"というグッバイフジヤマなりすまし発言(?)まで飛び出すという、実に挫・人間らしいパフォーマンスを完遂してみせた。彼らの感情表現はストレートではないけれど、攻撃的な素振りは照れ隠しのようで、それらの言動が挫・人間なりのグッバイフジヤマに対する祝辞のように思えて微笑ましい。最後は下川の初恋の相手への思いや勘違いエピソードを切々と語る定番MCを経て、まだ彼から離れない彼女の存在を"除霊"するため「下川最強伝説」をプレイ。いい意味で"レコ発おめでとう!"感がない、むしろ食ってかかるような挫・人間のやりたい放題っぷりは、思わず笑ってしまうような痛快さだった。

転換時には、プププランドの西村竜哉(Vo/Gt)、アンテナの渡辺 諒(Gt/Vo)がそれぞれ弾き語りで出演。2016年春にこの2組とグッバイフジヤマ、THE BOY MEETS GIRLSで一緒に回ったツアー"グッププボイテナ"でも絆を深めた盟友たちで、神戸、仙台という遠方からこのライヴのために駆けつけたことだけでもう愛を感じる。ビター・スウィートなしゃがれた声で情緒的な歌を聴かせる西村、それとは対照的に、透明度の高いヴォーカルで思いを遠くへ飛ばすように歌い上げる渡辺。転換アクトとはいえ決して余興に留まることなく、歌とギターだけでCLUB QUATTRO中を潤してくれた。

そして、スピッツの「チェリー」をSEに、本日の主役であるグッバイフジヤマのライヴがスタート。メンバーが現れるなり、この誰もが知る名曲を会場全体で大合唱するも、中山の姿が見えない。どうやら開催前、"下川の(攻撃的な)ツイートでメンタルがボコボコになった"ため出てこられないという。しかし、合唱と歓声に応えるように中山がフロアから登場すると挫・人間に宣戦布告、拡声器を手に取り「戦争しましょう」でいよいよ幕を切った。「レノンとマッカートニー」ではオーディエンスを全員しゃがませ、1、2、3、4カウントでジャンプ! そこからはもうアクセル全開で、めまぐるしいほどのスピード感をキープしたまま、軽やかで爽快なサウンドと言葉を詰め込んだ早口なヴォーカルを気持ち良く絡ませながら走り抜けていく。カラフルな照明も、中山の"楽しくて仕方ない!"と言わんばかりのとびきりの笑顔も幸せな空間を象徴しているし、観ている方も思わずそれにシンクロしてしまう。

MCでは挫・人間について、"こんなに好き勝手やってるバンドは初めて観た"、"なかなか下川君と仲良くなれなかった"と語る中山が、「ですとらくしょん!」カバーのサプライズを受けて"好きー!"と思ったと告白。ハイテンションのままライヴは進み、「ひばりくんの憂鬱」で"つかまえて"のコール&レスポンスが始まった。そこで小島"lue"秀和(Gt)がリボンから選んだという花束を取り出し、"一番「つかまえて」って言ってくれた人にプレゼントします!"と粋な演出で盛り上げ、実際に前列のお客さんへプレゼント。「やまぐちみかこに騙された」では、中山が"ここで下川君に借りを返さないといけない!"と、まだ離れていないという下川の初恋相手を除霊すべくサビをアレンジし、"下川の初恋相手に騙された"と歌い上げる。そんな一興の最中、ふとステージの下手に目をやり"うわ、すごいのいるよ!"と気づいた中山。実は前のMCあたりから、挫・人間の夏目創太(Gt)が"本当"と書かれた紙を持ち、ステージにさりげなく佇んでいたのだ。モヒカン姿でヴィジュアルにパンチしかない彼だけに、相当シュールな光景である。そんな夏目を放置したままライヴは展開し、「Summer of Lovers」ではレンタル・タオルがフロアに投げ込まれ、爽快で瑞々しい夏を描くサマー・チューンを客席一面のタオル回しがより輝かせた。そんななか、夏目はジュリ扇を振り回しているし、もう何がなんだかといった具合の光景が、"枠にとらわれずに楽しいことをやる"というスタンスの2組らしいステージで、最高に面白おかしかった。続く「恋のダンスビート」は、"みんなを抱きしめたいけどできない。だから一緒に踊ってくれませんか?"と小島が楽曲をリード。ダンディな声質の彼とハイトーンな歌声を聴かせる中山とのツイン・ヴォーカル、中澤健介(Ba)と高原星美(Dr)のリズム隊によるグルーヴが大人なムードを演出していった。

ライヴが終盤を迎えたころ、伝えたいことをなんとか言葉にしようとするもうまく言い表せない中山を代弁し、高原がMC。"楽しい今日が過去になって、忘れてしまうことが悲しいっていう気持ちを忘れてしまうことが悲しい"――大人になっても少年心を大事に胸に抱き、それを弾けさせたような彼らの音楽を象徴する言葉だった。そのメッセージを経て届けられた、中山が昔好きだった人に宛てて書いたという「陽だまりのセレナーデ」は、跳ねたリズムや小洒落たギター・フレーズで彩りつつも、これまでの勢いをグッと抑えたバラードで聴かせる。そして本編ラスト、"バンドを始めて最初に作った曲を最後に届けます。こういう大切な日にだけやって、作ったばかりのころのまま取っておけたらと思ってます"という言葉を添えて演奏された「星めぐりのこどもたち」。大人になりきれない青春期の、途方もない不安やメランコリーを星空に託すようなセンチメンタルなこの歌を、中山は最後のフレーズまで大切に歌い切る。先ほど高原が代弁したMCとも重なる、グッバイフジヤマの根っこにある気持ちを集約したような1曲だと思った。

アンコールに応え、メンバーが登場......するかと思いきや、またしても挫・人間の夏目が我が物顔で現れ、"グッバイスジ山でしたー!"と、その名が書かれた背中を客席に向け威勢よくひと言放つ。どこまでも自由である。会場が笑いに包まれるなか、本物のグッバイフジヤマが登場しこの日に続くツアーを発表したあと、"これからもバンドは続くという曲を"と言って「BOYS IN THE BAND」を披露。すると"本当"と書かれた紙を持った挫・人間の下川、アベマコト(Ba)もステージ袖から顔を出し、舞台は大賑わい。"何だかやれる気がする"と根拠のない自信に満ちた無敵感と、心から楽しそうにジャンプするグッバイフジヤマのメンバーからは、仲間とのバンド活動を謳歌するような充実ぶりが伝わってくる。そしてフィナーレを飾ったのは、最新アルバムの表題曲であり、同作でもラストに置かれた「この胸いっぱいの愛を」。中山がバンドを続けてこられたことについて、周りの人たちへの感謝の気持ちを綴った曲を贈るという、美しいエンディングで幕を閉じた。


[Setlist]
1. 戦争しましょう
2. レノンとマッカートニー
3. 夜明けのシュプレヒコール
4. ひばりくんの憂鬱
5. やまぐちみかこに騙された
6. ですとらくしょん!
7. Summer of Lovers
8. 恋のダンスビート
9. 陽だまりのセレナーデ
10. 星めぐりのこどもたち
en1. BOYS IN THE BAND
en2. この胸いっぱいの愛を