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LIVE REPORT

Japanese

Manhole New World

Skream! マガジン 2016年12月号掲載

2016.11.13 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 吉羽 さおり

6月に1stフル・アルバム『Rosanjin』をリリースし、長い長いツアーを回ってきたManhole New Worldが、11月13日に渋谷CLUB QUATTROにてツアー・ファイナルを迎えた。「Mountaineers」でスタートしたライヴは終始アグレッシヴで、賑やかな祭りのムードだ。ドラムやパーカッション、そして大きなマリンバがデンとステージに鎮座しており、舞台上は所狭しと楽器が並ぶなか、メンバーはおかまいなしに跳ね回り、前のめりになってオーディエンスを煽る。会場の温度を上昇させながら、摩訶不思議な異国情緒に溢れたサウンドで、そしてプリミティヴな躍動感はどこか懐かしい記憶にも触れるパワーがある。そんな独自の世界にCLUB QUATTROを閉じ込めていった。実に饒舌なインストゥルメンタル。「Folklore」では、"次はサビ 盛り上げて"と書かれた大きなフリップをメンバーが掲げたけれども、そういった小道具や演出なしでも十分な、フックやキャッチーさも持ち合わせている。
 
前半には、2014年リリースの『なぜ蓋は丸いのか』、2015年リリースの『S, M, L, XL』の2作のミニ・アルバムからの曲も披露。「本能寺」では、アルバムにも参加したブラスのメンバーと森 心言(Alaska Jam)をゲストに迎え、白熱のアンサンブルとハイ・ボルテージなラップによる分厚いサウンドで、オーディエンスを興奮の渦に叩き込んでいく。また中盤では、柳澤澄人(nameshop)がゲストで登場。オーディエンスの何人かに言葉をもらい、その言葉を盛り込んで即興のポエトリー・リーディングでひとつの物語を紡ぎ上げていくという。出たワードは、"ロックンロール"、"星"、"命"、そして松田ナオト(Ba)から"瞳"。「Centaurus」にこの4つのワードを乗せ、この日このときにしかないセッションを編み上げていったのだが、これが凄まじい緊張感と熱量だった。オーディエンスも、ひと言も言葉を漏らさぬように耳をそばだて、しかしバンド・サウンドもゾクゾクするほどにスリリングに展開する面白さがあってと、手に汗握り、拍手し、拳を突き上げる瞬間も訪れる怒濤ぶり。森、バンド、そしてオーディエンス、そのいずれもが互いに食らいついていく三つ巴の戦い、といったふうだ。即興のリーディングの呼吸感と、物語の緩急や盛り上がり、ちょっとしたブレイクにも絶妙に仕掛けていくアンサンブルも、"これぞインスト・バンドの真骨頂"と言える巧妙な計らいがある。
 
終盤はグルーヴィな「与謝蕪村と与謝野晶子」に始まり、『Rosanjin』からダンサブルでダイナミックな曲を連投して、会場をワシワシ揺らしながらジャンプさせていく。フロアにカラフルなタンバリンが配られ、Regaのギタリスト 四本 晶をゲストに迎えた「DOPPELGANGER」は、シャンシャンと会場中で打ち鳴らさせるタンバリンの音色と、トライバルなループ・サウンドで、会場をトランス状態にしていった。盛りだくさんで、多彩なゲストとの濃密なセッションも次々に飛び出し、そのたびにいろんな景色を見せるようなステージだ。今回のツアーは長く、バンド史上最もしんどかったツアーだったと言う。それでも各地で最高の仲間/バンドと出会い、支えられてここまで来たとMCで語る。ラストの「kokage」の前に、ワンマンというこの最高の景色をいつまでも見ていたいと言っていたが、メンバーはみんなとても晴れやかな表情で、このツアーを駆け抜けた安堵と充実感が窺えた。朗らかなマリンバの音色に酔い、メロディアスなギターと明るいビートでグイグイと加速しながら心地よい旅をしていく「kokage」。これからのManhole New Worldの行き先をも示していくような、眩しく、躍動的な1曲となった。アンコールでは、2017年3月1日に下北沢SHELTERにてワンマン・ライヴが決定したことや、この先もまだいろいろ決まっていることがあるとアナウンスした5人。バンドとしてタフになったこのツアーが、また新しい何かに繋がっていくのだろう。

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