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八王子天狗祭2016

Skream! マガジン 2016年12月号掲載

Halo at 四畳半

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2016.11.05 @エスフォルタアリーナ八王子

松井 恵梨菜

彼らはいつも、夢に向かうところから実現するまでを見せてくれる――これまでも、バンドの目標を毎年具体的に掲げては、実現してきたグッドモーニングアメリカ(以下:グドモ)。そのひとつとして、2015年に行った日本武道館公演に次ぐ、2016年最大の挑戦がこの初開催となる主催フェス"八王子天狗祭"(以下:ハチテン)だ。音楽フェスが乱立する昨今、彼らは愛する地元である"八王子"を前面に押し出すこと、そして自身のバンド人生を象徴するような、世代/活動シーンにとらわれないラインナップで特色づけた。"天狗ステージ"、"白狐ステージ"の2ステージで総勢17組がしのぎを削った同公演。会場であるエスフォルタアリーナ八王子に到着すると、入り口に続く道の両脇に出演バンドの名前がひとつひとつ入ったフラッグが立ち並ぶ。そんな些細な配慮すら、全バンドがこのフェスにとってかけがえのない存在であることを表明しているようで、胸が熱くなった。

午前10時50分過ぎ、天狗ステージにグドモの4人が登場し開会宣言。このフェスに対する思いをまっすぐ伝える金廣真悟(Vo/Gt)とたなしん(Ba/Cho)、注意事項を述べる渡邊幸一(Gt/Cho)、緊張具合を下ネタで表現するペギ(Dr/Cho)。なかでも、終わりがけにたなしんが溢れんばかりの気持ちを集約するように言い放った、"この気持ち、伝わってほしい!"というピュアなひと言が彼らしくて微笑ましかった。そして、いよいよ開幕――"せーの、「八王子天狗祭」始めまーす!!"。

天狗ステージのトップバッターを飾ったのは、キャリア30年を超える八王子のパンク・バンド、ニューロティカ。若手~同世代を中心としたラインナップのなか、八王子の大先輩に一番手が託されたことは意味深かったと思う。ステージ間の移動のため一度ロビーに出ると、八王子のマスコット・キャラクターである"たき坊"や"はっちお~じ"、"ケイハチ王子"がいたり(彼らがライヴを観る姿も目撃した)、外の芝生には八王子フードが堪能できるグルメ・ブースがあったりと、ハチテンならではの光景が広がっていた。そして白狐ステージの最初のアクトはRhythmic Toy World。BOOM BOOM SATELLITESの「KICK IT OUT」をSEにしてメンバーが現れ、演奏が始まると一転、「新しい風景」で歌を聴かせオーディエンスをグッと引き込む。"この会場でどれだけ暴れられるか確認してこいって(グドモに)言われてます。協力してくれますかー!?"とたんかを切ると、挑発的なパフォーマンスで攻め立てた。「Team B」ではサビの歌詞どおりグッド・ミュージックでぶっ飛ばしていく様が実に痛快。会場中に響き渡るシンガロングの素晴らしさは、内田直孝(Vo/Gt)が思わず"やばっ"と声を漏らすほどだ。彼らのステージは開演前から入場規制で長蛇の列ができていたのだが、"まだ入場規制かかってるの? だったらそこ(並んでくれてる人たちのところ)に行ってありがとうって言ってきたい"と、内田はライヴを抜けて本当に外へ。白狐ステージで好きなだけ暴れられることを彼らは十分に証明してみせた。

この日は八王子バンドのみならず、グドモの第2のホームと呼ぶべき渋谷TSUTAYA O-Crestを中心としたギター・ロック・シーンの仲間も顔を揃えていた。その筆頭と言えるアルカラが天狗ステージの二番手に登場、グドモの「空ばかり見ていた」をSEにするという、にくいサプライズをいきなりプレゼントする。「アブノーマルが足りない」、「チクショー」など、性急なビートとハードなギター・フレーズが押し寄せるライヴ・チューンが続くなか、新曲「炒飯MUSIC」での中国語や、タイアップとなっているTVアニメ"ドラゴンボール超"へのオマージュ溢れるフックがいいアクセントになっていた。MCでは、稲村太佑(Vo/Gt)が声を高めのトーンに変え、"初めて八王子に来たんだけど......こんないいところがあるなんて知らなかったなぁ"と、"GOOD ON THE REELの千野隆尋(Vo)が言いそうなMC"を彼のモノマネで語り、笑いをかっさらう。さらにはハチテン出演に関して、たなしんから置き手紙で"11月5日をください"とオファーがあったと、冗談のようなエピソードも飛び出した。

グドモと同い年だというTHE BAWDIESは、"心を裸にしてロックンロールの海に飛び込んでいただけますか!?"とROY(Vo/Ba)の言葉でオーディエンスの心のストッパーを外す。ロックンロール・マナーに則った楽曲、各パートのテクニックを見せつけるようなパフォーマンス、どこを取ってもクールで本当に完成度が高い。MCでは、開催前にたなしんから"家に遊びに行くね"と電話があり彼のことを調べたというROYが、"出てくる写真のほとんどが裸で、それで家に来られたら嫌だと思って連絡を途絶えさせてもらいました(笑)"とたなしんをいじり倒した。そして盛り上がり絶好調なところで、"パパ、あの鼻の長い生き物は何?"と小芝居を始めるROY。続けて"天狗だよ。話し掛けてごらん"とMARCY(Dr/Cho)、"鼻は何でできてるの?"(ROY)、"あげるよ、ホラ"(TAXMAN/Gt/Vo)、"パン!?"(ROY)......といったように"天狗"を絡めた寸劇を経て「HOT DOG」を披露するという、エンターテイメントとしての魅せ方にも長けたステージを届けてくれた。

白狐ステージではircleの出演にもなかなか感慨深いものがあった。グドモのメンバーが"大分にすっげぇいいバンドがいるから観てもらいたい!"と言って、2010年の自主企画イベント"凌ぎ合う vol.2"にircleを呼んでいたのをよく覚えている。そしてこの日、"8年前に出会って、「一緒に盛り上げていこうや!」っていろいろやってきて、その8年後が今ですよ"という河内健悟(Vo/Gt)の言葉ひとつひとつを、フロアにいたたなしんが噛み締めながら聞いていた。そんな旧友との友情を何度も目の当たりにできたことはこの日のハイライトだが、ハチテンは、ただ仲間内だけを呼んで懐古に浸るイベントではない。グドモがネクスト・ステージを見据え、これから関係を築いていきたいバンドも声を掛けていたと思う。その1組が天狗ステージでのTHE BACK HORNで、"グドモに奇跡を残せるよう、全力で演奏していきたいと思います"との松田晋二(Dr)の言葉どおり、1曲目の「刃」から本気度が十二分に窺える、情熱が迸るステージングで真っ向からその音楽を投げつける。それに呼応するかのように、拳が上がりまくった熱狂的なフロアも凄まじい。そんななか、静と動のダイナミズムで感情を揺さぶりながら歌い叫ぶ「晩秋」、ピアノ&ストリングスをフィーチャーした、THE BACK HORNには異色のラヴ・バラードである最新曲「With You」を立て続けに披露し、渾身の歌を届ける。最後まで余力を残すことのないパフォーマンスは、まさに圧巻のひと言に尽きるものだった。

フェスが後半戦に突入したところで、KEYTALKが祭りに華を添える。グドモの渡邊からのリクエストだという「MABOROSHI SUMMER」で幕を開け、続く「YURAMEKI SUMMER」で完全に会場を祭り一色に染め上げた。小野武正(Gt/MC/Cho)のMCでは、グドモ企画のコンピレーション・アルバム『あっ、良い音楽ここにあります。その参』に「B型」が収録されたこと、そのレコ発でグドモの"ファイヤー!"に対抗し、"サンダー!"したことを語りつつ、たなしんの定番ゼリフ"心の中の何かが「コッ」って1ミリでも動いたら~"をモノマネし、観客を沸かせた。中盤に挟んだ強力なポップ・チューン「Love me」で会場に甘酸っぱい後味を残したのち、ラスト2曲はKEYTALK最大の武器である"祭り×ダンス・ナンバー"をプレイすることを宣言。寺中友将(Vo/Gt)による福山雅治のモノマネ(激似!)からのノンアルコール・ビール一気飲みを経て、「MATSURI BAYASHI」、「MONSTER DANCE」を投下! コール&レスポンスの最中に突如静止するなどの遊びも盛り込み、オーディエンスの心を掴んで離さないステージで魅せた。

"はじめまして、お邪魔します"と謙虚な挨拶からライヴがスタートしたのはストレイテナー。意外に思ったリスナーも多いだろう、"何を隠そう、ストレイテナーは八王子から始まりました"とのこと。上京してから初めてライヴをしたのが、今はなき八王子のライヴハウス。"そこで対バンしたバンド、初めてお客さんになってくれた人、今でも忘れません。たなしんから今回声を掛けてもらって、断る理由はありませんでした"――そう語るホリエアツシ(Vo/Gt/Pf)のMCは、バンドにとって八王子という街がいかに特別な場所かを真摯に伝える。そんなエピソードからの、憂いを帯びた静寂な音像からエモーショナルに加速していく「冬の太陽」、そのスピード感のままイントロからラストまで走り抜ける「TRAIN」の2曲は胸に迫るものがあった。エンディングを飾ったアンセム的ナンバー「Melodic Storm」では、その芳醇なメロディや、光射すような解放的なサウンドが会場をあたたかく包む。最後に肩を組んで一礼すると、素晴らしいショーであったことを称賛するような拍手が贈られた。

白狐ステージでの終盤戦は、LEGO BIG MORLとHalo at 四畳半が熱演。結成10周年ツアー中のLEGO BIG MORLはなんと、"ほんとは今日、広島でライヴが決まってたんですけど、たなしんさんから電話があって日程をずらしました!"と言う。加えてタナカヒロキ(Gt)が、"グッドモーニングアメリカとアルカラは、たくさんいる先輩の中でもいつか借りを返したい先輩なんです"とグドモへの強い思いを語った。中盤、結成当初からバンドが大切にしている1曲「Ray」の演奏を始めると、ステージ袖からアルカラの稲村が登場! 楽曲にゲスト参加......というサプライズは残念ながらなかったものの、カナタタケヒロ(Vo/Gt)に寄り添いエアギターをしたり、オーディエンスを煽ったりと、自由奔放な立ち振る舞いに柔らかい表情を浮かべるメンバー。最後にプレイされた「RAINBOW」での美しいシンガロングと相まって、歓喜に満ちた空間が広がった。

続いては白狐ステージのトリ、Halo at 四畳半。この日最年少にして、グドモへバトンを繋ぐという大役を任された彼ら。相当の強い思いを背負っていたのだろう、1曲目「春が終わる前に」から、いつも以上に真剣且つ熱のこもったパフォーマンスだったように思う。"僕らにとって、グッドモーニングアメリカはかけがえのない存在です。みなさんに(グドモへの)気持ちを託すから、僕らのライヴが終わったらすぐに天狗ステージに走って、僕らの思いをグッドモーニングアメリカにぶつけてください"と白井將人(Ba)。その言葉は紛れもなく切実な本心だったに違いない。存在感と説得力を十分に備えた歌と、それを支えるギター・ロック・サウンド――その根底にはグドモとも通ずる、"届けたい"というひたむきな思いが通っているように感じた。

そしていよいよ、祭りの発起人であるグドモが天狗ステージのグランド・フィナーレを飾るときが来た。トリ前を務めた、彼らの最大の盟友 TOTALFATは、グドモと出会ってから今日までの十数年の集大成と言っても過言ではない、タフで感動的なライヴをやり切っていた。そんな親友から引き渡された舞台であり、16組分の万感の思いを受け止めてのアクトだ。グドモもそれ相応の思いで臨んでくるだろうと、幕が開ける前から期待が高まる。ここまで、ほぼ全バンドのライヴでグドモのメンバーを見かけた。とりわけたなしんは、当たり前のように客席の中に突っ込んでいき、誰よりも楽しんでいる姿を目撃したが、そういうところもグドモがたくさんのバンドから愛されるゆえんなのだろう。

場内の照明が落ちると、スタンド席通路に天狗が登場。たなしんの声で、"わしは高尾山からやってきた、パリピ好きのたな天狗じゃー! 楽しそうだからそっちに行くぞ!"と言いながら走ったかと思えば、その直後にたなしんがステージに現れ、"みんなめっちゃかっこよかったでしょ? でも、この気持ちは誰にも負けなーい!"と高らかに声を上げ、お決まりの"ファイヤー!"を経て「コピぺ」でライヴがスタート。熱量が並大抵じゃないことは言わずもがな、百戦錬磨のライヴ・バンドとして磨き上げてきたソリッドなサウンド、思いの丈が詰まった言葉のひとつひとつが突き刺すように飛んでくる。ライヴで披露するごとに曲に魂が宿り、成長しているのが目に見えるようだった。"グッドモーニングアメリカは、八王子で結成されて八王子で育ったバンドです。いつか恩返ししたい、音楽フェスがやりたいってずっと思ってました。そして今日、ついに叶えることができました!"という渡邊のMCに会場は拍手喝采。TOTALFATで泣きそうになったという金廣は、"八王子は俺らがバンドを組んで、青春を送ってきた場所です。そこで繋がった人にもらった恩はたくさんあるんだけど、なかなか返せるもんじゃないなって最近思います。でも、この「八王子天狗祭」というイベントを続けていくことが、恩返しになるんじゃないかなって"と思いを述べ、そんなホームに帰るたびに思い浮かぶ風景を歌ったという「いつもの帰り道」を届ける。"夜空を見上げるよ"での金廣のファルセットが、空に染み渡っていくような儚さでたまらなく郷愁を掻き立てた。そして本編ラストを締めくくったのは「空ばかり見ていた」。もがき続けてきたインディーズ時代のリアルなバンドの葛藤が詰まったこの曲を演奏し続けることで、当時の気持ちを今もなお忘れず前に進んでいることを伝える。そして4人揃い、10秒以上にも及ぶ長い礼をすることで真摯な姿勢を見せ、メンバーは一度ステージを去った。

アンコールで戻ってくると、12月14日に4枚目のフル・アルバム『鉛空のスターゲイザー』のリリースが決定したことを発表。"終わりたくねーな"と渡邊、金廣が"聞いたことあるセリフだな"と言うと、渡邊は"武道館で君が言ったんだよ"と、心あたたまるやりとりをしたのち、このイベントを今後も続けていきたいという意志を表明、「そして今宵は語り合おう」の歌唱が突然始まる。"八王子! 語り合おう、またね!"――このとき、先ほどTOTALFATのライヴで聞いたMCを思い出す。"下校中、(グドモのメンバーとは)音楽の話ばっかりしてて。あんなことやりたい、誰と一緒に対バンしたいとか、それをお互いひとつひとつ叶えていってる"――そうして彼らは、今日このステージに立っているのだ。"あの頃の二人に戻ったら/怖いもんなんてないよ"と、八王子で過ごした青春時代を胸に、バンドは未来へ。最後の「未来へのスパイラル」では、大サビで大合唱が起こると、袖でライヴを見ていた出演者が思わずステージに続々現れ、お祭り騒ぎに。演奏を終え、客席をバックに記念撮影をする際にたなしんの口からこぼれた"バンド続けててよかったー!"のひと言が、グドモの現在地を象徴していたように思う。次はどんな夢を叶えてくれるのだろうと、すでに高まる気持ちが抑えられない。