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LIVE REPORT

Japanese

LiSA

Skream! マガジン 2016年06月号掲載

2016.04.20 @NHKホール

Writer 沖 さやこ

コンサート・ホールはアーティストの力量が試される場所だと思う。ホールには制限が多い。ライヴハウスとは違い椅子の位置が固定されているし、アリーナ・クラスの会場とは違いオリジナリティのある派手なセットが組めないことに加え、出演者が振る舞えるスペースはほぼステージのみである。ホール・ライヴをしっかりと魅せられるアーティストこそ、実力と華のあるアーティストなのではないだろうか。
LiSAにとって初のホール&Zeppワンマン・ツアー。初日の4月20日はソロ・デビュー5周年記念日でもあり、その5周年を祝したミニ・アルバム『LUCKY Hi FiVE!』のリリース日。そしてこの日の会場となったNHKホールは、Girls Dead Monster時代に彼女がソロ・デビューを発表した場所でもある。いろんな"特別"が重なったこの日、LiSAというアーティストはすべてをエネルギーにして、観客とともに幸せな空間を次々と作り出した。
 
場内が暗転するや否や、客席はペンライトによってピンク色の海のように。ラフにステージに登場したLiSAは大きく広げた左手を高く掲げ、"5周年始めるよ! 最高に楽しんでいきましょう、ピース!"と叫び、5周年記念日の1曲目に相応しい楽曲を力いっぱい届けた。これまでの歩みを重んじる彼女にとって、この日は5周年のお祝いだけではなく、この5年間への感謝、そしてソロ・デビューするまでに歩んできた人生への感謝、すべてに対する想いが詰まっている気がした。そしてその経験をすべて自分のものにしているからこそ、NHKホールのステージに華を咲かすことができたのだろう。20代後半という年齢ならではの女性的な柔らかさと、少女のようなパワフルなキュートさ、しなやかで可憐な色気。彼女は自分の器を使って最大限に音楽の世界を体現する。効果的に用いるファルセットにまで、細やかな神経が通っていた。
"今日はひとりひとりが思いっきり遊べるスペースを用意しました。今日初めて来てくれた方も、普段ライヴハウスで一緒に遊んでいる方も、それぞれの遊び方で前後左右の人にちょっと気をつけながら思いっきり遊んで、最高の夜にしましょう!"――彼女がそう言ったあとは、鍵盤ハーモニカやギターを持ってパフォーマンスする場面が。ダンスで培った身体の動きと抜群の歌唱力で魅せる彼女は非の打ちどころがないくらい"LiSA"を確立させているのだが、ギターを弾いている最中にこまめに手元を見ているところに初々しさが感じられ、微笑ましくなった。その後も彼女は曲ごとに表情を巧みに変え、それを全身で表現する。LiSAッ子の愛に甘んじたパフォーマンスをすることは彼女の頭の中にはない。観客のエネルギーを一身に受けてさらに大きくなる、それがLiSAという表現者なのだ。
 
もちろんこの日は、同日にリリースされたミニ・アルバム『LUCKY Hi FiVE!』の収録曲も披露。Pay money To my Pain のPABLO(Gt)が作編曲を担当した「She」から、SiMのMAH(Vo)が作曲した「L.Miranic」へと続く流れは、LiSAが日本のラウドロック第一人者たちによるヘヴィ・ナンバーをしっかりと着こなしていることを証明した。これがLiSAの持っているポップ・アイコンとしてのセンスだ。どんなものもポップにさせる力を持つポップ・アイコンもいるが、LiSAの場合はクリエイターのカラーに寄り添って、そこから引き出される自分自身を楽しんでいる。そこにはもちろんクリエイターからLiSAへの愛もあり、その信頼関係がさらにLiSAを唯一無二のポップ・アイコンにしているのだ。やはり彼女はロックだけに縛りつけておけるような表現者ではない。
生身で体当たりするようなバラードではピュアな歌声を聴かせるなど、本当に隙がない。彼女をそうさせているのは、様々な人の想い、そして様々な人への想いである。LiSAというアーティストはそれらをすべて背負い、ステージに立つ。それに誇りを持っている。本当にプロ意識の高い人だと思う。だが、ふとしたときに音楽大好き少女の無邪気な笑顔をのぞかせる瞬間も多々あるところがずるい(笑)! 強い想いから生まれる情熱と、演じることで生まれるスター性、その両方を兼ね備えているのだ。
 
最後に、特に印象に残ったことを書き記しておく。それは彼女の代表曲のひとつであり、ファンへの想いも強く込められた「Rising Hope」で、客席に様々な色のペンライトの光が灯ったことだった。ピンクだけでなく、緑、青、オレンジ、赤、白......ここまでいろんな色で満たされたのはこの曲だけだったと思う。これは"この曲がファンひとりひとりの歌だ"ということが可視化されたものではないだろうか。観客ひとりひとりがこの曲に対して自分の気持ちを重ね、思い思いに楽しんでいることが伝わってきて、心の中が満たされていった。
MCでは等身大の気持ちをそのまま届ける温度のある声がとてもかわいらしくて、本当にすぐそばで彼女が自分に話し掛けてくれているように聞こえた。昔のLiSAはこんなMCをしてないだろうなと、5年という歳月の濃さを思い知る。この日、11月26日(土)、27日(日)に横浜アリーナにて"LiVE is Smile Always~NEVER ENDiNG GLORY~in横浜アリーナ"を開催することも発表。LiSAの冒険はまだまだ終わらないし、彼女は彼女を取り巻く人間全員と一丸となって、まだ見ぬ栄光を作り上げるはずだ。

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