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LIVE REPORT

Japanese

DOES

Skream! マガジン 2016年04月号掲載

2016.03.02 @新代田 FEVER

Writer 石角 友香

"ディケイド・オブ・イノセンス"を掲げたメジャー・デビュー10周年。その初っ端のライヴをニュー・シングル『KNOW KNOW KNOW』のリリース日に開催する軽快さ、しかもこのライヴが発表されたのは1ヶ月前に満たない2月10日だ。今、DOESは心身ともに最高のフットワークで活動している、そんな印象でライヴに臨んだ。そしてその印象は実際のセットリストや4月リリースのニュー・アルバム『INNOCENCE』からの新曲披露で確信に変わっていったのだ。
 
開演前は若干余裕があったフロアも次第に埋まってきた19時半過ぎ。メンバーがステージに登場する。近い。3人のテンションにストレートに反応するフロア。そこに冒頭から「バクチ・ダンサー」がプレイされるのだからもう手がつけられない。しかもギター、ヴォーカル、ベース、ドラムの分離のいい出音でもって、氏原ワタル(Vo/Gt)の言葉のひとつひとつもいちいち刺さってくるのがいい。歌詞を覚えているファンが大多数だとしても、今ここで更新されたナマの歌がダイレクトに聴こえることの意義は、この日のDOESがやろうとしていることに直結している。しかもエンディングも潔い。"DOESナンバーってこんなにショート・チューンだったっけ?"というぐらい、畳み掛ける楽曲群のフォルムがシャープだ。
"あづいー! 「KNOW KNOW KNOW KNOW」よく来たね! いらっしゃ~い!"と、大きな笑顔でワタルが感謝を述べ、今日はシングル以外にニュー・アルバムからも、レア選曲も届ける旨をMC。歓喜に沸きまくるフロア。"春を逃すとやれない曲があるから、今日はたっぷりやる。例えばこの曲......"と、アコギに持ち替えての「春」。"正しい日本のロック"なんて定義はないが、哀感とドライさがないまぜになったこの曲でのワタルの歌声は、間違いなくその血脈だ。
"『INNOCENCE』からもやってもいいかい? 聴きたいか?"という問いかけに呼応するファンの歓声は大きくなるばかりで、それを受けてのワタルの曲紹介も、どこか物語的な色合いを強めていく。MCと曲紹介の継ぎ目がないことが、ライヴ全体の流れとグルーヴを生み出していて効果的だったのだが、例えばこんな感じ。"聴きたいか? じゃあ、バカになって聴いたらいいよ、「バカヤロウ」"。え? それがタイトルなの?って感じだが、笑いながらも新曲に注力させてしまう吸引力は相当なものだ。肝心の曲はカウパンクっぽさにほんのり脳天気なニュアンスを込めながら、"女の子に出会いたいバカヤロー"と歌う。つまり、古今東西の最高のロックンロールの常道である、"ボーイミーツガール・ソング"と言っていいだろう。だがその端々にDOESらしい切なさやぶっきらぼうな部分もあるのだが、バンドがキャリアを重ねて来た今、結局、"素敵な女の子を探してるんだ"という身も蓋もない感じ......それは大げさに言えばロックンロールの軸だし、人間が生きてる証でもあるんじゃないだろうか。なんていい曲なんだろう、そう思えるタイミングも含めて、今、DOESが作ったことが腑に落ちる曲だ。
「ウー・アー」で短いコール&レスポンスを挟み、ステージ上にはアコギを抱えたワタル1人になる。そこで"5年前の3月11日のことを忘れない"と語りながら弾き語りで、「今を生きる」を歌い切る。新曲もレア選曲も盛り込みながら、3月になったばかりの今日だからこそ歌いたい1曲も投入してくるラフさというか、ナチュラルさの中にも今のDOESの風通しの良さを感じた。大きなステージでもなく、凝った演出もない中、曲そのものの色合いで場面転換していくバンドの底力も同時に垣間見えた。
 
改めて赤塚ヤスシ(Ba)と森田ケーサク(Dr)を呼び込み、特にカテゴライズ不可になってきた森田の風貌を肴に会場全体でひと笑いしたあとは、1stアルバム『NEWOLD』の1曲目、まさに始まりの曲である「ウォークマン」をプレイ。乾いたアメリカン・ロック・テイストも彼らの魅力なわけで、その後の「世界の果て」のロードムービー感へとひとつの流れが生まれていたのも印象深い。そこへビートもギター・カッティングもとにかく重くラウドなイントロが鳴り響き、メジャー・デビュー前からのレパートリー「恋愛の疑惑」が放たれる。重いのになぜか優しさすら感じ、曲調はまるで違うのに先ほど披露した新曲「バカヤロウ」と近い歌詞の世界観に、ワタルが持つティーンエイジャーへの眼差しの優しさを感じずにはいられなかった。もちろん、「恋愛の疑惑」が生まれた当時は彼自身、まだ20代だったはずだ。憶測にすぎないけれど、今、40代を目前にした彼は寛容さを身につけ、同時にバンド・サウンドそのものは前向きな攻撃力を蓄えるというバランスの良さを手に入れたんじゃないかと思うのだ。
そして懐かしい曲から再び一気にニュー・アルバムから新曲「ヘイヘイヘイ」、ジャンプを促されたフロアが本気でバウンドした「レイジー・ベイビー」、ライヴが進むにつれ、さらにイントロへの集中度が増したことに驚いた名曲「三月」。スピード感だけじゃなく、曲と曲の繋がりにも、『KNOW KNOW KNOW』のリリース日にライヴを行うことにも意味があり、そして来るニュー・アルバムからの新曲も複数披露したこの日。いつどんな日のライヴにもそれぞれの意味はあるけれど、この日、DOESは再びそのかけがえのなさを自らも堪能しているように見えた。
"これを聴きにきたんだろ?"と、本編ラストに「KNOW KNOW KNOW」を配し、すでに展開も歌詞も浸透しきっているファンの凄まじいリアクションとともに、三連のつんのめるリフ、サビのプリミティヴに躍動するビートの新しさをライヴで体感させてくれた。本編18曲の内容と意味の濃さ。正直それで完結していいぐらい締まった内容だったが、アンコールも遂に音源化された「ランノヴァ」を始め、キラー・チューン「修羅」や「曇天」でフロアは再び沸点に。そんな中でも本日、アルバムから3曲目の新曲「ロックンロールが死んで」と題された、10代のパンク・キッズが書きそうな、初期のTHE BLUE HEARTSを想起させるような楽曲が突き刺さった。逆説なのかなんなのか。早くアルバムを聴きたくなるDOES、2016年の始まりそのもののライヴだったのだ。

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