Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Overseas

SMALLPOOLS

Skream! マガジン 2016年01月号掲載

2015.12.01 @渋谷duo MUSIC EXCHANGE

Writer 石角 友香

アルバム『Lovetap!』での印象は初期PASSION PITなどUSインディー色をよりパーティー・ポップに昇華したバンドというものだったが、ライヴに触れるとSMALLPOOLSが、より広範囲にポピュラーなピアノ・ロックや80sサウンドなどにも影響されたロック・バンドであることが実感できた。
 
"SUMMER SONIC 2015"から短いスパンで来日したにも関わらず、会場のduoは幅広い年齢層のファンで超満員。仕事や学校帰りに気楽に、でも思いきり弾けたい、そんな日常の延長線上に洋楽アーティストのライヴがあること自体、最近ではレアな場面に思えた。そしてそれはとても素敵なことだ。
 
ヴィヴァルディの「四季(春)」に乗せてメンバーが登場すると、凄まじい歓声が上がり、Beau Kuther(Dr)の四つ打ちのキックに合わせて大きなハンドクラップが起こり、ポップな「Over & Over」でフロアはいきなりトップギアの盛り上がりを見せる。インディー・ポップらしさを感じさせるコーラスが魅力の「Mason Jar」では、コーラスだけでなくフックとして入る"Yeah!"まで、ファンがSean Scanlon(Vo/Key)とともに声を上げる完コピ(!?)ぶり。立て続けにシンセのドリーミーなイントロに待ってましたとばかりにクラップを食い気味に放つファンの熱量にステージ上も、音源での透明感溢れるキラキラチューンを若干、強度を上げて演奏しているように見えた「American Love」。想像以上の熱気なのかエンターテイナーっぽい赤いジャケットを脱いだSeanに向かってフロアからは"マッスル・マン!"と掛け声がかかったり、ステージとの距離の近さも手伝って、終始、フレンドリーなライヴが展開されていく。
 
中盤にはカバーや"生マッシュアップ"を聴かせてくれたのもユニークな試み。スケール感のあるシンセ・サウンドのイントロに始まり、この日唯一のスロー・ナンバーだった「A Little Hero」(オリジナル曲は映画"ドライヴ"のサントラに収録)で、そのままBeauのドラム・ソロに繋ぎ、しかも後半はJustin Bieberが歌うJACK Üの「Where Are Ü Now」に変化するというアイディアに聴き入る場面も。他にもTHE KILLERSの「Human」と自身の「Karaoke」の生マッシュアップを"今夜のためにやるよ"とサラリと披露してくれたのもなかなかのセンス。そしてベースのJoe Intileのところに集まり、ギターのMichael Kamermanはアコギに持ち替え、ミニ・アコースティック・コーナーとしてBill Withersの「Lean On Me」をカバー。シンセ・ポップ/ロック・バンドとしてのSMALLPOOLSの明るさとはまた違う太陽のようなあたたかさを醸し出してくれた。いや、ホントにSeanが東海岸より西海岸のほうが性に合ったというのがなんとなくわかる。
 
"次の曲もたぶんみんな好きだと思うんだけど、ジャンプしてくれる?"と、前振りして突入したのはタイトル・チューン「Lovetap!」。Michaelの必要最低限にしてキャッチーなリフが小気味いい。熱唱していたSeanがフロアに降り、誰もが視線を集中させる。それにしてもどんなにファンに囲まれてもまったくヴォーカルがブレないのはお見事。ステージに戻って"疲れた......"のひと言に笑いが起こる中、"次の曲でラスト......"というMCに本気の"ええーっ!"が返され、"とは言え、ラスト、でもないんだけどね"と、また笑いを起こすSean。そこにドラムのカウントと80s風なシンセが入り、おなじみ「Killer Whales」とわかると同時にサマソニでは大海で跳ねるぐらいに見えていたシャチ人形が2匹フロアに投げ込まれて、これが案外大きい! 静かな地メロでもシャチが跳ねる絵はなかなかシュールだが、ステージもフロアも全力で今この瞬間を楽しむ。そう、SMALLPOOLSのスタンスは聴き手を楽しませるための"いい曲"であって、主義やトレンドが先にあるわけじゃないのだろう。フロアも2階席も会場全体が彼らのビートとカラフルなサウンドに焚きつけられて、ジャンプ、ダンス、シンガロングが最高潮に達したところで本編終了。
 
アンコールの拍手というか、もっとパーティを続けたいというファンの熱量に押されて、すぐさま"Hello, Again!"とステージに戻ってきた4人は、タイムレスなポップ・チューン「No Story Time」、最後の最後にタイトなビートとクセになるメロディ・ラインがカタルシスをもたらす「Dreaming」で、再び大きなシンガロングを巻き起こした。明らかに2015年らしいミニマルなサウンド・デザインなのだが、メロディのエヴァーグリーンな輝きがSMALLPOOLSをジャンルに括れない自由なバンドたらしめているのだろう。新曲を増やして早く再々来日して欲しいものだ。

  • 1