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LIVE REPORT

Japanese

ねごと

Skream! マガジン 2016年01月号掲載

2015.11.23 @LIQUIDROOM ebisu

沖 さやこ

ねごとのメジャー・デビュー5周年を記念して行われた"お口ポカーンフェス?!"、なんと出演はねごとのみ。LIQUIDROOM1Fのライヴ・ホールを利用した"ねごとステージ"と2Fのフロアを利用した"ひとりごとステージ"の2ステージ制で、前者にはねごとが5バンド登場、後者ではメンバーそれぞれがソロで登場するという長丁場イベントである。メンバーの体力が持つのだろうか?と心配になりながらの参加だったが、LIQUIDROOM前につくと入り口前には巨大なタイム・テーブルが貼り出され、2階の窓にはこのイベント用に撮影したアーティスト写真。フードの出店もある。その隅から隅までねごと色で染まった光景を見て"あ、本当に今日はフェスとして楽しむべきなんだな"と思った。階段をのぼったホールにはメンバー監修のフードやドリンクの出店もあれば、過去の写真が展示されたエリアも。そして至るところに"ねごと検定"という問題用紙がある。ねごとにまつわるクイズに正解すると特別なプレゼントがもらえるそうだ。ホール横のドリンク・スペースも物販や展示で賑わい、"ねごとステージ"フロア下手には巨大なスクリーンも設置されている。どうやらここで"ひとりごとステージ"の様子が見られるとのこと。出演者はねごとのみだが、これは紛れもなくフェスだった。
 
開演14時より少し前に、リーダーの藤咲佑(Ba)の影アナが流れると、"ねごとステージ"には1組目のねごとが登場。衣装は全員パジャマに身を包み、蒼山幸子(Vo/Key)が上手、沙田瑞紀(Gt)が中央という立ち位置で初期スタイルのねごとである。1曲目は「インストゥルメンタル」。蒼山の弾き語りから幕を開ける。静かに優しく強かにこの日の幕を開けると、「透き通る衝動」、「七夕」、「ランデブー」、「うずまき」とデビュー・ミニ・アルバム『Hello! "Z"』、1stアルバム『ex Negoto』収録曲を丁寧に演奏する。この曲たちを10代で作っていたのか......と考えるとその才能に改めて敬服せずにはいられない。彼女たちの鮮烈なデビューと、5年間メジャー・シーンで音楽を続けてきたたくましい演奏が歴史を物語る。余韻を残すように奏でられたミディアム・テンポの「夕日」で、長く楽しいこの日の始まりを印象づけた。
 
 
続いて"ひとりごとステージ"には藤咲が登場。持ち時間の20分で"みなさんと会話しながらケーキ作りをしようと思う"とのこと。もともとお菓子作りが得意なのはファンには周知の事実だが、まさかそれをこの目で見られることになるとは。メンバー4人それぞれの個性やキャラクターが立ってきたからこそできる企画だろう。バクの絵柄が入った水色のエプロンを纏い、髪の毛を結った姿もとってもキュート! 事前に焼いてきたスポンジにアドリブでデコレーションを施していく。横にはアシスタントとして沙田がいたのだがアシストしているのかしていないのか......なアシスタントっぷり。それに対してケーキを作りながらやわらかい口調でありつつもちゃんとツッコミを入れる藤咲に、リーダーの姿を見た。無事時間内にケーキは完成! "ひとりごとステージ"のトップ・バッターは、大盛況でその任務を終えた。
 
続いて"ねごとステージ"2組目のねごとが、今年の初夏に行われた全国ワンマン・ツアー時の衣装で現れた。「未来航路」や「黄昏のラプソディ」、「GREAT CITY KIDS」など、今年育んできたモードを遺憾なく発揮するのびのびとしたステージ。やはりフレージングには成熟が表れるのだろう、澤村小夜子(Dr)のドラムの表情の豊かさが1組目のねごとよりも際立つ。ひとりひとりがまっすぐ前を見て自分たちができることの精一杯を音に注ぎ込んでいるのが初期曲だとしたら、今のねごとの音色は全員が一点を見つめて、そこに向かってひとつの音楽を作っているようだ。何より2回目......いや、2組目のアクトとだけあってだいぶ身体もあたたまっている様子。メンバー曰くこのフェスは"ガチンコ対バン"らしく、澤村は"あんなパジャマのバンドに負けてられない"と1組目のねごとに闘志をむき出しにする(笑)。4人全員が歌う姿も印象的な「100」もクールに決めて、ラストは「sharp ♯」。現在形の楽曲と中心に過去曲を盛り込んだ、ねごとらしいステージだった。
  
そのライヴ終わりに株式会社 明治の社員がスーツ姿でステージに現れ、バンホーテン・ココアを愛してやまずステージ・ドリンクにもしている澤村にバンホーテン・ココア1年分をプレゼントするというサプライズが! フロアからは盛大なバンホーテン・コール。なんと我々観客もこの日はバンホーテン・ココアが飲み放題ということで、ホール横のロビーにはいつの間にかバンホーテン・ブースができあがり、澤村×バンホーテン・ココアの顔はめパネルまで(笑)。一気にフェス・ムードが高まる。"ひとりごとステージ"は澤村の出番。幼少時代に習っていたお箏を披露するということで、桃色で花柄の着物を着て登場した。その腕前も確かなもので、LIQUIDROOMは一気に艶やかな和の空間に染まっていく。そして「黄昏のラプソディ」にお箏のアレンジを施すと言う彼女は、スピーカーから流れる同曲に合わせて演奏。テンポの速い楽曲を様々な弾き方で観客を魅了し、1番と2番のアレンジがまったく違うところにも意識の高さを窺わせる。
 
そして"ねごとステージ"には3組目のねごと。ステージには黒い幕がかかり、その奥から「flower」のイントロが聴こえてくる。その幕が開くと、真っ白な背景一面に映像が映し出された。メンバー4人の衣装も白で統一。VJと生演奏で世界観を作るというねごとにとって新たな挑戦だ。とはいえ映像とのシンクロの見事さは今年の6月に行われたZepp DiverCity Tokyoでのワンマン・ライヴで立証済み。今回はその進化系とも言える。だが映像との一糸乱れぬ演奏には独特の緊張感があった。演奏された楽曲も大学と音楽の両立でなんとか必死に活動をしていた時期のものだからなおさらだ。その当時の葛藤が生々しく表れるようでもあり、時に幻想的にも映り......ステージから目を離すことができなかった。そのあとに演奏されたのは新曲。アップ・テンポでダンサブルでありながらも切なさ滲むメロディとダークでひりついた空気感のあるもので、これまで築いてきた土台で作り上げたネクスト・ステージを感じさせるものだった。全5曲、ノンストップでメンバーの絆を描いた映像を走らせたライヴ。強く結びついた音が彼女たちの気持ちを何よりも如実に語っていた。
 
次に"ひとりごとステージ"に登場したのは沙田。彼女の演目は"DJと怖い話"である。なぜ怖い話かと言うと、ツアー中、機材車の移動で彼女が怖い話を読み上げることがしばしばあり、それがメンバーから好評なのだとか。リミックスなどの才能も持ち合わせる彼女らしく、まずはこの日のために作ったトラックで観客を踊らせる。......と、DJ中にお立ち台にのぼり突如鬼気迫り怖い話を語り始め、観客全員が"え、このタイミングで怖い話するの!?"と目を丸くする。だがこういう突拍子のなさも含めて彼女のテンポだ。あとからの話によるとここで読み上げた怖い話は、"知らないものを読んだ方が面白い"ということから、マネージャーが見つけた怖い話らしいのだが、その話のオチが若干イマイチ。すると読み終えた沙田が"えっ!? みんな意味わかった!? 私全然意味がわかんなかったんですけどー!!"と叫び、場内大爆笑。そのあとはお口直し(?)に「カロン」の自身リミックスを届け、クールなダンス・トラックで綺麗に締めた。
 
とうとう"ねごとステージ"は4組目のねごと。このセクションはトリに繋ぐバトンのようなステージにも見えた。メンバーも5組目のねごとに向けて踏ん張りどころだ。「ふわりのこと」、「ながいまばたき」、「B.B.B」とゆったりした心地よいテンポで歌の映える楽曲が続く。お疲れ気味の観客へのヒーリング効果もありそうだ。だが蒼山が"ちょっと違う星に行くような曲を"と言い演奏された「エイリアンエステート」から空気は一転。やわらかい空気を引き締め、「メルシールー」ではパワフルに音を届ける。ラストはシューゲイザー的アプローチがクールな「week...end」と、ねごとの持つ振れ幅と丁寧なプレイで人々の意識を引きつけた。
 
"ひとりごとステージ"のトリは蒼山幸子。ケーキ作り、お箏、DJ&怖い話といういい意味で突飛なステージが続いたが、そこをしっかり落ち着かせるのが彼女だ。弾き語りライヴでその美声を聴かせる。「彗星シロップ」と往年の名曲「Moon River」を披露したあと、彼女が構えたのはアコースティック・ギター。彼女にとってはギター弾き語りの初披露である。"曲を作るときはギターを使うこともある"という彼女だが、人前で持つのは初めてなためか、いささか恥ずかしそう。そんな初々しい姿でくるりの「Baby I Love You」をカバーし、ファンたちに新たな面を届けた。
 
開演から6時間。大トリに現れたのは5組目のねごとだ。今年下半期から使用しているいつものSEとともに、黒と白で統一した装いでステージに登場した。最新アルバム『VISION』の最後に収録されており、最近のライヴではラストで演奏することが多い「憧憬」でいきなり幕を開けると、トリのバンドらしい堂々としたパフォーマンスで一気にオーディエンスを引きつける。「真夜中のアンセム」、「透明な魚」、「DESTINY」とキラー・チューンでフロアを颯爽とドライヴし、観客もバンドを歓迎する。地に足のついたライヴからも、バンドとリスナーがちゃんと結びついていることを実感。そしてねごとは昔から完成度の高い楽曲を作ってはいるが、やはり去年から今年にかけてリリースされた楽曲は現在の彼女たちのモードによく合っていることに気づく。MCではデビュー5周年を迎えられた感謝を告げ"みんなに喜んでもらえる1日にしたかった"と言う彼女たち。もっと大きいフェスにするのがデビューからの目標だと語る姿はとても勇敢だった。感情を発散するように抜けのいい音を鳴らし、「シンクロマニカ」から「endless」への流れで見えたこれまでのねごとにはない太いグルーヴは、まだまだここは通過点だと宣言しているようでもある。
 
3組目、4組目、そして5組目のアンコールで、ねごとは未発表の新曲を3曲披露した。"これまではリリースしてからライヴで演奏していたが、これからはライヴで楽曲を育てていく方法もとってみようと思っている"と言っていたが、ねごとがライヴ・バンドとして動き出しているからこその案だろう。"新曲の今後を楽しみにしてて"と言う言葉にも期待が高まる。そしてこの7時間近くにわたるライヴを、バンドの始まりのシンボルでもある名曲「ループ」で締めくくった。最後に澤村がサラッと"10周年もよろしく!"と言っていたが、この言葉からもわかるようにこの日のライヴは5周年の感慨に耽るというよりは来年に向けての伏線の意味合いの方が強かった。ライヴのたびに課題を見つけ、それをひとつひとつ更新しているからこそ、5周年記念のフェスでも前を向いたライヴができる。これだけのイベントを成功させられたのだ。春のショート・ツアーはさらに成長した姿が見られるだろう。