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LIVE REPORT

Japanese

tricot / Brian the Sun

2015.06.16 @下北沢LIVEHOLIC

沖 さやこ

tricotとBrian the Sun。関西という共通点はあれど、一方は変拍子轟音バンド、一方は歌を大事にしたロック・バンドと、対バンの機会も少なめの両者。とはいえtricotファンもBrian the Sunファンもお互いのバンドに興味津々だった印象だ。tricotのファンがBrian the Sunのファンに"tricotのライヴは激しいよ~(笑)"なんて話しかけていたりして、こういう交流が生まれるのもライヴハウスの2マン・イベントならではだ。


先手Brian the Sunがフロアの上手後方から掛け声とともにプロレスばりの入場をすると、観客も驚きの歓声を発しつつSEに合わせてクラップをする。ステージについた4人が威勢良く音を鳴らすと、1曲目は「彼女はゼロフィリア」。今年に入ってからのBrian the Sunは"今"の自分たちのすべてをステージに出せるバンドになったと思っているのだが、この日の彼らは、まずギター・ヴォーカルの森 良太の勢いに驚いた。全部を陽に変えてしまうような、我々の人生すらも切り開くような、そういうパワーがあったのだ。


良太がハンドマイクで自身のモニターと前方の柵に足をかけ、フロアとコミュニケーションを取りながら"LIVEHOLICのご発展とご多幸を祈って"のコール&レスポンスを行うと「パワーポップ」へ。良太だけでなくギターの小川真司もベースの白山治輝もドラムスの田中駿汰も、4人全員が音楽と一体化して演奏しているようだった。そして「都会の泉」とここまでひたすらアッパーな曲を畳みかけ、その中でそれぞれが波を作る、いわゆるグルーヴで観客を巻き込む――終演後本人たちに話をしたら"とにかく必死だった、必死な俺らでした"と言っていたが(笑)、その4人の限界値すれすれの本気が生み出す集中力の強さは見事だった。「キャラメルパンケーキ」は感情が溢れ出すような衝動性もあり、そこから「Sister」につながる流れは"永遠のためなら死んでしまえる"という歌詞がそのまま音楽になったような気魄があった。


"今日は観てくれてありがとう。これが今日の僕らです。どうかみなさんの夢が叶いますように、という気持ちを込めて歌います"と「神曲」、そしていつもは切なさが溢れだすミディアム・ナンバー「白い部屋」も、この日のBrian the Sunはポジティヴに力強く鳴らしていた。"この曲はこうでなければならない"という固定観念を持たず、恐れることなく今の自分たちで体当たりする勇気がひたすら眩しい。ラストの「ロックンロールポップギャング」まで転がるように突っ走る、圧巻のステージだった。


後手tricotはSEと共に静かに入場すると、中嶋イッキュウ(Vo/Gt)の"やらせてもらっても大丈夫ですか? tricotです、よろしく"という言葉から「Noradrenaline」。殺傷能力のあるようなざらついた音像と、今にも壊れそうな切なさが入り乱れ、その姿が可憐でもあった。フロアもその音像にインスパイアされるように思考を吹っ飛ばして身体を動かす。ヒロミ・ヒロヒロ(Ba/Cho)は小柄でありながらはらわたにねじこむような低音で圧倒し、キダ モティフォ(Gt/Cho)は中嶋とともにギターと声を重ね、ジャンプとクラップでフロアを煽るなど、巧みにライヴに緩急をつける。涙が零れる瞬間のような刹那的な空気が漂う「おもてなし」、だがその涙の理由は明らかではない――彼女たちの激情にはそんな距離感や冷めた感触もあった。だからこそ我々は、その謎めいた音にのめりこんでしまうのではないだろうか。
「神戸ナンバー」「おちゃんせんすぅす」と囁くようなヴォーカルが秘め事のよう。色気と激しさと、一抹のずるさもあって、それに翻弄されていくのも心地よい。「pool side」「POOL」と、知性を感じさせる巧みな変拍子がたちまちフロアをトリップさせ、キダが"君らそれでも中毒者(LIVEHOLIC)か!"と煽り「庭」に行くとフロアの盛り上がりも最高潮に達し、この固い床が軟体生物かと思うほど揺れに揺れる。「99.974℃」ではヒロミがフロアに飛び込んで観客の上でベースを弾き、フロアにもダイバーが出現し、最終的には観客が乱れ飛び。キャパ180でこの光景はなかなかの迫力だ。アンコールは「Break」。3人が歌う"ああ"という感嘆の言葉に、想いがすべて詰まっているようだった。ずっと零れる寸前だった涙が最後にとうとう零れたような、そんな感情の温度や湿度を感じる、ラストに相応しいクライマックス。最後、観客とハイタッチしながらステージから去る、3人の晴れ晴れとした姿が今も記憶に焼き付いている。