Japanese
KEYTALK
2014.11.15 @東京EX THEATER ROPPONGI
Writer 石角 友香
年末だから振り返るワケじゃないが、ほぼ1年前の11/17にはメジャー・デビュー・シングル『コースター』リリース前夜祭的に恵比寿LIQUIDROOMでワンマン・ライヴをしていたKEYTALK。それからどれだけハードなライヴの日々を送ったか、単にハードなだけじゃなくその中でメンバーが何に気付いて、次のフェイズに足を掛けているのか。そんなことを思わせる2014年、年内最後のワンマン・ライヴだった。因みに今回の全国5ヵ所のツアーはすべての会場がソールド・アウト。
ドアの開閉もままならないぐらい満員のフロアに、メンバー選曲によるサザンオールスターズやthe band apartら尊敬する先輩の曲が流れる。ステージを見ると全面にスクリーン。こりゃなんか今までと違うぞ?といういい予感。暗転しスクリーンにクラゲの映像、そしてその中を今回のツアー・タイトルである"SUPER EXPRESS"が走り、5ヵ所のライヴハウス名が投影、この日の会場名が浮かび上がり、メンバーのシルエットが浮かび上がるとフロアの歓声はマックスに。アルバム・ツアーでもなく、強いて言えばシングル『MONSTER DANCE』リリ--ス以降のツアーという意思表明は、セットリストに色濃く表出。オープナーはデビュー・ミニ・アルバム『TIMES SQUARE』から「トラベリング」で意表を突き、立て続けにボッサ、ジャズ/フュージョンなAメロがいつ聴いても強力なフックである「fiction escape」、ハードな「S.H.S.S.」と、KEYTALKのオリジナリティの背骨を作ってきたナンバー連発でこのツアーの意義を実感させる。振り切ったテンションの中にあっても1曲1曲を聴かせようとする姿勢も伺え、序盤からこみ上げるものがあった。
しかしMCでは"SUPER EXPRESS"が新幹線移動を意味することを暴露。"今日はさすがに車で来ましたけど"と身も蓋もない事実で小野武正(Gt)が笑わせた。続くブロックは「パラレル」や「O型」といった、キャッチーな主旋律のことすら一瞬忘れさせてしまうような、スラッシュ・メタルに近い、エクストリームなコードやリズムの圧でハコを支配するブロック。特に「O型」は、こんなにアブストラクトな印象の曲だっけか?と思わせるほど、スリリングなプレイヤビリティに釘付けに。このころになると、最初は硬く思えた外音もフロアの熱と湿度で(!?)ちょうど良くなった感じ。素人考えで恐縮だが、それぐらいライヴが進行していくほどにハコの状況に応じてオペレーションがなされているんじゃないか?と思うのだ。
メンバー紹介を挟んで首藤義勝(Ba/Vo)が"昔の曲をやりたいと思います"と告げ鳴らされたのは「消えていくよ」。それこそ開場BGMにも流れたthe band apart直系な転調や7thコードを駆使しつつ、醸しだされるムードはどこか切ない、まさにKEYTALK印、初期の名曲。続いて披露したのが今年、新たに踏み出した首藤の新機軸「MURASAKI」だったのも新鮮な流れだった。歌謡としての強さを見せたこのブロックの最後は「コースター」。アレンジの細やかさや歌メロ、ツイン・ヴォーカルやコーラスをじっくり聴くのもKEYTALKの楽しみという意味で、来年あたり、ぜひホール・ライヴをやってほしいと思わせたブロックでもあった。ここまであっという間の10曲。でも全力疾走の速度の意味がただ速いだけじゃない。吟味した選曲の濃さで時間の経過が速いのだ。
"六本木でやるっていうんでブルブルしてるんですが、実は毎週、来てることに気付いて"(小野)と、ラジオ・レギュラーをやっている事実にとフロアからも笑いが起こる。そして毎回ステージ・ネームが変わる八木優樹(Dr)はこの日は"六本木より二本多い八本木さん"という"だから何"と突っ込むのも無駄なシュールさ(笑)。演奏とMCの落差はいつも通り。続くブロックも聴かせる選曲で、小野、寺中友将(Gt/Vo)のツイン・ギターが冴え渡る「フォーマルハウト」、小野の90年代J-POPサウンドやメロディへのリスペクトが最大限に発揮される「Winter March」、そしてその最新形であるニュー・シングルからの「エンドロール」では、高速で展開する街の風景がスクリーンに投影される。メンバーにはほぼ照明があてられず朗々とした寺中のヴォーカルが響く中で、日常的な映像は高速エディットされているというのも、彼らの現実とリンクしているようで、気の利いた演出だったといえるだろう(メンバーはとぼけて"何が映ってたんですか?"とフロアに訊いたりしていたが)。
全力で応えるフロアは曲間、静まり返ることもしばしばなのだが、そこに"響いてますか?"と小野が問いかけると大きなレスポンスが生まれるのは相変わらず。皆、次にどの曲がくるのか? 無駄なエネルギーを使わず弾けたいという、ステージ上に拮抗するような"ライヴ巧者"っぷりだ(正直、無駄なエネルギーは残ってないというのも事実だと思うが)。そこに"八本木"こと八木がお馴染みのキャラで"魔法の呪文"的なコール&レスポンスを要求。1度目はタイミングを外して爆笑と相成ったが、2度目で成功、銀テープのキャノン砲とともに「MONSTER DANCE」のイントロが放たれ、再び限界に挑む盛り上がりを見せる。四つ打ち~祭りばやしリズム~八木のサンバ・ホイッスルからのラテン調~ダビーに攻めて、再びメイン・テーマの四つ打ちに戻ってくる、彼らにしては"長い曲"。ライヴの体感も確かにKEYTALKらしさのダイジェストといった印象でかなり濃かった。そのまま和テイストを「sympathy」につなぎ、後半のオルタナ・テイストに小野のギタリストとしての幅の広さを感じる場面も。そして展開の多い曲を乗りこなす楽しさで言えば、今も最高傑作と言えそうな「MABOROSHI SUMMER」をこのブロックの最後に持ってくる辺りも心憎く、"マボロシ、マボロシ~"で揺れるファンの拳に歓喜が満ち溢れる。
"ラスト・スパートいくぞー!"の寺中の鬼気迫る一声から「夕映えの街、今」で熱量をさらに上げる中、小野は頭部右にCCDを装着、ステージを器用に駆け巡り、メンバーの姿をスクリーンに映し出し、寺中はハンドマイクで歌い、この日1番のカオスな様相へ。なだれこむようにラストの「太陽系リフレイン」へ。四つ打ちダンス・チューンであると同時に"ちゃんと救い出してよ"という印象的なフレーズが頭のなかでリフレインしてしまう。そうだ、自由自在にポップ・ミュージックの機能とスリルを更新してきたKEYTALKが内臓するもうひとつの大きな軸は、そうしたなんとも言えない焦燥だったり、抱えたままの悲しみだったり......。結成から今に至る、バンドの背骨になる曲を数多く盛り込んだ本編の選曲に、自己確認めいた意思と、これまで積み重ねてきたことへの自信を強く感じさせてくれたのだ。
新幹線移動は今年1年頑張ったご褒美で次回ツアーからはまた車移動だとMCで話した小野のみならず、感謝とともにすでに4人の視線は、年末の冬フェスや新曲の制作に据えられているのだろう。ともあれ、こんなスペシャルなセットリストのライヴ、次はいつあるか分からないと思うとオーディエンスである我々も感謝の気持ちでいっぱいなのだった。
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