Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

LIVE REPORT

Japanese

OKAMOTO'S

2014.04.29 @SHIBUYA-AX

Writer 石角 友香

"日本のロック・バンド、今のままで大丈夫ですか?"――そんな問題提起を込めた、OKAMOTO'Sの音楽愛溢れるニュー・アルバム『Let It V』を携え、過去最長のツアーで全国を廻ってきた、その最終日。開場中のBGMでかの大瀧詠一の「夢で逢えたら」が流れている段階で、かなり心にクるものがあったのだが、稲光のようなストロボ・ライトが点滅する中、メンバーが登場し、黄色い歓声とともに「Kill Dreams」でスタート。オカモトショウ(Vo)が韓国のフェスに出演した際に敬愛するIggy Popに観客がほぼ無反応だったショックを発端に書かれた、いわばマイナスをバネに這い上がるこの曲を冒頭に持ってきたことに胸が震えた。そして、それ以上に雄弁なのは演奏の確かさと楽器の出音の良さ。若いのに演奏が上手いOKAMOTO'S、という定番化したイメージではなく、うまくて音がいいことそのものも、エンターテインメントとして成立させてしまってる。そこがこれまでとは大きく違う。

"ついにやって来たぜ!トーキョー!楽しむ準備はできてるかい?ついこれるかい?俺とあんたは共犯者!"と煽るショウに女子も男子もさらに沸く。ブリティッシュ・ビートの先人たちも真っ青な粋でシャープなリフをオカモトコウキ(Gt)が決めたあとは、1stアルバム収録の「Beek」から途中で"あれ?この16ビートのカッティングは"......DAFT PUNKの「Get Lucky」!ハマ・オカモトのディスコ・ファンクなベースも冴えまくり、コーラス・ワークは完全再現とは言えないのがむしろご愛嬌。じっとしてるのが拷問クラスに楽しい。2階席もぎっしり埋まり、中には余裕のあるスペースでゴキゲンなダンスをしている人も。気持ち、わかりすぎます。ソウルやシャッフルのビート感がルーツ・ライクな「It's Alright」「告白」などが続けて演奏されると、いや、ルーツ・ライクというのは伝承であって、OKAMOTO'Sは更新され続ける伝統だなとか思ってしまう。THE ROLLING STONESは70過ぎても続けてるかっこよさがあり、OKAMOTO'Sは若くて耳も腕もセンスもいい、そんなかっこよさがある。ロックンロール・バンドとして同じ地平で勝負できるはずだ。

そのセンスと実力はミディアムのダンス・チューン、たとえば「ドアを叩けば」で証明されていた。音圧や勢い、速さ勝負じゃない、隙間の多い曲でOKAMOTO'Sはこのロング・ツアーの成果をより感じさせてくれる。中盤にはよく関係者に"MC集を出せば?"と言われるぐらい面白い、ほっとくととめどない4人のトークが展開。ツアー中、コウキが地方のプールで泳いでいたこと、中学時代に出会い、バンドを組んでからの歳月を振り返り、今まさかこんな大勢が自分たちを観てるなんて!という喜び、"僕らの音楽"出演時の裏話などなど。どの話題も場面も、ホントにこの4人で良かったな、神様、この4人を出会わせてくれてありがとう、なんて少しクサいことすら素直に思ってしまう"バンドって、それが楽しいんだよね"感。加えて、この日はショウより先に"ありがとう!"と嬉しそうに何度も発していた、ハマの心の底からライヴを楽しむ姿も心を震わせた。後半は、どんな状況になったって長生きしてロックし続けるぜ!と叫ぶ「Yah!!(ビューティフルカウントダウン)」でのTHE ROLLING STONESにもTHE STONE ROSESにも負けないオカモトレイジ(Dr)の軽快かつグルーヴィなリズム、3月に誕生日を迎えたハマを祝う意味も込めて会場全体でシンガロングが起こった「HAPPY BIRTHDAY」、シーンに溢れる4つ打ちとは一線を画すファンクの16ビートで踊らせる「JOY JOY JOY」、レイジのポリリズム的なタムが冴え、ハマの太いベースがバンドのダイナモであることをさらに印象付ける「SEXY BODY」のダンス・チューンの連投で、すし詰め状態でもなお自由に踊ろうとするフロアは幸せな混沌状態に。本編ラストもグルーヴィな「青い天国」でハコ全体を横に乗せ、バンドの音楽的筋力のすさまじさ、それを自在に鳴らす楽しさを大いに振りまいて、ステージを去った4人。
本編16曲という、数で見ると多くはない曲数がむしろショート・チューンに、展開や転調を盛り込んで沸かせるバンドとのスタンスの違いが見て取れた。OKAMOTO'Sは人間的なグルーヴの反復と、楽器が持ついちばんいい音でオーディエンスを熱くする。ロック・ミュージックのDNAをどんな世代にも気づかせること。そんなライヴができるバンドなのだ。アンコールでは新曲「SAD SUNDAY」を披露したあと、ショウが"今年は5周年の最初から最高のアルバムを出せて、ツアーも廻ってきて、いいスタートを切れた。インタビューでも言いたいこと言ってきたけど、もっと音楽好きを増やしていきたいっていうのはずっとテーマなんで!"と、改めて今のバンドの前向きな攻めモードを強調。

この日最後に鳴らされたのは、まさにOKAMOTO'Sなブギーな一発「まじないの唄」。強烈なコール&レスポンスも繰り広げて大団円は幕となった。
演奏をフィニッシュした4人から発表された9月から始まる全国ツアー、ファイナルは日比谷野音!のアナウンスに再び大歓声。彼らの旅はまだ始まったばかりなんじゃないだろうか。

  • 1