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LIVE REPORT

Japanese

KEYTALK

2014.03.27 @下北沢GARDEN

石角 友香

サウナ状態で床も滑るほどの熱気に包まれた終演後。ゲスト・アクトのヒトリエの時間も含めて、お客さん全員を抱きしめたい感情に襲われた。今日の主役はお客さんである。しかし、彼らをそこまで焚き付け、踊らせ、驚かせ、笑顔にしたのはやはりKEYTALKの更新し続けるライヴのポテンシャルであるのは間違いない。

定刻ちょうどに暗転し、ヒトリエの4人が登場。音源ではシーケンスやシンセ・サウンドのイメージもあり、ボカロP以降のバンド・シーンからの回答めいた、バンド枠外のエディット感やハイブリッドな空気が濃い彼らだが、ライヴではギターのシノダがフランクなMCをしたり、演奏も肉体的。時にポスト・パンク的なクールネスや、AORの洒脱も感じさせて、音楽的なレンジは広い。KEYTALKのファンにも1曲目に演奏した「センスレス・ワンダー」など曲も浸透していて、なかなかのリアクションを獲得。30分の持ち時間に濃厚な6曲を演奏し、独特のインパクトを残してくれた。


ステージは幕に覆われ、転換タイム。サウンド・チェック中の寺中友将の"オッス!"に"オッス!"で返すフロア。おいおい、まだ始まってもいないよ?というのは野暮か。爆発寸前の歓喜が溢れている。オープニングSEとともに暗転、そして登場した4人。寺中の髪がどこか体育系なニュアンスに短い。ついでに言うと寺中、首藤義勝が黒髪、小野武正、八木優樹が金髪と見事(?)なコントラストだ。沸きまくるフロアに放たれた1曲目は黒いグルーヴのファンキーなダンス・チューン「blue moon light」。ハナからファストな4つ打ちではなくこの曲を持ってきたことに今のKEYTALKの意思表明を感じる。とはいえ、「UNITY」では小野の軽快なイントロからファストに雪崩れ込む展開に沸きまくるフロア。十分詰まっている会場の後方が少し空くほど、誰もが前方に押し寄せる。正直、この曲を歌い切る首藤は少し苦しそうだったのだが、その後、何かが吹っ切れたように硬さが取れ、最初のブロックの終わりの「コースター」頃にはバンド像が以前より引き締まった印象に。
以前、メジャー・デビュー前夜に行われたLIQUIDROOMでのワンマンより、新旧織り交ぜたセットリストには、KEYTALKのJ-POPイズムが高いクオリティに結晶した「sympathy」なども序盤から盛り込まれ、ブチ上がりつつもメロとアレンジの巧みさゆえにフィジカルも反応していることを改めて痛感する。

"下北、最高!楽しい!前の方の人大丈夫ですか?"とファンを気遣いながら、"パラレル・ワールドに行く準備はできてますか?"と、さらにあおる首藤の一声から、すっかりライヴのキラー・チューンに定着した「パラレル」。常に歌メロの裏を行く小野のフレージングがこの曲ではむしろクランチなコード寄りの部分に新鮮味を出していて、彼らの魅力のひとつであるハード・ロックな硬質な部分にテンションが上がるのだが、AメロとBメロの落差の凄まじさも強烈にツボを突く。そしてハードボイルド~和テイストを行き来する「サイクル」の展開も音源以上に緩急が付き、こんなに色の濃い曲だったっけか?とあっけにとられたぐらいだ。"僕たちのホームの下北沢でツアー・ファイナルができて嬉しいです。今日はふだんやってない曲もやります!"と寺中が告げると同時に「見上げた空に」のイントロ、そして歓声。伸びやかなヴォーカルと穏やかな曲調に一転して聴き入るフロア。珍しいと言えば、ネオアコの音像と構成はポスト・ロック的な抜き差しという、他のバンドにはありえない巧さが光る「消えていくよ」、そしてクリーン・トーンの寺中のギターと、懐かしい響きの小野のギターのアンサンブルが輝度の高い世界観を醸成した「マキシマム ザ シリカ」の美しさ、パワー・ポップなはずなのにガレージ・パンク・バンドのような爆発力を持つ「Spring Sparkle」も、なぜこんなにポップなナンバーなのに破壊的なテンションを感じるのか?展開が多すぎるから?メロがキャッチーだから?あらゆるジャンルがブチ込まれ過ぎてるから?と一瞬頭の中が"なぜ?"に支配されるのだが、恐らくこの"なぜ?"の密度の高さこそがKEYTALKというバンドの正体なわけで、答を見つけるスピードを追い抜くスピードで彼らが走っている限り、いくら物理的には酸欠だろうが足が痛かろうがまだ次の曲、まだ次の曲が聴きたいと思ってしまうのだろう。

おなじみ寺中の物真似タイムは、ミスチル桜井と福山雅治の時間差一人二役。しかしこの日最強に似ていない八木版福山がすべて持っていってしまったのは、この人のキャラを明快に示している。恐るべしオムスター。爆笑に続いて、後半もさらに激化するフロアをカオスに叩きこむ「B型」。しかしこの曲も怒涛の音像のようでいて、楽器一音一音がつぶし合わないアンサンブルが再び快楽のツボを押す。洒脱なボッサテイストからお囃子ビートまで駆け巡る「fiction escape」の中間部でファンがジャンプする様子を感動しきった表情で見渡す小野。その表情を見てこちらも思わず涙腺が緩みそうになる。終盤には小野から4月1日に重大発表がある旨と、次回ワンマンの赤坂BLITZ公演の告知。そしてこの人こそバンドのエンジン、見ようによってはYOSHIKIぐらいドラマティックな八木の"シモキタザワー!かかってこい!"の絶叫からのクライマックスは、踊って、ハンド・クラップして、ひたすらここにいるすべての人を祝祭するような多幸感いっぱいのブロックへ突入。本編ラストの「太陽系リフレイン」では、八木〜首藤〜寺中とソロをまわし、体力の限界は間違いないはずなのに、体力だけでは絶対弾けない緻密なフレージングを全員がキメるというKEYTALKマジック。しかし別にスキルに驚いてるわけじゃなく、ドロッドロのこの状況で"いい曲だ"とか"この曲好き!"という感覚がフロアを踊らせ、ジャンプさせているのだから驚異的だ。


本編23曲をメンバーとともに完走したファンだが、わき起こるアンコールに早々に再登場した4人。アンコール1曲目は最近、新たな作曲の秘孔(?)が開いたらしい首藤の曲紹介で「MURASAKI」と名付けられた新曲を披露......したのだが、具合の悪い人はいないか?という小野の呼びかけに、水の要求があり、八木がファンにペットボトルを渡したのだが、程なくして必要な分だけ飲んだペットボトルが八木に返されるという光景が展開。どれだけお互いやさしいというか、リテラシーが高いというか......演奏場面ではないがひどく感動してしまった。肝心の「MURASAKI」。ムード・ミュージック的なメロディが新鮮で、クラシックを思わせる胸のすく転調は、絶妙な展開が得意な彼らの中でもかなり景色が描きこまれていて、ソングライトのネクスト・レヴェルであるのは間違いない。そしてこの日の最終曲はまたしてもなぜこんなにメロディアスなのに、同時にエクストリームなのか?という謎とともにブチ上がる「夕映えの街、今」。ストロボに照らされる4人はどんな轟音バンドよりカオティックで、テンションの上がりまくった寺中はハンドマイクで背面ダイヴをキめ、アンコール含め、全26曲をやり切った4人は、余力なしの清々しい表情でステージを後にした。いや、あっぱれ。曲の、演奏の、そして4人の人間力でKEYTALKは狭義のバンド・シーンを近い将来、超越するだろう。そんな予感に満ち満ちたツアー・ファイナルだった。因みにday-1とは5曲が異なる選曲。被った曲も曲順が違うという、渾身のセットリストだったことも付け加えておきたい。