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Japanese

cinema staff

Skream! マガジン 2012年12月号掲載

2012.11.09 @恵比寿LIQUIDROOM

沖 さやこ

今年6月に1st E.P.『into the green』でメジャー・デビューを果たし、9月にミニ・アルバム『SALVAGE YOU』をリリースしたcinema staff。その新作を引っ提げて全国10箇所を廻ったリリース・ツアー“夜は短し歩けよ辻”のファイナル公演だ。彼らの地元、岐阜の先輩バンドであるClimb The Mindの「萌える傘の下」をSEに登場した4人。「into the green」で幕を開けると、三島想平(Ba)が“我々は岐阜県から来たcinema staffというバンドです、今日はあなたたちを救出(=salvage)しにやって参りました”と告げ最新作(に収録されている「奇跡」へ。三島のベースはバンド全体を突き動かすように力強く、辻 友貴(Gt)は楽器だけではなく全身を使って感情を吐き出す。久野洋平(Dr)の刻むリズムはヘヴィでありながらも軽やか。そこに飯田瑞規(Vo/Gt)のソフトなヴォーカルが色を添える。転がるようなアンサンブルはつんのめるようでも色鮮やかだ。続いての「ニトロ」では辻が客席にダイヴ。4人の感情の高まりはよりソリッドに。「her method」は辻の荒い音色が焦燥感を掻き立てる。“全力で今持っている全てを出していきます”と飯田が語り「さよなら、メルツ」「daybreak syndrome」「KARAKURI in the skywalkers」と、やわらかく鋭く、ドラマティックに畳み掛ける。続いての「AMK HOLLIC」「想像力」では行き場のない衝動をそのままぶつけるような音色がはじけ、その瞬発力のしなやかさにため息が零れた。

三島から“ツアーを締めくくる一言を”と話を振られた辻が“おいお前ら、ファイナルやぞ。今日で死ぬぞ俺ら全員!”と言うと、彼のキャラクターも相まって場内は妙な笑いで包まれる。とはいえ彼のその言葉はバンドの気概を表すにはぴったりの表現だ。続いて披露された新曲「西南西の虹」はハイ・テンポでスリリングに駆け抜ける。心にじっくり語りかけるミディアム・ナンバー「制裁は僕に下る」。終盤、音の層は激しく湧き上がり、繊細に重なってゆく。cinema staffの持つこの両極端な空気感は、突き刺すような寒さに舞い散る粉雪のように美しい。

去年の夏から冬に掛けて『into the green』『SALVAGE YOU』の楽曲を作っていたcinema staff。今日はその1年間の節目となる。遠くを見つめ“長かったなぁ……”と感慨深く呟く三島の姿が印象的だった。メジャー移籍という環境の変化、以前インタビューで語ってくれた“聴き手のことを考えるようになった”という心境の変化――この1年は新たなステップを踏んだことにより、様々な課題に向き合うことも多かったのかもしれない。「白い砂漠のマーチ」「WARP」「優しくしないで」「salvage me」と、開放感のある楽曲を奏でる4人の音の裏には、焦燥感が漂っていた気がした。

アンコールで“メジャー・デビュー以降、プロモーションなどで忙しくさせてもらった”と言う三島は、その分ライヴの本数が少なかったと語る。“改めて、いろんなところでライヴをしていきたいと思った”“精力的にライヴをやって、どんどん上達してどんどんかっこよくなっていきます”と力強く語り、バンドの次の指針となるという新曲「望郷」を披露。自分たちが信じた道を突き進むような、芯の強さを伺わせる楽曲だ。ダブル・アンコールの冒頭、飯田は“(ツアーを回って)僕らまだまだやれるなと思った”と言った。そして奏でられた「GATE」は、自分たちを信じる気持ちと悔しさが、聴き手の耳と心に噛み付くように鳴り響く。4人の音は全てが同じ方向を向いていた。ひとりギターを鳴らし続けステージに残った辻は、ラストに客席へダイヴ。cinema staffの新章を予感させる、衝動的な夜だった。