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LIVE REPORT

Japanese

The SALOVERS

2012.07.07 @下北沢SHELTER

Writer 沖 さやこ

この日のMCで、フロントマンである古舘佑太郎は“僕ら(の音楽)は、青い衝動という言葉で言いくるめられることが多いんですけど”と語っていた。だがこの日の彼らのライヴは真っ赤に燃える情熱を滾らせたステージと言って良いだろう。THE★米騒動を迎え開催された下北沢SHELTER公演は、バンド初のソールド・アウト。9月にはメジャー・デビューも決定している彼らの注目度の高さを表している。

藤川雄太の高らかなドラム・カウントで1曲目「仏教ソング」。フロア前方ではモッシュが。拳を突き上げ、音と共に飛び跳ねる。そんなオーディエンスへ、古舘は力いっぱい歌を投げかける。小林亮平の安定感のあるベースと、藤井清也の繊細なギターの音色も加速。リリースされたばかりのミニ・アルバム『いざ、サラバーズ!』に収録されている新曲「曇り空」では、優しさと熱量の溢れる、The SALOVERSならではの柔らかい空気に包まれる。「チェリンの唄」に続いては、インスト・ナンバー「ビオトープ -生物生育空間-」。リフレインするギター・リフがきらきらと輝き、新たな旅立ちを迎えるような高揚感に胸が高鳴る。ドラムに合わせてフロアから手拍子が起こり「フランシスコサンセット」。素朴に綴られる夢のような空間にうっとりしていると、疾走感で突き抜ける「SAD GIRL」へ。“届いてるかなこの気持ち”と歌う彼らに応えるように、フロアの笑顔も更に華やぐ。

MCでは楽曲に関するエピソードや、自分なりの楽曲に対するこだわりなどを語る古舘。インスト「ビオトープ-生物生育空間-」については、ヴォーカリストでありながら“歌が鬱陶しくなったりヴォーカルって何だよと思うことがある”などの発言も。音楽に対してとても真摯に取り組んでいるのだなぁ、と痛感した。「Hey My Sister」「サイケデリックマリー」と、がむしゃらに走り抜けるようなナンバーを披露し、果敢にフロアを挑発。情感豊かな藤川のドラムが印象的なミディアム・ナンバー「夏の夜」は、ロマンティックな空間が広がる。丁寧に言葉を出して、届けていく古舘。アッパーなナンバーでも、スローなナンバーでも、彼の歌う日本語はしっかりと耳に届く。ちょっぴり内向的だけれど、音楽に真剣に向き合うからこそ生み出すことができる、等身大で綴られる素直な言葉。“かっこつけないかっこよさ”を体現しているバンドだ。“若者は生き急いでいて不格好。生き延びているというか生かされているように思う”“そんな若者だからこそお偉いさんよりも説得力があるんじゃないかと思った”という言葉のあとに古舘のアコギ弾き語りで披露された「クニ」の歌詞がひとつひとつ心に残った。

コール&レスポンスがバッチリ決まった「オールド台湾」で本編を締めくくると、アンコール1曲目では古舘がウクレレ、藤井がタンバリン、小林がトライアングル、藤川がカホンという編成で「オレ」を披露。ゆるーい雰囲気に場が和んだのも束の間、ラストの「サリンジャー」はイントロが鳴り響いた瞬間からフロアの大きな歓声が。その勢いのまま、火を噴くような灼熱のステージに幕を閉じた。ワンマン・ツアー、メジャー・デビューと、更に飛躍を続けるThe SALOVERS。この若き才能がこの先どう進化を遂げるのか、引き続き注目だ。

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