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LIVE REPORT

Japanese

モーモールルギャバン

Skream! マガジン 2012年07月号掲載

2012.06.22 @Zepp Tokyo

Writer 沖 さやこ

モーモールルギャバンのツアー・ファイナル、全身に寒気が走るほど心の底からグッときた。人の胸ぐらを掴んで飛びかかるような、衝動的なパッション。それは内なるものを剥き出しにしているというよりは、彼らの音楽とお客さんに対するひたむきさが引きずり出す、限界以上のパワーのような気がしてならない。この日、3人の“暗闇で迸る命”は、若さだけではなく只ならぬ愛を叫び続けていた。

場内が暗転すると、暗闇から聴こえてきたのはゲイリー・ビッチェ(Dr&Vo)の歌う「パンティー泥棒の唄」。ゲイリーは上半身裸でサイケ柄のピチピチのズボンを履き、黒とスパンコールのサスペンダー。彼がお立ち台の上でフロアにマイクを向けると観客も全力で歌い、テンションも急騰。彼が言葉を発するたびに歓喜の声が上がる。“恥ずかしいことばかりの人生だけど、お前らに会えて幸せです”と叫ぶと「美沙子に捧げるラヴソング」へ。赤と黄色を基調としたステージ・デザイン。ステージのメンバーはコーラス隊も含めカラフルな衣装に身を包み、照明もくるくると場内を縦横無尽に輝く。冒頭から超巨大風船が登場したり金テープが噴射されたりと、フィナーレに相応しい華々しい演出だ。「BeVeci Calopueno」「Hello!! Mr.Coke-High」と過去の楽曲を立て続けに披露。3人の打ち出す強固で軽やかなリズムに、体の細胞も反応するような感覚に陥る。そのリズム・センスは勿論メロディや語感も同様で、彼らの歌はどの曲も、声に出すと尚更気持ちがいい。

「午前二時」「コンタクト」など、ユコ・カティ(Key&Vo,銅鑼)がメインで歌うしっとりとしたナンバーが続くと、ユコがキーボードを抱えて歪んだ音をブチかまし「Smells like SURUME!!」。ゲイリーのドラムは、尋常じゃないくらい手数が多い。だがそれでもキックを叩きながらスティックを高く上げ大きく振ったりと合間合間に踊り、フロアへの笑顔を絶やさない。ユコがグランド・ピアノを弾く「Good Bye Thank You」では、彼女の音色が優しく切なく場内を包む。彼らのパフォーマンスやスタイルは個性的である反面、とても素朴なバンドであると思う。よーく目を凝らさないと見えないような、人間の心に潜む、表に出したくても出せない感情を丁寧に掬い上げて愛でる。彼らの曲に存在する叙情性と情熱はそこから来るのではないだろうか。

「野口、久津川で爆死」では昔バンドを脱退した元ドラマー野口の近況がT-マルガリータ(Ba&Cho)によって暴露され、場内は大爆笑。鋭さを増す3人の音にオーディエンスもトランス状態。「POP! 烏龍ハイ」から更にヒート・アップし、フロアが前方から後方まで、歌う、跳ねる、叫ぶ、踊る! 本編ラストの「サイケな恋人」では無数のカラフルな風船が舞い降り、恒例の圧巻“パンティー”コールへ。この会場にいる全員を笑顔にした、と言ってもいいほどの幸福感が場内を包み込む。

ゲイリーがアンコールで“早く引っ込め!って言われてた時代が嘘みたいです!”と笑わせたが、Zepp Tokyoソールド・アウトはバンドにとって感慨深いものがあっただろう。ゲイリーは終始、何度も“I LOVE YOU, TOKYO!”と叫んでいた。ダブル・アンコールの「スシェンコ・トロブリスキー」まで全力で駆け抜けたモーモールルギャバン。彼らの巻き起こすJ-POPレボリューションは、まだまだ快進撃を続けること間違いない。

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