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LIVE REPORT

Japanese

FUNKIST

2011.01.27 @Shibuya O-WEST

Writer 沖 さやこ  Photo by 平野大輔(http://die-alive.com/

11月にスタートした全国15箇所を巡るツアー最終日。暗転と同時に歓声と拍手が沸き上がる。“FUNKIST”の文字が悠然と構える横断幕を照らす、宇宙を感じさせる幻想的な照明。ゴダイゴの「MONKEY MAGIC」をSEに、楽器隊が登場。「GO NOW」のイントロが鳴り、ヴォーカル・染谷西郷がステージに飛び込んできた。フロアは待ち侘びた思いを拳に込める。1曲目からギアはトップ、7人は熱く激しいステージを展開させる。会場とのコール&レスポンスもバッチリだ。

染谷のアカペラから始まる「Traveling」。春日井陽子は跳ねながら、蝶のように軽やかにフルートを吹く。地盤を固めるようなJOTAROのベースは轟き、ヨシロウと宮田泰治は躍動感のあるステップを踏みながらギターを奏でる。広大な大地を感じさせる雄大さと魂の叫び。キャラクターがバラバラな7人全員が、思い思い好き勝手やっているように見えるのに、それがしっかりFUNKISTの形になっている。それは7人の信頼が強固な証拠だろう。「MAMA AFRICA」ではLeyonaとLatyr Syが登場。Leyonaと染谷のツイン・ヴォーカルはパワフルでどこまでもエネルギッシュ。Latyr Syとオガチとドラムス・住職の打楽器バトルもド迫力だ。

ヨシロウのアコースティック・ギターに乗せて、染谷がマイクを通さずアカペラで「いつまでも」を歌う。優しさの詰まった、まっすぐな彼の声が会場に響き渡る。ミラーボールの灯りが粉雪のように美しい「Snow fairy」。曲の持つ疾走感は、青春にも似た感情を呼び起こし、胸を熱くさせる。手を差し伸べられるようなおだやかさに満ちた「こどもたちのそら」。力強い染谷の歌を包み込む、柔らかいオガチのコーラスが印象的だった。

「本当に信じてるんだ、音楽は必ず世界を変えられるって」――冒頭で染谷がそう語った「バナナトレイン」。息つく間もなく、彼は己の想いを語り続けた。南アフリカ人の母と日本人の父を持つ染谷。南アフリカは奴隷制度等、歴史的に根強い人種差別がある国だ。“肌の色なんて関係なくみんなと一緒に笑い合いたい”という彼の本気の想いは熱く、とても切なかった。だが、その熱さも切なさも、どこまでも優しさに満ちている。私の目には自然と涙が溢れていた。そんな涙を振り払うように、暗闇の中で高らかにドラムが鳴り始めた。「ピースボール」。染谷は天高くピース・サインを掲げた。フロアも両手でピース・サインを掲げる。「SUNRISE」ではオガチが客席に乱入、ヨシロウが頭をぶつけながらもバク転を披露、観客全員が肩を組み大合唱、まさしく情熱の空間だった。

「FUNKIST、7人でずっと走り続けてきましたが、今日はもう一人、家族とも呼べる人を呼んでいます」と染谷が語り、スペシャル・ゲストとして乙武洋匡が登場。染谷は彼との思い出話を語り、乙武もFUNKISTへの熱い思いを語った。「1/6900000000」での染谷と乙武の声が重なった瞬間は圧倒的だった。8人全員の晴れやかな表情を見て、彼らが5年間で築いた堅い絆の美しさを感じた。

アンコールでは、オガチのリクエストで「はいチーズ」の掛け声で会場全員でチーズを食べて、その瞬間を写真に撮ることに。くだらないことも全力で行い、心の底から笑い声を上げる彼らに、手抜きなんて言葉は存在しないのだ。歌詞はどんどん染谷が“今伝えたい”言葉に変わってゆく。ラスト「愛のうた」を歌う前に染谷は「何か困ったことがあったらいつでも言って、助けに行く」と言った。FUNKISTなら本当に駆けつけてくれる気がした。嘘のない言葉は、人の心を奮わす。本気でぶつけられた嘘のない言葉や音楽は、心に入るだけではなく“永久に残る”のだ。私はこの日を忘れないだろう。

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