THE HORRORS｜Skream! livereport

　THE HORRORSの2ndアルバム『Primary Colours』に持っていかれてしまった僕としてはこの日一番のお目当てだった。賛否両論はあるものの、彼らの変化を恐れない姿勢と進化が表れた凄まじい作品だったと思う。

　喫煙所で1本タバコを吸い、SONIC STAGE真ん中の前方へ向かう。なぜ真ん中かというと、そこが一番音が良く聴こえる場所だから。それに、新作からの楽曲は前方の大きな音で聴きたいと思っていたから。不穏なノイズの中、定時を少し回った頃メンバーが現れる。惚れ惚れするほどのクールな佇まい。妖しい雰囲気に一気に包まれる。予想通り新作のオープニングナンバーからスタート。音もバッチリ。スタートからキーボードを操るSpider Webbの動きに釘付けになる。とにかく彼から発せられる音が全体のムードを決定づけていて、このバンドの中心はSpider Webbなんだなと改めて感じた。

　2007年のSUMMER SONICで彼らのライヴを観た時は、不完全燃焼というか、タイトでかなり攻撃的なパフォーマンスだったものの、大きな会場だった事もあり、音も散漫で、決して良いプレイでは無かったと思う。それもあり今回もあの『Primary Colours』の音像を表現出来るのかという不安もあった。
しかし、今回は違ったあのサイケデリックな世界観を見事表現していた。嬉しい驚き。それもあの抜群のルックスの5人から奏でられたら痺れるという他無い。ただ、ほぼ2ndアルバムからのセット・リストにオーディエンスも戸惑いはあったようだった。やはり1stからの攻撃的なガレージ・ナンバーを聴きたかった人は多いだろう。しかし今回の短いフェス仕様のセットの最後に演奏された長尺のトラック「Sea Within A Sea」を聴いてしまった後ではそれを言うのは野暮なもの。このトラック後半のシーケンスの美しい調べはこの3日間の個人的なハイライト。こんなにカッコイイバンドは他にいないじゃないかとさえ思った魅力的なステージだった。

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Primary Colours

2009/5/13 Release!!

強烈なキャラクター性を持つガレージ・ロックで世界に衝撃を与えたデビュー・アルバムから早2年。前作の続編となるような作品への期待をいい意味であっさりと裏切る傑作。8分間の先行トラック「Sea Within Sea」でTHE HORRORSが次なるステップへ進んだことは明らかになっていたが、ここまでのアルバムを作ってくるとは思わなかった。プロデューサーに PORTISHEADのGeoff Barlowを起用し奥行きのある、まるで水中にいるかのようなシューゲーズ・サウンドが生み出す独特のグルーブ感。特にアルバムの後半は今までに無かったドリーミーな展開が繰り広げられる。呟くようなボーカルの中にも今回の変化が感じ取れるだろう。アルバム・ジャケットの様に手が届きそうで届かない蜃気楼のような作品。(遠藤 孝行)

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