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INTERVIEW

Japanese

それでも世界が続くなら

2018年07月号掲載

それでも世界が続くなら

それでも世界が続くなら

Official Site

メンバー:篠塚 将行(Vo/Gt)

インタビュアー:吉羽 さおり

-未来の予定があるのは、ファンにとっては嬉しいことかもしれないですね。

そう思ってもらえたら嬉しいですね。僕らとしては、2月11日に会って話をして、みんなに発表するって約束することで、逆にやめたいわけじゃないって思いがあるというか。メンバー脱退を引き延ばしたんですよね。最近、ちょっと誤解され始めていて、"解散なの?"とか"さよなら"っていう人も出てくるわけじゃないですか。どちらかというと、誤解されるなら、メンバー脱退を引き延ばしている女々しいバンドと思われるのが近い誤解のされ方というか。わからないですけどね。ギターの菅澤は当初からこの4人じゃないとやらないと言って入ってきているし。則雄がやめたいって言ったときも、"それなら正直、俺も考えたい"とは言っていたので。

最初のインタビュー(※2016年9月号掲載)のときも、それは言っていました。4人が友達だというところがスタートだから、この4人じゃないと動かないバンドなんだって。

本当にそうなんですよね。活動中止をするという報告をするために、レーベルに来て、ディレクターさんとキングレコードの方と話していたときには、ちょっと菅澤は思いを改めていたようですけどね。関わってくれている人たちや地元のライヴハウス、応援してくれている人たちに、"友達がやめるから僕もやめよう"って言うのは失礼になるかなって思っていたようでした。で、レーベルで話をしてすぐに、活動中止の発表をしたんです。どんなバンドも大なり小なり大人の事情とか、発表のタイミングがあると思うんですけど、僕は、僕の事情で言いたいというか。じゃないと、歌えない歌もあるというか。

-このバンドは特にそうかもしれないですね。大人の事情でとかになると、まったくリアリティがなくなってしまう。

歌ってるこっちも無傷じゃないですからね。逆に、ベスト・アルバムを出してくれるということは、本当に嬉しいんです。でも、歌ってる僕的には、頭をよぎってますよね、こんな歌の"ベスト"なんてないだろうって(笑)。もちろん会議ではそんな話しないですけど。だって、自分の黒歴史みたいなバンドじゃないですか。

-言うなれば、そうなのかもしれませんね。自分のうちに秘めていたものや経験、恨みつらみも掘り起こして曲にしているので。

言わないでいた方が世間的には良さそうなものをね。でも言いたいから言っているだけで。いい曲できたから集めちゃおうよっていうものだと思うんですよ、ベスト・アルバムって。いやでも、どの曲も1個1個......。

-身を削った曲です。

自分で言うのも変ですけど、確実に削られてますね。1個1個が讃えられるような、決してベストな人生ではなかったから、こんな曲ができているので。ベストって言葉が付くのに、ちょっと抵抗もしましたね。せめてベターとか、もうワーストとかにしませんかって。ただそこは抵抗するところじゃないなと。

-ベスト・アルバムということで、今まで届かなかった人とか──

今まで届かなかった人には、やっぱり届かないんじゃないですかね。

-でも、これが入り口にはなると思うんですよね。何かのきっかけで名前を知ったけど、アルバムがたくさん出ていて、ピンとくるアルバム・タイトルで選んで聴いてもいいんだけど、ベストがあるなら聴いてみようかなっていうのはありだと思うんですよ。

そうですね。むしろ、"僕の人生でベストなんてありました? いいんですかそんな"っていう感じで、嬉しかったです。

-だからこそ、選曲に重みはありそうですね。

曲を選ぶのは悩みましたね。思い出順というのも変ですけど、そのときの自分の状況とか風景とか、ほとんど日記状態なので、僕の曲は。それが、届くように書くとか、選び方については自分では自信がないから、すぐ実験的になんでも新しいことを試そうとしちゃうところはあると思うんですけど。基本的には、うまく書けないことはあってもいいけど、嘘はつかないようにとは思って作ってきたので。その中でも、覚えていた曲ですね。まぁ、どれも覚えているんですけど。そういう選び方をするとベストっぽくなるから不思議ですね。

-その作品をまとめて、タイトルに"僕は音楽で殴り返したい"と付けたのは、言い得ているなと思いました。本当にそういう曲ばかりだなっていう。

最初はタイトルがなくて、"ALL TIME BEST ALBUM 2011-2018"だったんですけど、そこにタイトルを付けようと突然思って。バンド名の"それでも世界が続くなら"に続く文書を書くっていう大喜利のようなタイトルは一時期やめていたんですけど、大喜利、楽しかったなっていうか(笑)。今、バンド名の続きとなるものを書いたらどうなるのかなって思ったんです。このバンド名って、もし国語の授業で続き考えろっていう問題のお題で出たら、普通の人なら"それでも世界が続くなら、なんて素敵なことだろう"とか続けると思うんですよ。

-きっと前向きな文章が続くと考える人は多いでしょうね。

この言葉の印象を悪くしてるのは僕自身なんだとは思うんですけどね(笑)。ポジティヴな言葉を続ける人は多いと思うんですよ。だって世界が終わるんじゃなく"続く"んですから。僕はでも、続くことが全然ポジティヴじゃなかったというか。たぶん、今もなおリアルタイムで苦しいところにいる人とか、過去の呪縛から抜け出せない人間にしか、今日が続くって言われたときの絶望感、失望感ってわからないと思うんです。普通の人は、今日が続くのはハッピーなんですよ。

-うん、きっと続くということすらも意識しないくらいだと思います。

自分は、このバンドを組んだときもそうですけど、"死ねばいいのに"と思っていたので。"明日世界が終わってくれねぇかな"って、ふと思っちゃう瞬間があったんですよね。続かないでほしいなという気持ちがあったし、そんなふうに思っちゃう自分が悔しいんですよ。"この文章の続きにポジティヴな言葉が出てくるまではバンドを続ける"っていうのは、漠然と思っていたし。今のレーベルに来てからは、そのルールに縛られていることすらもダメなんじゃないかと思って、2016年のアルバムは『52Hzの鯨』というタイトルで出したんです。1回大喜利をやめないとわからないんですよね。ただ続けているのは、俺は逆に嘘くさく感じるし、ただの惰性ですからね。それは嫌なんです、このバンドでは。それで、1回大喜利じゃないタイトルにしてみたらしっくりきて、普通にタイトルを付けてもいいんだねと思ったけど、でも大喜利やりたいなと思って。それで、ベスト・アルバムにタイトルがなかったから付けてみたら、これが出てきたかっていう。

-"僕は音楽で殴り返したい"という、それでも世界が続くならがやってきたことを、言葉にして伝えた感じですね。

"殴り返したい"っていうのがすごいですよね。まだ返せてないんだ、と。まだ希望なの? っていうね。ベスト・アルバムなのに、まだ始めてないみたいな空気じゃないですか。殴り返していると思いますよって、このバンドを好きでいてくれている人の中には思ってくれる人もいると思うんですけど。夢の中で、人殴ったことあります? 僕あるんですけど、スッカスカなんですよね。

-手応えも何もない感じですか?

何もないんです。あの感じっていうか。だって、音楽なので空気振動じゃないですか。現実には殴ってないんですよね。聴くか聴かないかも、リスナーの判断だし、"表現"だから誤解されても当然だし。でもその誤解を解かない方が好きなんですよね。でも、ずっと解きたかったんです、バンドを始めたときは。それおかしいよ、なんでそんなふうに思っちゃうの? って思っていたんですけど。誤解はするんです。僕も人のこと誤解していますからね。メンバーのことも。こうして話していても、本当の意味で完全にわかり合っているって言い切ったら、盲目的になってしまうし、嘘になってしまうので。今回のベスト・アルバムも、タイミング的に、活動中止だから出すって思われるよねって、会議でも言っていたんです。

-たしかに、節目のイメージがありますからね。

そう。でも違うんですよね。ベストを出すことは、活動中止の前からあった話で。でも、出そうとしてたものを出さなかったら、俺たち嘘つきになっちゃうんですよね。誤解を恐れて、いいかっこしてる奴となんら変わりないので。それは、俺が一番嫌いだった奴みたいな行動だなと思っちゃったんですよね。