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INTERVIEW

Japanese

SPANGLE×黒猫チェルシー

2018年05月号掲載

SPANGLE×黒猫チェルシー

SPANGLE:菱田 明裕(Ba/Vo)
黒猫チェルシー:渡辺 大知(Vo)
インタビュアー:秦 理絵 Photo by 石崎祥子

-大知さんから見て、SPANGLEはどういうバンドですか?

渡辺:青春感が溢れるメンバーなんですよ。一緒にいると青春感を味わえるというか。そういう人たちが作る音楽は、そりゃあ青春の曲になるだろうなって思いますね。誰が聴いても、なんか知ってる奴が歌ってるように感じるんじゃないかな。

菱田:嬉しいですねぇ。

渡辺:昔SPANGLEがCDを出したときに、そういうことを書いた気がします。

菱田:俺、覚えてるよ。『流線型の仕業』(2011年リリースの1stアルバム)のときですね。"普段は言えない恥ずかしいことを、こいつらはでっかい音に乗せて叫ぶ"みたいなことを言ってたんです。嬉しいんですけど、こっちからすると、お前には言われたくねぇよって思いましたけどね(笑)。だって、黒猫も普段は言えないようなことを言う奴らなので。

-そのあたりの歌詞を書くときのスタンスはお互いに共通点を感じてるんですか?

渡辺:そうかもしれない。あと、共通点で言ったら、SPANGLEがハイスタ(Hi-STANDARD)の影響を受けてるのに、基本的に日本語を大事にするところですよね。SPANGLEみたいな音楽性だったら、英詞でやる方が多そうじゃないですか。最近は英語で歌を歌う人が増えてきてるなかで、日本語を大事にしてる部分は近い感覚があるなと思いますね。

菱田:やっぱり歌詞を書くときは、極力自分が日常で使う言葉を使いたいと思ってるんですよね。"マジで"とか"ガチで"とか。

渡辺:あぁ、「サンダーとフラッシュ」とかそうですよね。あと、なんかSPANGLEの曲は懐かしい感じがしますよね。変に"今風"であることにこだわってないし、そこに対抗しようともしてないじゃないですか。

-わかります。洋楽っぽい雰囲気の新しい音楽のムーヴメントが来てるにもかかわらず、"やっぱりロックンロール最高!"って言ってる感じですよね。

菱田:それ、よくぞ言ってくれました(笑)。嬉しいな。バンドとしては、それを一番大事にしてるんですよ。"ロック・バンドはこうでしょ"っていう。

渡辺:そういう話をしたこともありましたよね。"熱いのがダサい"みたいなことを言う人もいるじゃないですか。そういう人らに対抗する気持ちはないけど、"俺らの思うロック・バンドはこうでしょ"っていう想いを素直に出すことで、"やっぱりそういうのがかっこいいな"って思わせられないとダメだよっていう話をしてたんです。もちろんロック・バンドには、いろいろな正解があっていいんですけど、誰かがやらないと、そういう熱い気持ちをぶつけるロックみたいなものが終わってしまうというか。それが嫌なんですよね。それを誰かがちゃんと担わないとっていう意識はありますね。僕らも。

菱田:俺、大知にコメントを貰ったのと同じタイミングで、銀杏BOYZの峯田(和伸)さんにもコメントを貰ったんですよ。"SPANGLEは1杯850円の、暖簾をくぐって食べる最強のラーメンの味だ"とか、"オシャレでもなくて、素朴で。SPANGLEには夢しかない"みたいなことを書いてくれたんですけど。そのコメントを読んで、"あぁ、俺、間違ってねぇのかな"って思ったんですよね。だからそのときまでは、ロック・バンドであることにも、そんなに強い意識を持ってたわけじゃなくて。ただ楽しくて、元気があって、例えば次の日に出勤する人がいいテンションになってもらえたらいい、みたいな感じだったんですよね。でも、もうちょっと聴いた人の日常を変化させてぇなと思うようになったんです。好きな子にフラれたときとか、ドライブをするときに聴きたいとか。そういうふうに日常に差し込める曲を作るロック・バンドになりたいっていうことも考えるようになりました。

渡辺:そういえば、菱君、インタビューでは前のヴォーカルが失踪した話もしてるの?

菱田:うーん......聞かれたら隠すつもりはないけど。


今は"結成1年目なんで"みたいなノリなんですよ(菱田)


-その話、私も次に訊きたかったことなんですけど。もともとSPANGLEは4人組で活動をしていて、ヴォーカルが失踪してから1年間は充電期間もあったそうですね。

渡辺:本当にびっくりしましたよ。前のヴォーカルがいなくなる直前ぐらいに、(菱君が)"バンドをやめるわ"って言ってきたことがあったんです。

菱田:"どうしよう? 俺もうダメかも"みたいな相談をしたんです。

渡辺:そのとき、何を言ったかはよく覚えてないんですけど、"じゃあ、何をやるんですか?"って聞いたら、"いや、何も決まってない"って言ってて。何もやることがないんだったら、SPANGLEをやってほしいと思ったんですよね。

菱田:俺、K-1の魔裟斗選手が大好きなんですけど、魔裟斗選手が優勝したときに"続けることが何よりも大事だ"っていう名言を残してて。そのときに、大知が似たような話をしてたんですよね。だから"こいつ、魔裟斗と同じことを言ってる!"と思って。

渡辺:あはははは!

菱田:かっこいいなぁと思いましたよね。

渡辺:まぁ、僕らも解散の話なんかは何度もしてきましたから。何度も死んで生き返ってきてるバンドなので。続けることが正義とは思わないですけどね。解散してかっこいいバンドは解散した方がいいとは思うんです。ゆら帝(ゆらゆら帝国)とかね。キャロルも2年半で解散してるわけじゃないですか。むしろ、それで伝説になるなら、解散した方がいい。でも、続けて見えるものがあるならっていうことですよね。

菱田:うん。それで、"じゃあ、やろうか"って思いましたね。

-日本のバンドって、ギターとかベースが抜けても続くけど、ヴォーカルが抜けると、解散することが多いじゃないですか。

渡辺:そうなんですよね。僕、この間、フジファブリックのライヴを見にいって。ヴォーカルがいなくなっても続けるって、すごいパワーだと思いました。ちょっと状況は違うけど、それぐらいのパワーが今のSPANGLEにもあると思うんです。


SPANGLEは叩き上げだから、もう何周も回ってきたうえの1年目なんです(渡辺)


-菱田さんはヴォーカルに転向するとなると、ただ歌うだけじゃなくて、バンドを引っ張っていく存在にもなるわけで。その覚悟は必要だったんじゃないですか?

菱田:目立ちたがりだから、そこは大丈夫だったんです。

渡辺:もともと菱君が作った曲をヴォーカルの人が歌ってたしね。

菱田:だから、前のヴォーカルがいなくなって、誰か歌うかって言ったら、俺しかいなかったんです。今は"結成1年目なんで"みたいなノリなんですよ。

渡辺:SPANGLEは叩き上げだから、その"結成1年"って言うのも、もう何周も回ってきたうえの"1年目"って言ってると思うんです。そういういろいろな戦いのなかで今回のEPができたことは、ちゃんと知ってもらいたいですよね。