Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Plastic Tree

2018年03月号掲載

Plastic Tree

メンバー:有村 竜太朗(Vo) ナカヤマアキラ(Gt) 長谷川 正(Ba) 佐藤 ケンケン(Dr)

インタビュアー:杉江 由紀

新たな扉の向こうに広がっていたのは、一朝一夕では生み出せるはずもない深淵なる新世界だ。昨年メジャー・デビュー20周年"樹念"を経たPlastic Treeが、約2年のインターバルを経て発表する14枚目のアルバム『doorAdore』は、彼らがこれまで積み上げてきた確固たる実績と、現在進行形で前進しながら獲得してきた先鋭的な部分が、絶妙なかたちで交錯しながら、まさに唯一無二の世界を提示する作品へと仕上がったと言えるだろう。つまり、キャリアに裏打ちされたロック・バンドとしてのプライドと、卓越した表現者としての鮮やかな手腕がすべてここに音として詰まっていることは疑いようもない。枯れない樹の名は、決して伊達ではないのである。

-昨年、Plastic Treeはメジャー・デビュー20周年"樹念"にまつわるイベントも多いなかで多忙な日々を送っていたわけですが、今回の14作目となるアルバム『doorAdore』の制作もまた昨年から始まっていたことになるかと思います。まず、音作りや音の方向性についての指針決めはバンド内でどのように練っていくことになったのでしょうか。

長谷川:具体的なテーマは特になかったですけど、今の自分たちが出す旬な音をそのままアルバムの中に落とし込めたらいいなとは考えていましたね。大筋はそこで、あとは曲ごとに録りながら最もその曲に合う音を見つけていった感じでした。

-毎度のことではありつつ、今作『doorAdore』も楽曲それぞれでの振れ幅はかなり大きいですし、曲調やカラーもかなり違っている印象ですものね。

ナカヤマ:だとしても、アルバム全体としては一聴して"このロック・バンドはカッコいいね!"と思われるような音を作ったつもり。そんなのは誰でも普通に思ってることでしょ、という話なのかもしれないけどさ(笑)。ただ、その当たり前なことをあえてちょっと意識するだけで実はいろんなことが全部変わっていくんだよね。

-その際、音圧とディテールで言えばどちらを重視したことになりますか。

ナカヤマ:あぁ、具体的なアプローチをどうしたかっていう話? それはでも、聴いている側に気づかれたらおしまいだから(笑)。別に企業秘密とかそんなんじゃなくて、マニアな人たちとかに"これは素晴らしく上から下までうんちゃらかんちゃら~"とか思われちゃったら、ロック・バンドの音楽としては終わりかなって思う(苦笑)。だって、我々はきれいに整ってるサンプルめいた音楽を作りたいわけじゃなんだもん。自分たち自身も聴き手も、とにかく直感的に"よしきた! ヤバい! これはカッコいい!"ってなれるような音を出せるようじゃないと意味がないよね。

-だとすると、音の基盤となるドラム録りをしていくにあたりケンケンさんがドラマーとして最もこだわったのはどんなことでしたか。

佐藤:心意気、だと思います。何よりそこを大事にしました。例えば、実際に録ったものが自分が当初思い描いていたのとは少しズレてたり、プリプロでやったのとは違う結果になったりしたとしても、その音に対して自分が"こっちの方がカッコいい!"と思えれば、それを良しとできるケースが以前よりも今回は増えたんですよ。緻密さや理屈とかよりも大切にすべきことをさらに大切にできたレコーディングだったので、それが今回はとても嬉しかったです。何より、できたものを聴いたときにメンバーみんなで"これはいいねー"って幸せな気持ちになれることがまずは一番ですからね(笑)。俺はそこを目指しました。

-様々な要素を、個々のプレイによって描き分けていきながら、最後には確固たるPlastic Treeの音としてまとめあげるということ。これはなかなか一筋縄ではいかないことのように思えますが、それを実現していくための秘訣とはいったいなんなのでしょうね。

長谷川:そこはやはり、心意気なんじゃないでしょうか(笑)。僕のことで言えば、レコーディングでは全曲ほぼ同じ楽器を使っていますし、セッティングも基本的にすべて一緒なんですが、個々の楽曲に対しての入り込み方は変わってきますから、それによってそれぞれの曲に対して違うかたちでの貢献をできたらいいなといつも思っているんです。

-では、そんな楽器隊のレコーディングを経て最後に歌入れをされるのは竜太朗さんの役割となるわけですが、Plastic Treeのヴォーカリストとしてマイクの前に立つ際に日頃から意識しているセオリーや美学といったものは何かありますか。

有村:うちのバンドだと歌は最後にはめ込むパーツになるのと同時に、曲にとっては歌が入口となるところもあると思うので、それぞれの曲が持っているオリジナリティを自分の声で決定づけたい、色づけて彩りたいというヴォーカリスト的エゴを持ちながらやっているところは多分にあります。逆に、それができないなら俺が歌わなくてもいいやとなってしまうわけですし。要は、そこは心意気的な部分で(笑)。

-聴いていて各曲から様々な表情が窺い知れて味わい深かったのですが、今作において歌録りの面で特に凝った曲というのがありましたら教えてください。

有村:それぞれにいろいろありますけどね。うん、そこはほんとにそれぞれです。

-ならば、最もするっと自然に歌えたのは?

有村:そうなると、「scenario」ですかね。現実的にはブースに入ってひとりで歌っているんですけど、これはまるでライヴ会場にいるかのような感覚で歌えました。まぁ、そこは結局Plastic Treeとしてここまでたくさんのライヴをやってきていることが生きたところなんでしょうね(笑)。これは絶対にライヴで映えそうな曲だなと思うと、頭で考えずとも曲の中で自分に何が求められているのかということはすぐにわかるし、モードも自然と切り替わるんです。

-ちなみに、その「scenario」は作詞作曲ともにアキラさんによるものとなります。曲調の点からみると、いわゆるギター・ロック然とした色合いを濃く持っているようにも感じますが、Plastic Treeとしてこの躍動感溢れる音を体現していくときにキーとして考えていたのは、どんなことだったのでしょうか。

ナカヤマ:なんて説明したらいいんだろう? 無駄に歳はとっていないぶん(笑)、そこはいくつもありますよ。それこそ、もともとは"俺はこれしかできません!"的なタイプのギタリストに憧れていたこともあったんだけど、プラトゥリ(Plastic Tree)みたいにたくさんの側面を持つバンドをこれだけ長々とやってくると、なんだかんだで得意なことがどんどん増えていくわけ。だから、もし"あなたが最も得意とすることはなんなの?"と質問をされたとしても、"いや、どれもですよ"と答えるしかないね(笑)。

-実に潔くて男前なお答えです。そんなアキラさんからすると、世に数多くいるロック・バンドの中でも、Plastic Tree、そしてご自身が誰にもどこにも負けない! と自負できる点は、具体的に言えばどんなところになりますか。

ナカヤマ:それは......もし負けそうになったとしても、"絶対に負けない!"と思い続ける気持ちじゃない? 仮に、"さすがにこの人を前にしたら負けそうかも"と感じたとしても、こうしてプラトゥリという看板を背負っている以上、あとには一歩も退けないのよ。弱気になんてなれないしさ。そこの諦めの悪さだったら、俺は誰にも負けない(笑)。