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INTERVIEW

Japanese

fhána

2018年04月号掲載

fhána

Member:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

前作から約2年ぶりとなる3rdアルバム『World Atlas』がついに完成した。美しく叙情的な「calling」、あるいはブラスがふんだんな陽性ソウル・ポップ「青空のラプソディ」、またシングル『Hello!My World!!』のカップリングとして収録されたラップ・チューン「reaching for the cities」など、既発曲は幅広く、fhánaとしても作品ごとに新たな扉や引き出しを開け放って、その魅力を爆発させていく2年間だったが、そのすべてをおおらかに受け止めるのがこのアルバムだ。そして、この作品は"World Atlas(=世界地図)"と名付けられた。fhánaが描くポップな地図、そこにはどんな想いが描かれ、その先に何があるのか。メンバー4人に話を訊いた。

-約2年ぶりのアルバムですが、その間にシングルをたくさんリリースしていて、それがかなりバラエティに富んだ内容でした。アルバムはどんな作品になるんだろうと思っていましたが、多彩なシングルが違和感なく収まっていて、それだけ包容力のある豊かな作品になっているなと感じました。今回アルバムを作るにあたり、作品としてのイメージやプランは描いていたんですか。

佐藤:描いていたんですけど、途中からだいぶ変わったという感じですね。2ndアルバム(2016年4月リリースの『What a Wonderful World Line』)のときは新録曲が多くて、いわゆるアルバム制作期間があって、アルバムを作るぞっていう感じだったんですけど、今回のアルバムに関しては、一番古いシングル『calling』(2016年8月リリース)が一昨年の作品で、そこから断続的にシングルを作り続けていたので。レーベルの成り立ち的に、タイアップがあって、そこに対して曲を作ってリリースするというもので、なかなか、"次のアルバムはこうしよう"と言って、10~12曲作ってできましたという感じではなくて。さらに、アニメのタイアップも前もってわかるものではなくて、直前に話がきたり、どんな作品がくるかもわからなかったりするわけで、その都度その都度全力で打ち返していく感じなんです。ある程度曲が溜まった時点で、そろそろアルバムかなという話になって、コンセプトやプランも考えていたんですけど、そこからまた新しいタイアップが入ってきたりとか、やっぱりこの曲も入れようというのがあったりして、最終的には当初思っていたものとは違うところに辿り着いたなと思いますね。

-最初に思い描いていたプランとは、どういうものだったんですか。

佐藤:この"World Atlas"というアイディア自体は、「青空のラプソディ」(2017年1月リリースの10thシングル表題曲)の制作中から出ていたもので。

-昨年春に行ったツアー(2017年4月〜5月に開催した"Looking for the World Atlas Tour 2017")のタイトルになっていましたね。

佐藤:この"World Atlas"に向かうためのツアーという、"Looking for the World Atlas Tour"というもので。さらにこの"World"っていうのは、デビュー前の自主制作盤からずっと使い続けている言葉っていうこともあって、バンドの集大成みたいなものをイメージしていましたね。自主制作盤の『New World Line』(2012年リリース)というのは新しい世界線で、1stアルバム『Outside of Melancholy』(2015年リリース)は憂鬱の向こう側と言って、並行世界(※パラレル・ワールド)のようないろんな可能性とか、あり得た自分のような意味合いで、(タイアップの)アニメ作品の物語もfhánaという大きな物語の中の可能性のひとつだったんだよ、みたいな感じで包み込んでいったものだったんです。そして2ndアルバム『What a Wonderful World Line』は、人と人とはわかり合えないけど、だからこそ本当の希望があるという作品で。そして今回は、ようやく辿り着いた僕たちの世界なんだ、みたいなことを最初はイメージしていたんです。そのコンセプトが一番反映されているのが、12曲目の「Hello!My World!!」なんですけど。そこからも変わって、むしろそのときに思っていたシナリオからもっと外側に出たのが、このアルバムですね。

-外側と言うと?

佐藤:いわばモニターや箱庭的なところから、"ほんとう"の、生身の世界に出ていった感じですね。旅に出ようみたいな──これは、現実的に旅に出てもいいし、比喩的な意味で心の在り方や、自分たちが普段生活をしている場所からちょっと外れてみるとか、普段出会わない人に出会ってみるとかいろんな意味での旅ですけど。旅に出るにあたって、例えば、Google Mapやガイドがあった方が気楽に旅に出れると思うので、旅に出る人の背中を押すための地図がこの"World Atlas"なんだというところに、最終的に辿り着きました。