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INTERVIEW

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晋平太

晋平太

Interviewer:岡本 貴之

僕はラップするときに言いたいことは"まずお前が決めろ、自分で決めてくれ"っていうことなんですよ


-リリックに関しては、晋平太さんの歩みが感じられるようなものになっていると思いますが、いかがですか。

リリックに関して言うと、今僕は30歳を超えて、「主人公」でも「ストレイト・アウタ・ダンジョン」でも自分の話をしているんですけど、"俺"っていうワードはあまり出てこなくて。誰にでも当てはまる自分の話なんだけど、パーソナルな話じゃなくて、誰もがある程度共感できるものっていうヴィジョンを持って作ってるんですよね。コンセプトとして、テレビの中でドラクエをやってるような、あの感じかな? っていう絵が出てきて書いたら、スタッフからも"すごくいいですね"って言ってもらえて。みんな子供のころ、ドラクエやるじゃないですか? 勇者に自分の名前を付けて、"さぁ冒険だ!"みたいな。そうしたら王様に命令されてモンスターを倒しにいくっていうストーリーをこの曲で書いてるんですけど。それを疑ってみるっていうか、それは正しいのかっていうのが「ストレイト・アウタ・ダンジョン」のテーマであって。僕はラップをやるときに言いたいことなんてそんなになくて、"まずお前が決めろ、自分で決めてくれ"っていうことなんですよ。自分の人生なんだから、君が責任を持ちなさいっていう。逆に言うと、俺は俺の人生を楽しんでいるから邪魔するんじゃねぇっていう、それしか言いたいことってないんですよ。そういう意味で僕は邪魔されたくないし、でも絶対邪魔は入るし、人生はRPGっていうふうにある種捉えていて。MCバトルをたくさんやってきて、いろんな人の思惑の間に挟まってみたりするなかで、僕の中での正義は全員に共通する正義ではないってことも嫌というほど味わったし、自分にスポットライトが当たればその反面負けている人がいるっていう、勝ったり負けたりの世界じゃないですか。そこにはあまり正解はないと思うんですよね。でもどうしようもないときもあるので、すごく納得いかないことがあったときは、方法はひっくり返すしかないよっていうことが伝えたかったんです。"目の前の現実 ひっくり返したら夢が実現"っていうのがこの曲のキーワードなんですけど、それが思いついた時点で半ば勝ちというか、そのパンチラインをどう盛り立てるためのストーリーなのかっていう。"現実をひっくり返せば実現するだろ?"、"おぉ~!"みたいな、ただそこで喜んでもらいたいだけなんですよ(笑)。

-晋平太さんは現在、企業で社員の方など、ラップを知らない人たちを対象に"ラップ講座"を行っていますよね。もともとどんな想いで始めたことなんですか。

いろんな地方とかに行くと"バトルってどうやったら勝てるんですか?"、"ラップってどうやるんですか?"っていう質問がすげぇ多くて。いちいち答えるのも大変なので、恩返しじゃないですけど、地方とかに行ったときにリハーサルの合間にクラブに人を集めて無料でやってたんです。そしたらいろんな町でやってほしいって言われてやるようになって。そしたら"本にしましょう"っていう話になって、その本を見た企業から"来てください"って言われるようになって。それ必要なのかなとか思うんですけど、みんな自己発信をするという意味ではたまたまその方法がラップなだけで、一般社会にいると自分の目標を発表したりするじゃないですか。そういうのを楽しくやる方法として、ラップがすごくいいんですよって言って、やってもらったり。それだったら僕にもできることはあるなって思って、とりあえずラップを1回やってみてもらいたいなって。そうじゃないと絶対理解されないと思うんですよ。"とりあえず1回やってみる?"って教えると、みんな必死に考えるんですよ。そうすると、"これを瞬間的にやってるの!?"って、リスペクトに変わるんですよ。でも、僕はなぜやってるかっていうと、やっぱり楽しいんですよ。初めてラップする人のラップを聴くのが好きなんですよ。中途半端に上手なラップより全然聴けるし、パッションがこもってるからなんです。緊張して真っ赤な顔してやってるし。そういうのを見ているとラップってやっぱり楽しいし、表現方法のひとつとして素晴らしいなって思うんですよね。そのパッションを僕も取り戻したいって言ったら変だけど、そんなのずっとやっていたらしょっちゅう出るものじゃないので。初めてやる人のラップはみんな最高ですよ。

-でも、ラップは好きだけどいざ自分がやるとなると恥ずかしいって思う人が多いと思うんです。その恥ずかしさをどうやって取り払ってるんですか。

ある程度の人数が会場がいると、だいたいお調子者がひとりはいるんですよ(笑)。そうしたらまずそいつに、最初にやらせるんです。それを"イエ~イ!"ってバチ盛り上げるんです。そうすると空気ができるんで、今度は2番目にやりそうな奴を盛り上げて。それから3番目に、モジモジしているんだけどわりとセンスがありそうな女の子に"大丈夫だよ、できるよ"ってやらせるんですよ。そうやってひとり、ふたりってやっていくと、自然とみんなやるようになるんです。それが楽しいし盛り上がるし、一瞬でスパークするんですよね。それは間違いなくラップ自体が楽しいから広がるし、みんな絶対できるんです。すげぇ楽しいですよ。最近はヤフオク!さんとか吉本興業のNSC(養成所)に行ってやったりとかしていて。2018年はもっと体系立てていろんな人にラップしてもらう企画をいろんなところから頼まれてて、これが活動の主軸になりそうです。みんなやってみたいんでしょうね。楽しんでもらえて、ラップの本質が伝われば絶対次もあるし、そうやって輪を広げていくことで全然違うヒップホップの見方が増えていくっていうことを僕は目論んでるんですけどね。

-"BIG UP!"で自分の音楽を発信してみたい、という人にアドバイスを送ってほしいんですが、晋平太さんが自分の作品を世に出すうえで一番大事にしていることってどんなことですか?

まず、こうやって誰でも作品を出せる素晴らしい世の中ですよね。昔は審査があってとか、コネクションがあってとかじゃないと出せなかったものが、今はいきなり出せるわけじゃないですか。言ってみたら、いきなりTaylor Swiftと同じところにぶち込めるわけじゃないですか? それって奇跡的な状況で、逆に言えば僕らが今まで持っていたアドバンテージとか業界のコネクションとか、レコード会社っていうものすら無力になってしまうくらい素晴らしい革命だと思うんです。そういう意味でこれを使い倒した方が絶対いいし、でも一発で火を噴くなんてことは絶対ないから、それに向かってやり続けるしかないと思うんですよね。5人買ってくれたのが10人になったら倍だし、100人買ってくれたら次の楽曲を作る金になるかもしれないし、それをどうやったら増やし続けられるのか。それは誠心誠意やり続けて、自分を自分でアピールすることを恥ずかしいと思わずに。最初はそれしかないわけですから。まずは友達をめちゃくちゃファンにするしかないわけで。それでどこまで行けるのかっていうのは、今はとんでもなく遠くまで行くこともできるわけじゃないですか? それを少しでも多く見てみたいですね。僕がCDを始めて出したときに思ったのは、タワレコに自分のCDが置いてあるときに、EMINEMのCDも売ってるわけで、EMINEMのCDを買ってもいいわけじゃないですか? その中から俺のCD買う奴いるの!? って思ったけど、そういう勝負の場なので。そういう意識っていうのはすごく大事だと思うんです。ボタンひとつで音源を上げた瞬間にもう同じテーブルに乗っているっていう。だから1ヶ所でも、"負けてない!"って思えるクオリティのものを乗せた方がいいと思います。

-晋平太さんご自身は今後どんな夢を持って活動していきますか。

自分の大事なライフワークなので、僕はラップをずっと続けます。それと同時に、僕と出会ってラップと出会って、自分のことを好きになってくれる人をこの世に増やしたいし、そのためにできる活動をし続けて、"日本一のラッパー"になりたいです。そして、成功して幸せになります、いろんな意味で。そのための一番いい武器がヒップホップ、ラップなので、それを僕は広め続けます。