Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

古坂大魔王

古坂大魔王

Interviewer:岡本 貴之

YouTubeを介して、日本にいながらピコ太郎を世界中の人気者にしたプロデューサー、古坂大魔王。2000年代初頭から、お笑い芸人としてだけでなく、DJ、音楽プロデューサーとしても活動を続け、音楽を取り巻く時代の変遷を肌で感じてきた彼の眼には、昨今の音楽業界の変容はどのように映っているのだろうか。自らの作品を世の中に発信したいアーティスト予備軍への提言など、今や日本一オーバーグラウンドなプロデューサーからの貴重なアドバイスに耳を傾けてみてほしい。

-インターネット、デジタルが普及したことで、昔と今では音楽のアプローチの仕方も変わってきていますが、古坂さんは音楽業界が将来どんな形になっていくと想定されていますか?

どうなるんでしょうね? たぶん、誰にもわからないですよね。でもなんとなく、1,000年前くらいの、クラシックの時代に戻っていく気がするんですけどね。お金持ちがアーティストを抱えて、演奏会で儲けるという、パトロン制になっていく気がするんですよ。だから、昔は口コミで広がったものが今はネットになるっていうことだけのような気がしますね。つまり、食える人はすごく減るっていうことなんですけど。なんとなく。今は、アイドルがそれに近いですよね? ファンがパトロンになって。別に音源とか何かに感動したからお金を払うんじゃなく、出したものは無条件で買って、それで次にいけるようになって全員で大きな会場を埋めて泣くっていう。"BIG UP!"もそうですけど、今って"TOPなんとか"にランクインしてないと、存在しないのと同じですもんね。やっぱり宣伝しないと。Philip Kotlerが書いた"コマーシャルのないビジネスは、暗闇で女の子にウインクするようなものだ"っていうのがまさにこれで。"BIG UP!"はあくまでもツールですもんね。"これを使えば配信できます"っていう。でもそこをみんな勘違いしちゃうんですよね。これを使えばプロモーションもしてくれてビデオも作ってくれてテレビも出れるんじゃないか? とか。でも本当はYouTubeと同じで、音源をアップしたからといって有名にならないけど、有名になる人も中にはいるっていうことで。だから、ツールとして捉えるのが一番いいですよね。昔は配信でお金を稼ごうとしても、このツールがなかったですから。だから"BIG UP!"っていうパトロンがいて、そこを開放してくれたので、あとは自分で考えるっていうことで。実は0に戻っているような気がします。結局自分でやるしかないですもんね。

-今のパトロンっていうお話は、現代ではクラウドファンディングにも置き換えられますよね。

あぁ、そうですよね。クラウドファンディングって、もともと融資する団体があったじゃないですか? 社団法人とか。言ってみればそれですもんね。うちの弟が、今大学教授をやってるんですけど、一時期社会ネットワークを勉強していて"なんでみんな融資を受けないんだろうね?"って言っていて。"こんな会社やりたい"って言ったら"じゃあうちが出してやるよ"っていう団体がいっぱいあるのに、なんでそこに行かないんだろう? って。きっと知ってる人はそう思うんですよ。だから、クラウドファンディングっていうものはもとからあったんですけど、それが有名になったということなんですよね。それだけだと思います。あとは、マインドがようやく追いついたというか。僕ら音楽が好きな人間は、"CDがなくなるなんてことにならないよ"って思ってましたけど、レコードは昔なくなりましたからね。だからやっぱり、"配信でOK"っていうマインドになるのには10年くらいかかるっていうことなんですよね。

-今我々はその過程に身を置いている、ということですか。

今は音楽業界的には過渡期、変換期であると憂いてるけど、逆にそれを体感できているのはラッキーかもしれないですよね。僕らはビデオデッキの出始めから知っていて、DVDが生まれてインターネットができて配信で映画を見ているってすげぇなって思ったけど、そういう意味では今も楽しくて。情報弱者がちょっとみんなビビッてるんですけど、ほっといても入ってきた情報が一番いいと俺は思うんですよ。ベストな情報が自然に入ってきたものが世の中に一番適していると思うんですよね。

-自分で能動的に探して手に入れたものではなく?

人より秀でようと思ったら探しに行かなきゃいけないですけど。みんな落ちこぼれないためには、そんなに躍起になって探さなくても、やっぱり情報って勝手に入ってきますから。だから、入ってきたものをこぼさずにやっていけば問題ない気がするんですよね。そういう意味では、この"BIG UP!"は――昔から知っているmihimaru GTのプロデューサーの猪野さん(猪野秀碧)が数年前からこんなことを言ってたんですけど――きっとまだみんなの耳に届いていないから、今やるのはベストじゃないと思うんですよ。ところが、このサービスを知って、みんなまず不思議がるんです。"これ、どうやって儲けるの?"って。"それじゃ儲からないじゃん!?"って思うのは、"儲からないものはきっとなくなる"っていうマインドができているからなんですよね。だから、絶対的にいいとかすごいって言われてるものでも、"これ売れてる?"って聞いて"あんまり売れてないね"って言われた瞬間にやめるんですよね。やっぱり、並んでいるケーキ屋さんに並ぶんですよ、みんな。だから、俺はまず"これは登録料がかかる"っていうのを出すべきだと思うんですよ。あれと一緒です、過払い金請求と。過払い金請求で全部無料ですっていうと、怪しくて誰もやらないと思うんですよ。でも、今ラジオでCMが流れてますけど、中身を全部言うんですよね。"過払い金が発生した場合にパーセンテージを貰います、そうじゃない場合は貰いません"って。そうすると"じゃあやってみようかな"って思うのと一緒で。だから、"BIG UP!"についてもラジオですごく言ってるんですよ。"登録料は貰います、それで1,000万人登録すればこれだけ儲かるんです、イコール安心です"って。こういうことを言った方がいいと思うんですよ。

-音楽を始めたころから、ご自分でどう発信していくのかを最初から考えてたんですか?

"次に曲を作るためのお金を得る方法"はすごく探してましたね。今、インターネットがあるのに、音楽を作るのになんでそんなにお金がかかるんだ? ってみんなすげぇ思うはずなんですけど、みなさんは絶対に、鼻歌で歌ったYouTubeを観て満足していないんですよ。必ず金がかかったものを観て満足しているんです。"じゃあクオリティが高いものって何?"って、結局お金がかかってるんですよね。ピコ太郎もそうなんですけど、基本的には最初はどこも何もしてくれないので自分が全部やるしかないわけで。お金がたんまりあればいいですけど、お金がないなかで次を作るためのお金をキープしておかないと作れないから、"どうやれば儲かるかな"って。アイドルでもなければこんな見た目の人間は、イケメン・ビジネスでは食えないので、音楽でいくしかないと。

-イケメン・ビジネス(笑)。

イケメンだったらある程度イケメン・ビジネスで食えるんですけど、それがない人間はどうすればいいだろうって考えたときに、"BIG UP!"のような配信サービスを探していたんです。何より、海外に行ける可能性があるっていうのが大きいですよね。正直、国内の配信のレベルよりも海外の方がマインドが高いんですよ。そういう意味では、海外への可能性があるかないかは大きくて、まず海外に行けるっていうルートを掴んでおくっていう。それがこの"BIG UP!"は革命だなと思います。登録料でキチっとお金を集めて、システム化して、世界的にバズる可能性が誰でも数パーセントはあるっていう。1パーセントあればいいですからね。今まで0だったんで。そのあとに告知はいくらでもできますしね。