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INTERVIEW

Japanese

パスピエ

パスピエ

Member:大胡田 なつき(Vo) 三澤 勝洸(Gt) 露崎 義邦(Ba) 成田 ハネダ(Key)

Interviewer:秦 理絵

パスピエが10月18日にミニ・アルバム『OTONARIさん』をリリースする。今年5月にドラマーが脱退。4人での活動を決意したパスピエの新体制としては初の作品だ。サポート・ドラマーにBOBOと佐藤謙介のふたりを迎えたほか、より自由なアイディアで楽曲へと向き合い、初めてドラムレスで完成させた曲もある今回のミニ・アルバム。インタビューでは変化した創作活動のやり方についてじっくりと話を訊いたが、"ドラムのいないパスピエはバンドなのか?"という点に一度は疑問すら抱いた4人が、"これからのパスピエ"を音楽で表明するという回答に辿り着くまでは、ひとつのドキュメンタリーのようでもある。いま改めて純粋に音楽を伝えるという原点に立つメンバー全員に話を訊いた。


4人で進むって決めたからには、新たなパスピエに期待を持ってもらえる曲を提示するしかない


-前回『&DNA』(2017年1月リリースの4thフル・アルバム)の取材(※2017年2月号掲載)のときには、"この5人で音楽を続ける覚悟ができた"と言っていたので、直後にメンバーが脱退するとは思いませんでした。

成田:そのときは全然何も決まってなかったんですよね。

-そのあとに開催した[パスピエ TOUR 2017 "DANDANANDDNA"]も観させてもらいましたけど、5人で音楽を鳴らしてこそパスピエだなと思いましたし。

成田:実際、(脱退することは)僕らもツアー中に言われたんですよ。

露崎:でも、そう思って観ていただいたのは嬉しいですね。僕らの間では脱退のことが胸にありつつずっとライヴをやっていて、でもツアーはツアーでしっかり終わらせようっていう気持ちだったので。普通に"5人のいいライヴ"で終わらせたかったんです。

-いまはサポート・ドラムを迎えてライヴをやっているんですよね?

成田:そうですね。ドラムが入れ替わったっていうところで、やっぱりグルーヴは変わるので、また新しいパスピエだなっていうところは感じています。いろいろと思う人はいるんだろうけど、いまの僕らができる、一番いいと思うことをやる。そのスタンスは、昔からずっと変わってないので。ブレずにやれてるかなと思ってます。

-もう一度、正式なドラマーを迎えた5人体制になることは考えていますか?

三澤:考えてないこともないんですけど、巡り合わせですよね。

大胡田:そういうのって運命だから。

成田:今回のミニ・アルバムでいろいろなことにトライしてみて、この4人だからこそできたような打ち込みの曲もあるんです。僕らはまだ新しい一歩目を踏み出したところなので、これから続けていきながら、ちゃんと曲の方向性を考える必要はあるし、そのうえでやっぱり正式メンバーとしてドラマーを欲していくのか、逆にいまのスタイルだから面白いよねっていうところに持っていくのかっていうのはまだわからないですね。

-今回、ミニ・アルバムという形態で出そうと思った理由はあったんですか?

成田:そもそも去年からシングル3枚とフル・アルバムを出して、いまのこの時代に、こういうボリューミーな音楽の伝え方を続けていくっていうのもどうなんだろう? っていうことを考えてたんです。もしかしたら、アルバムを曲順で聴いてもらうことさえも難しいなかで、よりソリッドに自分たちの音楽を伝えていくためには、ミニ・アルバム、もしくはEPっていうのが、一番わかりやすいんじゃないかなっていうことですね。

-ミニ・アルバムのサイズ感とはいえ、とても濃厚な作品になりましたね。

露崎:バラエティに富んだ曲調が揃いましたね。今回は4人になったタイミングなので、いまのパスピエの姿を表現したかったんです。打ち込みとか同期とかを使って、いままでまったくやってなかった部分にもトライしたので、この先のパスピエのバンドを年表で考えたときにも、いちばん意味合いが強いアルバムになったなと思いますね。

三澤:やっぱりいろいろなことがあったうえで、新たな一歩として出すミニ・アルバムなので、生半可なものは作れないなっていうのはあったんです。そういうなかで、曲作りのやり方も違ったし、不慣れな部分もありつつ、それが制作を通じてだんだんスムーズになって、新しい作り方が見えてきたりして。いろいろ悩んだり、苦労したりしながら作った作品なので、いままで作ったアルバム以上に達成感があったなと思ってます。

大胡田:三澤さんの言ったとおり、これからどういうことをやっていくかっていうのを探りながら作った1枚なんですよね。これを作り上げたことで、"あっ、4人でこういう音楽ができるんだな"っていうのがわかったので、これから"4人でパスピエをやっていきます"っていうのを表す最初の1枚として、相応しいアルバムになったなと思います。

成田:今回は本当に前を向くしかない状態のなかで生み出していった作品たちでもあるんです。4人になったことで、パスピエはバンドって言えるのか? とか。もちろんバンドなんですけど......そういう疑問というか、葛藤もあったなかで、逆に形態にとらわれない、ただパスピエそのものを出していけるアルバムになったかなと思います。

-果たして4人のパスピエはバンドなのかっていう部分まで考えたんですか?

成田:そこに名前を付けるならっていう話ですけどね。音楽をやっていくことは変わらないんですけど。やっぱり僕ら自身が思っている以上に、もう8年もパスピエをやっていると、5人のパスピエを大切に想ってくれる人がいて、その人たちに支えられて、僕らもやれるから。僕たちが新たに4人で進むって決めたからには、ちゃんと新たなパスピエに期待を持ってもらえるような曲を提示するしかないなと思ったんです。

-そこまで立ち返ったとしたら、メンバー脱退から5ヶ月で新たなパスピエを提示するような作品までこぎつけたのは、かなり早い気がします。

成田:言っちゃうと、リリースのタイミングとしては、こういうことがある前からこのタイミングで出そうっていうのが決まってたんです。それをずらさずにいくことが、逆に自分たちにとってもプラスかもねっていうのはあったんですよね。

三澤:たぶん僕らが早く新しい一歩を踏み出さないと、ファンの人も困ると思うんですよ。どうしていいかわからなくなるというか。

-ある種のデッドラインが背中を押す部分もあったと。

成田:そうですね。そういう感じだったと思います。