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INTERVIEW

Japanese

シナリオアート

2017年09月号掲載

シナリオアート

Member:ハヤシコウスケ(Gt/Vo/Prog) ハットリクミコ(Dr/Vo) ヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)

Interviewer:石角 友香

-で、「サヨナラムーンタウン」に話を戻すと、この曲は何からできましたか?

ハヤシ:これは曲からですね。

-ワクワクする助走があってサビで開けて、ハヤシさんの台詞もあるし、後半でちょっとカオスになる、"ザ・シナリオアート"な曲だなと。

ハヤシ:(笑)そういう王道なシナリオアート、自分たちのシナリオアート観に立ち返った感はありますね。

-なぜそういう曲を作ろうと思ったんですか?

ハヤシ:このタイミングだからっていう感じですね。元を辿れば、自分が中学生のときに最初はコピーとかもしてたんですけど、表現欲求が出てきて、ギターの腕もないままいきなり作った曲が原曲になってて。そのときと、"BORUTO"(BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS)の思春期の不安というか......葛藤みたいなものもある作品なので、結構合わさるところもあるかなと思うんです。音色も、最初にシナリオアートを世に提示した「ホワイトレインコートマン」(2014年リリースのメジャー・デビュー・アルバム『night walking』収録曲)とかと近いところはありますね。

-歌詞も今までと違うし。ハヤシさんの中で心掛けて書いた部分はありますか?

ハヤシ:歌詞のどこのフレーズというより、全体で世界観を示した曲かなと思っていて。こう、満月の夜に何かが失われていく街みたいな、そういう世界を描いたんです。

-満月の夜に何かが失われていく街、なんだろ?

ハヤシ:(笑)そういう設定です。

-地元なのかな? とちょっと思ったりして。"湖上の月"とか出てくるし。

ハットリ:故郷の感じは出てるかもしれんな?

ハヤシ:うん。ノスタルジーは入ってますね。

-それって、地元や10代との決別なんですかね?

ハヤシ:まぁ、そうですね。決別でもあるし、その故郷は好きなんですけど、それでもやっぱりどんどん失われていくものはいっぱいあって、っていう心情です。故郷が好きやったとして、いろんな意味で壊れたり失っていったりする人は世界にいっぱいいると思ってて、そのイデオロギー的な意味でそれを提示したいわけではないですけど、実際に失っていったり追われたりして悲しい思いをしてるっていう人のことを聞いて、政治的にじゃなくて、ただそれは悲しいって思ったんで、そのまま悲しい心情を書き留めた感じでもあります。

-例えば紛争地の人たちとか?

ハヤシ:そうですね。難民のこともあるやろうし、沖縄で自分の故郷に基地ができて、騒音で住めなくなる人たち、それこそダムで昔からあった自分の村が沈むとか、いろんなところにずっと育ってきた街があったとして、それを追われるような気持ちを落とし込めたら、その歯痒さみたいなものを込められたらっていうのは裏テーマとしてあります。そこまで堂々と言っていこうとしてることじゃなくて、ただその悲しい現実があるから、それもちょっと込められたらなっていう。

-曲の印象としては、どっちかと言えば人と人の関係は変わらないというような、その決意が歌われてる比重の方が大きいのかな? と。

ハヤシ:そうですね。そこが救いというか、街の景色がなくなっても最後は人で繋がっていられたらいいなって。

-でも、ハヤシさんがそこまで明快に"あなたを愛していたいのさ"って書くのは意外。

一同:(笑)

ハヤシ:そういう言葉の表現も、どんどん変わっていくなと思ってて。自分が変わっていきたいと思ってますね。