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INTERVIEW

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KASABIAN

KASABIAN

Member:Sergio Pizzorno(Gt/Vo)

-また、NOEL FIELDINGらが出演している「You're In Love With A Psycho」のミュージック・ビデオの撮影風景がちらっと公開されていましたけど、ちらっとそれを観ただけでもだいぶヤバそうな気配がするビデオでした(笑)。どんな内容、そしてどんなメッセージを込めて作ったビデオなんですか?

映画"カッコーの巣の上で"がベースになっている。あと、グルーチョ・マルクスが出ている映画"我輩はカモである"もベースになっているよ。40年代のハリウッド映画もね。俺たちはどこかの戦場にいるという設定だ。これまでで最高のビデオになったと思う。白昼夢を讃える、素晴らしいビデオだ。誰もが狂気を内に秘めている、ということを皮肉を交えて、真面目腐らず、笑える感じで表現している。

-前作から本作までの3年間は、KASABIANにとって、またあなた個人にとってどんな時期だったと言えますか?

その3年のうち、2年はバンドでツアーをしていた。2年ツアーしたあと、残りの1年はこのアルバムを作るのに専念していたよ。その間に休暇もとったけど、基本的には働きっぱなしだ。

-この3年間での体験、経験が本作に影響を与えたことがあったとしたら?

地元のレスター・シティFCがプレミア・リーグで優勝した。あれは最高に嬉しかったな。あと個人的には結婚もした。アルバムを作っている合間に結婚をして休暇をとったのもすごく楽しかったよ。

-おめでとうございます。すごくポジティヴな時期だったようですね。

あぁ、ものすごくポジティヴだった。非常に充実していたし、このアルバムを作るのも楽しかったよ。

-ちなみにTom Meighan(Vo)にとってはなかなかタフな時期だったとインタビューで彼は語っていますよね。

そうだね。彼にとってはかなりつらい時期でもあった。けど、このアルバムが彼にとって希望の役割を果たしたと思う。このアルバムを作ることが。特にこのアルバムはすごく高揚感があってポジティヴだったから、これを作ることが彼にとって精神浄化作用になったと思う。

-また、この3年の間にはイギリスがEUを離脱し、アメリカでドナルド・トランプが大統領に就任するという、世界的にこれまでの価値観を破壊され、試されるような大きな転換点があったわけですけど、そういう時代の激動はあなたの表現に影響を与えたと思いますか? 例えばアメリカでは今、ロックやポップ・アーティストたちによるアンチ・トランプのプロテスト・ソングが次々に生み出されている状況だったりしますよね。

アルバムを作ってる最中はまったく意識していなかったよ。世の中で起きていることと関係なく、自分の本能に従って作りたいアルバムを作った。でも、結果的に自分がやったことというのは、今の時代に対する俺たちなりの貢献となる作品を作ったということだった。前向きな感覚だったり、希望を示している。人々の気持ちを高揚させる音楽を世に出す。こんな時代だからこそ、そういう音楽を出すことが大事だと思っている。どれだけ最悪かってことを訴える人たちもたくさん出てくるだろう。俺たちはそんななかで前向きな気持ちや希望を発したかったんだ。

-では、楽曲について聞かせてください。最初に最高のロックンロール・アルバムと言いましたが、シンプルでストレートなロック・チューンだけではなく、KASABIANらしい危険でアヴァンギャルドなナンバーも中盤以降びしばし入っているのが最高です。ディープな音楽マニアでもあるあなたが、今回特にインスパイアされたアーティストや作品があったら教えてください。

ESGというバンドがいるんだけど、彼らにはたくさん刺激をもらった。それからTALKING HEADSの存在は大きかったね。あとYOUNG FATHERSを気に入ってよく聴いていた。他にはROXY MUSICなんかも聴いたし、70年代のギター・ミュージックに傾倒していたんだ。素晴らしいメロディに、歌も最高で、なおかつ、サイケデリックなサウンドも健在だ。一挙両得、という。そもそも曲がいいから聴きがいがあるうえに、入り組んだ、面白いサウンドもあって聴き応えがある。あの時期の音楽にすごく刺激をもらったよ。

-前作ではKanye Westの『Yeezus』に刺激を受けたと言っていましたが、そういう意味合いの作品は今回ありましたか?

ないよ。ない。どう言えばいいのか......70年代のあの感覚が大きかった。あの時期独特の空気感というのか。でも、ただの模倣にはしたくなかった。レトロな作品にはしたくなかった。ただ......T-REXやDavid Bowie、RAMONES、SEX PISTOLSといった、あの時代ならではの雰囲気に惹かれたんだ。

-ちなみにいちリスナーとして、最近のリリースで面白い、気に入ったものがあったら教えてください。

さっきも言ったけど、YOUNG FATHERSの2枚目(2015年リリースの『White Men Are Black Men Too』)がすごく気に入っている。あとは......DEATH GRIPSは今も変わらず好きだし、Kendrick Lamarのアルバムもお気に入りだ。

-そして、本作中で間違いなくキー曲のひとつと言えるのが8分22秒の大作「Are You Looking For Action?」です。この曲が生まれた経緯について教えてください。

原型は3分しかなかったんだ。今作のテーマでもあった、簡潔なポップ・ソングとしてもともと書いた。それが、休暇から帰ってきて聴き返してみたら、聴き手をサイケデリックな世界の狂った旅に誘える可能性をこの曲は秘めていると感じた。ダンス・フロアにもうってつけだ。ダンス・フロアではせっかく盛り上がっているところで曲に終わってほしくないよね。そのまま続いてほしいと思う。だからこの曲でそれをしっかり示すのが大事だった。その結果、8分にもおよぶものになった。ROXY MUSICの曲を聴いていて、サックス・ソロにヒントをもらったんだ。ワクワクしながら書いた曲だよ。

-このとんでもなくアイディア過剰な状態を曲としてまとめていくのって大変じゃなかったですか?

う〜ん、どうかな。たしかに自分の中できちんと整理したり、時には自分の抑えることも必要になってくる。まぁ、納得がいくまで取り組むことだと思う。何度かやってみれば、やるべきことは自ずと見えてくるものなんだ。