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INTERVIEW

Japanese

岩ヰフミト

2017年07月号掲載

岩ヰフミト

Interviewer:秦 理絵

-ちなみにニューヨークではどんなことを吸収しましたか?

僕はUSインディー・ロックがすごく好きなので、ブルックリンは絶対に行ってみたかったんですよね。ANIMAL COLLECTIVEとかTHE DRUMSの出身地なので。

-ライヴハウスを見てまわったり?

結構行きましたね。面白かったのはブルックリン・ボールっていうところがあって。ライヴハウスとボーリング場が合体してるんです。そこは壁で隔てられてないから、ボーリングをやってる人にも(ライヴの)音が聞こえるんです。

-曲の合間とかにカッシャーンってボーリングの音が入ったり?

そうそう、聞こえますよ。最初は意味がわからなかったんですけど、それも理にかなってるなと思ったんです。閉鎖的な空間にライヴがあるんじゃなくて、ふつうに遊んでる人にも音楽が届いて、"クールな音楽が流れてるじゃん"ってなると、ライヴを観に来る人もいて。海外で純粋に音楽を楽しんでる人を見てるといいなと思いましたね。

-ニューヨークでも曲を作ったりしてたんですか?

ギターを持って行ってたので、そのときに感じたことを曲にしてました。台湾とニューヨークは立て続けに行ったんですけど、そのあとにバッと曲ができましたね。

-モデル経験の方はどうでしたか?

僕らは『NEWTOWN』(2014年リリースのデビュー・ミニ・アルバム)を出した年からLITHIUM ROCK FESTIVAL(※ファッション・ブランド"LITHIUM HOMME"主催フェス)に出演させてもらったりしてお世話になってたんですけど。その社長の平松(剛)さんって方が俺らのことを気に入ってくれてて、いきなり東京コレクションに出ることになったんです。意味がわからなさすぎてランウェイを歩くときは緊張もしませんでしたね(笑)。

-実際に異業種に飛び込んでみると刺激も多かったんじゃないですか?

いままで音楽業界の人としか関わってこなかったから、ファッション業界の舞台裏で頑張ってるスタッフさんを見ると、"あ、これは音楽で言うとアレだな"って関連づけて考えるんですよ。"アナロジー思考"って本があって、僕はその本が好きなんですけど、いつもと違う分野のことを自分に適応するときに、その変換作業で面白いものが生まれるっていうことを言ってるんです。そういうふうにいろんなものを変換してインプットできてるのが楽しいんですよね。

-例えばミュージシャンがモデルとかをやり始めると、意外とネガティヴに捉える人もいると思うんです。それに対する恐れはなかったですか?

たぶんいままでだったらやりたいと思わなかったんですよ。俺は音楽一本でいくんだと思ってたんですよね。だけど、それに対して限界を感じてるところがあったし、ずっと音楽畑で生きてきたから自分の価値観は狭いな、窮屈だなと思っちゃったので。

-それも明確な目的があるからチャレンジできたんでしょうね。

先に音楽で生きていくっていうのがあるので、そのための過程として必要だったっていうことですね。あとは単純に本当にありがたい機会だったので。

-なるほど。で、今回出す「メリーゴールド」にはふたつのアレンジがあるということですけど、現段階では邦楽アレンジの方だけ聴かせてもらってます。

もともと「メリーゴールド」はリリースするつもりのない曲だったんです。いま僕は26歳なんですけど、周りで結婚する友達が増えてきてて。そのなかで親友に"結婚式の曲を書いてほしい"って言われたんです。俺には高価なプレゼントもあげられないから、メモリアルな日の思い出になるような曲をプレゼントしてあげたいと思ったんですよね。だからこの曲は岩井郁人としてその人にプレゼントした曲だったんです。

-岩ヰさんはお母さんとか友人に捧げる曲もよく書くそうですね。

そうなんですよ。しかもそのときの方が良い曲ができるんじゃないか説みたいなのがずっと流れてて(笑)。『SNOWTOWN』(2015年リリースの2ndミニ・アルバム)に収録されてる「冬の向日葵」もそうですね。あの曲もJ-POPなアレンジで最初はリリースする気がなかったんですけど、"すごく伝わるから"って周りのスタッフが言ってくれたんです。

-もう一方の洋楽アレンジはいま制作中ということで。

結構苦労してるんですけど、がっつり洋楽になると思います。

-どこに苦労してるんですか?

この曲は弾き語りで作ってるんですけど、今回はその歌詞とメロディは一緒のままアレンジを分けるっていうことをやりたいんですね。でも洋楽っぽい曲を作るとき、僕は音楽を研究するような感じで作るんですよ。いろいろなことを試しながら、例えば自分の声を録音して、その声をピッチシフターで思いっきり2~3オクターブ下げてみると牛みたいな声になる、これがベース音にできるなとか。そうやっていくうちに、いままで聴いたことがない実験的でかっこいいものになるんですけど。

-すでにメロディも歌詞もあるところにそれを合わせるのが難しいんですね。

うん。これができることが何かの答えになっていく感じがするんです。今回はそれを知るためのプロジェクトだから、この先デモ・テープも公開しようと思うんです。

-というのは?

今回エグサポでやらせてもらう理由のひとつが、ゼロからイチを作る段階から一緒に(リスナーに)見てもらいたいんですよ。これもセオリーどおりだったらできあがったものを提供する方がいいんですけど、どんな作品にも絶対にバックグラウンドがあるわけじゃないですか。そのできあがっていく段階から共有していくことでお互いにとって大事な作品にしたいんです。表層的じゃないものというか。

-曲に対する思い入れが付加価値になるっていうことですね。

そうですね。

-その考え方って、さっき言ってた"誰かに向けて作る歌の方が良い曲なんじゃないか説"にも通じる気がするんですよね。

あぁ、なるほど。