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INTERVIEW

Japanese

Base Ball Bear

2017年04月号掲載

Base Ball Bear

Base Ball Bear

Official Site

Member:小出 祐介(Gt/Vo)

Interviewer:金子 厚武

-1曲目の「すべては君のせいで」で"僕を置き去りに今日も教室は進む"って歌われているのが象徴的ですけど、今ならその時代を対象化して作品にできると思ったわけですね。

そうですね。ホントに結構ついこの間まで、教室のことを歌うのって嫌だったんです。「若者のゆくえ」(2013年リリースのベスト・アルバム『バンドBのベスト』収録)は、卒業ソングのつもりで書いたから"教室"が出てくるんですけど、あんまり好んでは書いてこなかった。でも、今回その時代を対象化して、作品にしようってなったときに、もう1回ここから始めないとなって思ったんです。"光源"っていうタイトルを思いついて、今回のテーマに行き着いた段階で、これを頭で歌っておく必要があるなって。

-「すべては君のせいで」ではシーケンスが鳴らされているように、今作はメンバーが演奏する楽器以外の音がたくさん入っていることがサウンド面での大きな特徴になっています。3人になって、曲作りはどのように変わり、今作に辿り着いたのでしょうか?

今まではローディーさんが4人の機材をスタジオに運んでくれて、PAさんもいてっていう状態でスタジオに入ってたんですけど、3人になって、演奏の仕方も1回リセットするような気持ちになったから、"こんなに物いるかな?"って思って、街スタとかに入ってたんです。それこそ、休憩中にロビーに置いてあるSkream!を読んだり(笑)。で、だんだん自分のギターを持ってくるのが面倒になってきて、ギターもエフェクターもスタジオでレンタルして。

-普通にアマチュアのバンドがやるスタイルですね(笑)。

そうやって曲の土台を作って、各々がフレーズを詰めたらデータを送り合い、Logic上で組み立てていくんですね。

-Logicって今までは使ってたんですか?

使ってないです。提供曲の簡単なデモを作ったりはしてたんですけど、バンドの制作で使うのは初めてで。これで曲を作ってたら、なんとなく"鍵盤入れてみますか"って思うようになって。スタジオとLogicの往復の中で、自然とシンセとかが入ってきて、今までやってこなかったことだから、結構楽しくなって、いろいろ入れたくなっちゃったんです。で、プリプロではそのデータをPro Toolsに流し込んで、それぞれのパートを生に差し替えて、本番でもう1回ツルッと録り直す。このあたりでアレンジャーにシンセ・パートを渡すんですけど、僕が入れたプリセット音源をいい音源に差し替えるくらいにしてもらいました。

-制作の工程は大きく変わったわけですね。

最初にDTM上で作ったものが、何回も更新されていく感じですからね。これまでは最初のデモがあって、それからリハスタ、プリプロ、本番って、全部独立した音源になっちゃっていたわけですけど、頭から最後まで同じデータでそのまま行けて、それでアレンジがどんどん濃密になっていったんです。"こりゃ便利だな"って、初めて気づきました(笑)。さっきの"衝動"とかもそうですけど、ギター・ロック・バンドとしてスタジオで作ると、アレンジもファジーな部分を含んでくるんですよね。"ノリ"でやれちゃったりとか。

-もちろん、それはバンドの良さでもあるけど......。

そうそう、そうなんだけど、バンドじゃないと出ないファジーさは良さとして抱えながらも、ブラッシュアップしていけば、CD音源としても、もっと気持ちよくなるんじゃないかってずっと思ってたんです。単純に、縦線を揃えるとか、全体のピッチ感を揃えるとか、そういうこと以外に、アレンジメントとしてそれぞれが濃密に絡んでいれば、たくさん音を入れなくても済む。皮肉にも、今回それがやっとできたっていう。

-前作でギター主体のロックから、リズム主体のグルーヴィな音楽に変化して、ジャンル的な特性を考えると、そこに乗っかるウワモノはギターよりもホーンや鍵盤の方が合ってるわけですよね。もちろん、そこをあえてギターでやる面白さもありつつ、結果的に、今回に関してはアレンジメントとしてもあるべき方向に向かったというか。

今までも頭の中では鳴ってたんだけど、それを使わないでどう表現するかをずっとやってきてたんですよね。まぁ、今後もこの路線でずっとやっていくかはわからないですけど、今回やってみて、幅が広がるなっていうのは思いました。頭に鳴っているものがそのまま形になるのって、気持ちいいもんだなって。

-今回の路線に関して、"この曲ができて最初に手応えを感じた"っていう曲を挙げてもらうことはできますか?

制作ナンバーとしては「Low way」(Track.3)が最初で、とにかく肉を削ぐというか、まず骨だけで組んでみて、必要な肉だけをつけるっていう、ガリガリ体型の曲にしようと思ったんです(笑)。頭は使いましたけど、意外とすぐに形になって。それを持ち帰って、DTM上で組み立ててるなかで、なんとなくブラスを入れてみたら、やっぱり合ったんです。で、これがありなんだったら、もっと突っ込んでみようと思って、「すべては君のせいで」とかになっていくっていう。

-もっといろんな音色を使ってみようと思えたと。

それをやると同時に、3人だけで詰めるっていうこともやりたくて、「逆バタフライ・エフェクト」(Track.2)とか「SHINE」もできた感じですね。

-そういう意味では、本作には二極ありますよね。「Low way」に関しては、前作のファンクやディスコ的なところから、さらにジャズやヒップホップに接近したような印象です。

今回は純然たるファンクは切ったんです。ホントはもう1曲作ってて、それがどファンクなんですけど、8曲でも十分濃かったから、ここにファンクが入るとそれぞれの良さが分散しちゃう気がして、この8曲にしようとなったんです。カッティングとか、ファンク的な要素がある曲もありはしますけど、ファンキーなことがやりたいっていう曲ではないですね。あと「SHINE」はもともとラテン始まりだったんですけど、ラテンとかダブって、僕ら癖ですぐ出てくるんで、今回はあえて使いませんでした。

-ジャンル的な発想よりも、"3人のアレンジメントを突き詰めたい"っていう発想がまずあって、それが結果的にファンキーなものになったり、音数を絞ったものになったりっていう感じですかね。

もっと言うと、その前にあったのがさっきも言った"フレッシュなことやりたい"ってことで、そのあとに"3人で組み立てよう"っていう順番ですね。だから、さっきの二極っていうのも、結果的な分かれ方で、やっぱりまずは"どういう音出るかな?"っていう、オープン・ワールドだったんです(笑)。