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INTERVIEW

Japanese

ReN

2017年04月号掲載

ReN

Interviewer:秦 理絵

-スペースシャワーTVの特番("Ed Sheeran ÷ SPECIAL")で、Ed Sheeranと対談したんですよね。ReNさんが聞きたいことをインタビューできる企画だったそうで。

もちろん、視聴者のことも考えて質問は用意しましたけどね(笑)。でも、基本的には"絶対にこれは聞きたい"って思ったことを聞きました。カメラが回ってないときにも話してくれる人だったので、本当にいろいろなことを話しましたね。もともとEd Sheeranは、自分がアーティストとして活動を始めるきっかけを与えてくれた人なんです。

-人生を変えたアーティストですよね。

僕がレース中の事故で怪我をし、レーサーとしての幕を閉じ部屋から出るのも嫌なくらい落ち込んでいるときに、友達が"Ed Sheeranっていうアーティストが日本に来るよ"って教えてくれて。そこで僕は衝撃を受けるんです。そのときにステージ上のEd Sheeranからピックをもらったんですけど、そのピックを見たときに、何かの合図だと思ったんですね。ひとりの男がギター1本で汗だくになって演奏するのを見て、"俺、落ち込んでたのに、こんなに笑えてる"って思えたから。それを見て、音楽をやっていこうって決めたんです。当時20歳だったので、22歳まで――みんなが社会人になる年までに、とにかくこの道を本当に真剣にやろうって。その2年間で、俺はこのピックをEd Sheeranに渡しに行きたいと思ったんです。

-対談のときにはピックを渡したんですね?

そうなんです。で、そのときに、自分が悩んでることをEd Sheeranに聞いたんですよ。彼はギター1本で不可能を可能にした人だから。どうしたら、そういう音楽をひとりで生み出せるんだろう? って。そしたら、"自分のトラックをスタジオで流して、ギターを置いたら何かできるよ"って言われたんです。正直、そんな簡単にうまくいかないよ、とも思ったんですよ(笑)。でも、物は試しと思って、言われたとおりにしたんです。まずリズムを決めて、楽器を足して、トラックを作って。そこにどういう景色が見えるだろうって目をつぶって、イヤフォンをつけて、ずーっとトラックを聴いてたんです。

-そしたら?

だんだん"これは高速道路を走ってるな"って、景色が見えてきたんです。アンバー色のライトが見える、トンネルが近づいてきそうだな。ビートが強くなった瞬間に、女の人が髪の毛を振ってる、とか。ある種、自分の中でPVみたいに見えて。自分が何かから逃げてるような気がしたんです。不安から脱却するような心境というか。

-そのイメージを歌詞に落とし込んでいったんですね。

でも、キーとなるワードはすぐに決まらなかったんです。で、僕はオーストラリアに行ったんですよ。そのEd Sheeranのインタビューがあった次の週にオーストラリアで彼のライヴがあって。それこそ、音楽を始めるきっかけになったライヴで観て以来、生のライヴを観てなかったので。ループ・ステーションもいっぱい練習したし、絶対にいまの自分が観る意味があると思ったんです。で、インタビューしてるときに、直接"行きたいんだけど"って言ったら、"じゃあ、来いよ"って言ってくれて、行ったんです。

-すごい行動力ですね。

本当にすごく悩んでたから、刺激が欲しかったんですよね。で、オーストラリアに行ったときに、観光もして。ボンダイビーチっていうライフ・セーバーの発祥になったビーチに行ったんですよ。景色がきれいだったから、写真をいっぱい撮って帰ってきたんですけど。そこから、曲をバーッて詰め直していったときに、何も意識してないのに"Life Saver"っていうタイトルになってたんです。でも、自分ではそのことすらも忘れてたんですよ。マネージャーに"これって、ボンダイビーチに行ったからできた曲だよね?"って言われて。

-全然意識してなかったんですか?

無意識でしたね。悩んでる自分の感情から逃げ出したくて"Life Saver"っていう言葉を使ったんですけど、ボンダイビーチに行ってなかったら、たぶんそれは出てこなかったと思います。"これが、インプットとアウトプットなんだな"と思いました。いままで吸収しなきゃと思ったときに、何か吸収できた試しがないんですよ。でも結局、意識してないところでこんなふうに出てくるんだって、鳥肌立つような感覚だったんです。

-今後の曲作りにも大きな影響を与えるものになったんじゃないですか?

これは、Ed Sheeranもあんまりやらないやり方らしいんです。本人も悩んでたなかで、いろんなやり方を試したって言ってたから。"絶対にやめちゃダメだ"って言われたんですよ。作業を途中でやめたり、投げ出したりするのはダメだって。僕は、音楽の"お"の字もわからない段階で、背伸びしながら音楽をやってきたけど、それも間違ってないよっていうことを、間接的に教えてもらえた気がしました。じゃあ、これからも自分にエンジンをかけて、全部自分のやり方でいろいろ試してみようって思える出来事になったので。ちょっと強くなれたかなと思いますね。

-今回はEd Sheeranのやり方を真似してみたけれど、もっと自分らしいやり方を模索していくためのきっかけになったんですね。

もちろん、Ed Sheeranは大好きだけど、それは自分の中のルーツ・ミュージックとして大切にしていくべきなので。曲としては、これまでの世界観からしたら、いい意味で裏切った感じになるとは思うんですけど。自分自身でトライしていった結果、どういうものが生まれるかっていう作業が大好きなので。その第一段階ができたと思います。