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INTERVIEW

Japanese

THE BACK HORN

2017年03月号掲載

THE BACK HORN

メンバー:菅波 栄純(Gt)

インタビュアー:石角 友香

THE BACK HORNのニュー・シングル表題曲「あなたが待ってる」に、宇多田ヒカルが共同プロデュース/歌唱などで参加していることは、話題ではあるが納得のコラボレーションだ。表面的なジャンルを超えて、これほど人間の深部を描き、またそれを大げさに聴かせないミュージシャンは実はそんなに多くない。そして両者から生まれる作品にはあらゆるベクトルが想像できたが、完成した楽曲は穏やかな風のように、触れた瞬間にふっと思い出すような優しさと確かさがある。バンドの可能性のキーマンであり、この楽曲の発端を作った菅波栄純から横溢する、表現者としての醍醐味を感じ取ってもらえれば幸いだ。

-この曲自体はいつごろ書いたんですか?

この曲に関しては宇多田さんと一緒にやって完成したものですけど、俺が書き始めたのは去年の夏前だと思いますね。で、メロディを書いていてふと、将司(山田将司/Vo)と宇多田さんの声が重なって"あなたが待ってる~"って聴こえてきて、"あぁ、これほんとに聴きたいな"と思ったところがこの曲のスタートです。そのときは妄想だったんですけど、頭の中でふたりが歌ってる、鳴ってる音が実現したらほんとに感動できるものになるなと思って。メンバーへのデモ出しの日に"1曲できたんだけど、聴かせる前に説明すると、宇多田さんの声もサビのとこで聞こえてるから、それが実現できなかったら、これはお蔵入りでもいい"ってみんなに説明したうえで聴いてもらって。聴かせたら、"突飛なアイディアではあるけれど、言ってることはわかる"って言ってくれたんです。それで、スタッフも含めてみんなで話して、だったら1回聞いてみよう、思いを伝えてみようという流れになりました。

-オファーの段階ではコーラスだけお願いするつもりだったんですか?

その段階ではそれぐらいのことしか見えてなくて。で、将司が歌入れしてコーラスは俺が歌ったデモが一応あったので、それを送ったんです。歌詞もざっくりしたものがあったんで、どう聴いてくれるかな? って、かなりドキドキでした。

-『Fantôme』(宇多田ヒカルが2016年9月にリリースした6thフル・アルバム)のリリース前ぐらいですか?

それがあったから返事が来るまでちょっと時間が空いたのかな。それで、宇多田さんからレスポンスがあって、"やりましょう"と。しかも、どうせやるんだったらもっとがっつりやりましょうよみたいなニュアンスで返してもらえて、"うぉー! マジか!?"ってみんなで盛り上がって(笑)。じゃあ具体的にどうしていこうかってなったときに、歌詞が完成してなかったから共作してもらえたらいいねっていうのと、ストリングスとかピアノ・アレンジもお願いできたらすごいよね、という話をしたんです。で、お願いしてみたら"それもやる"と。しかも、演奏とか全体のプロデュースも引き受けるよって言ってもらえて。レコーディングが全体で4日間だったんですけど、フルで宇多田さんがいてくれて、ずっと一緒に作ってましたね。

-レコーディングのときにはもう『Fantôme』はリリースされていたんですか?

出てましたね。レコーディング自体は12月頭だったんで、やりとりしてる間にアルバムが出て。俺らもアルバムを聴いたんですけど、すごくいい内容だったんで、改めて"楽しみだ"っていう気持ちが高まりました。

-ちなみに、『Fantôme』はこれまでの宇多田さんとはまた違う地平に到達したアルバムですけど、どういうところが"すごい"と?

まず、これは結構基本的なことですけど、音、歌詞、メロ、歌唱、参加してるミュージシャン含め――俺、KOHHとかすごく好きなんですよ(※『Fantôme』収録曲「忘却」にフィーチャリング・アーティストとしてKOHHが参加している)。ひとつひとつのクオリティが高くて完璧だったのはもちろんなんですけど、やっぱりこう、面白いなというか、宇多田さんって時代感覚が鋭いなと。それまでのアルバムも全部持ってるけど、前はフューチャリスティックなムードがあったじゃないですか。それが少し日常志向っぽくなりかけた『HEART STATION』(2008年リリースの5thアルバム)があって、そこからどうなるのかな? と思ったら、ものすごく日常感があって、地に足のついた感じに仕上がってきて。世界的な音楽の流れと、それをふまえて、日本人の俺らに何を届けるか? という判断、その全部が高いクオリティで成立しているなと。もう完全なセルフ・プロデュースで全部やってるじゃないですか。こんなことができるんだなぁって、俺は見せつけられた感じがあって(笑)。しかも、生命的な前向きな曲もあれば、物語的な曲もあって、ちょっと際どい恋愛の曲もあってっていうバリエーションがあるなかで、自分たちが主戦場としてる、死にまつわる部分をどういう深度で書くか? っていうのは、いつも注目するというか。人が死にまつわる音を作ったときに、"どうやってくるのかな?"っていつもアプローチを見るんですけど、今回の「忘却」とかは、"うわぁ、また新たな死にまつわる世界的な名曲が生まれたな"と思いました。

-実際、世界中で聴かれたアルバムですし。

そう、それぐらい思いましたね。すごい圧倒されたし、悔しさもあるし、自分の作曲の意欲ももらったというところで。

-宇多田さんからOKの返事が来て、一緒にやる段階でそういう心境になってるっていうのは、前向きな話でもあるし不思議なタイミングですね。

単純にミーハーな気持ちというか、作詞、作曲、パフォーマンスすべてにおいて、完全にリスペクトがあるんですよ。それを今まで以上に塗り替えてきたアルバムをちょうどそのタイミングで聴けたから、アホみたいな言い方で言えば、"あの人と一緒に音を作れるのが刺激的で、人生の宝物になるだろうな"と思ったのが一番大きくて。実際、レコーディングは短い期間だったけど、"あ、こりゃ墓場まで持っていく思い出になったぜ"と思ったし(笑)、これからの自分の経験としても、いい変化を及ぼす期間をもらえたなって感じはありましたね。