Japanese
fox capture plan × bohemianvoodoo
ジャズを軸にあらゆるジャンルを横断して刺激的な音楽を届けてくれるfox capture planとbohemianvoodoo。ロックやダンス・ミュージック好きにもファンが多いレーベル"Playwright"の2枚看板でもある両者が、2016年12月に2作目のスプリット・ミニ・アルバム『Color & Monochrome 2』をリリースした。これを記念して、fox capture planの岸本 亮と井上 司、bohemianvoodooのNassyと山本拓矢の計4名による対談をセッティング。実際に耳にすれば、意外と聴き覚えのあるポピュラーなインストゥルメンタル・ソングだと気づく人も多いであろう、彼らの音楽へのスタンスやルーツなどを聞いてみた。
fox capture plan:岸本 亮(Pf) 井上 司(Dr)
bohemianvoodoo:Nassy(Ba) 山本 拓矢(Dr)
インタビュアー:石角 友香 Photo by 結城さやか
-fox capture plan(以下:fox)もbohemianvoodooも、現代版ジャズ・ロックが大まかなコンセプトかと思うのですが、そもそもジャズのリスナーを対象にして活動を始めたわけじゃないんですよね。
井上:結構ジャンル関係なく、ロック・バンドとイベントをやったり、去年は"FUJI ROCK FESTIVAL"とかにも出させてもらったりしていて。
岸本:Keishi Tanakaと共演した(※2016年5月にfox capture plan feat. Keishi Tanaka『透明色のクルージング』をリリース)のもひとつのきっかけですけど、ロックのリスナーだったらどういう人に届けるか? っていうのはもともと考えてたことなんで、そこは一貫して変わってないところですね。Keishi君とは知り合って1年ぐらいなんですけど、もともと彼のことはRiddim Saunterのころから知ってたんです。ルーツにある音楽はクラブ・ミュージックだったりと、音楽性にも共通する部分があったし、レコード会社は一緒だったので、そのうち共演したいなと思ってたし、人間性的にも合ったんですよ。お互いが音楽を高め合うこともそうなんですけど、双方のリスナーとか、自分たちが活動してる以外の世界に自分たちの音楽を広めたいっていう共通の目的もあったというところですね。
-foxは出演しているフェスが多岐にわたってますよね。
岸本:そうですね。"東京JAZZ"や"FUJI ROCK FESTIVAL"に参加したり、Billboard Liveに出演したり。あとは音源だと、今回のbohemianvoodooとのスプリットとか、ディズニーのアルバムで大森靖子さんとコラボしたり(※2016年7月リリースのコンピレーション・アルバム『ROCK IN DISNEY ~Season Of The Beat』に「不思議の国のアリス」で参加)、2016年はある意味では華やかな結成5周年だったなと思います。
-たしかに。みなさんのそもそものルーツというか、バンドをやろうと思った直接のきっかけは何ですか?
井上:僕はNIRVANAですね。NIRVANA時代のDave Grohlが今でも一番好きなドラマーなんですけど、あの人がいたからバンドをやろうと思ったんです。
-手数が増えたり、テクニカルになっていったりしたプロセスとしては?
井上:foxの前にやってたバンドもインスト・バンドが多いんですけど、今のfoxみたいにステージではドラマーが前にいて、横並びになってライヴをやってたバンドがあって。そうやって、後ろで支えるというよりは、前に出て表現するというか、表に出るタイプのバンドをずっとやってきたんですよ。そういうことも無意識のうちに影響していたとは思うんですけど、もともとは目立ちたいっていうところからきてます(笑)。
-岸本さんは最初から鍵盤奏者だったんですか?
岸本:そうですね。母親がピアノの先生だったので、坂本龍一さんとかを聴いていたり、同時にロックも好きだったから、DEEP PURPLEのJon LordやKeith Emersonのオルガンとかも聴いてたり。高校の文化祭でライヴをやるときは、SOPHIAとか日本のバンドのコピーもやっていて。都(啓一)さんのキーボードは好きで、今でもリスペクトしてますし、影響を受けた部分は自分のベーシックにあると思いますね。
-ジャズの理論的なところは勉強したんですか?
岸本:一応、大阪音楽大学に行ってました。ジャズ・ピアニストだとMichel Petruccianiが好きです。あとはBill Evans、Chick Corea、Keith Jarrettとか、有名どころですね。ほかにもBud Powell、Hank Jones、日本だとMONDO GROSSOの吉澤はじめさんとか、いろいろ聴いて影響を受けてますね。
-bohemianvoodooのおふたりのルーツは?
Nassy:最初はGRAPEVINEです。それが20年近く前だから、初期のころからですね。そもそも兄貴の影響で、中学生のころからPaul Wellerが大好きで、よく聴いてたんですよ。それで楽器を始めて、GRAPEVINEのコピーを友人たちと高校の文化祭とかでやっていて。次にEARTH, WIND & FIREにいったんですね。やっぱりそれはベースをやっていたからだと思うんですけど。で、そこからは今もその延長なのかなと。グルーヴものから入って、どんどんそっちの方に行ってると思いますね。
山本:僕がバンドとして最初に好きになったのはWEATHER REPORTでした。
-やっと一番ジャズっぽいのが来た(笑)。
山本:(笑)WEATHER REPORTからジャズに入って、John ColtraneとかMiles Davisとか、鉄板のものを聴くじゃないですか? でも、そこから遡ったところで、これから音楽をやるんだから新しいのも聴いとかないとなと思って、SOULIVEとか、完全にジャズじゃないところも聴くようになったんです。
岸本:完全に"世代"ですね。
-foxはビートの感じがとっつきやすいなと今作でも思ったんですが、bohemianvoodooのふたりから見て、foxはどんな特徴があるバンドですか?
Nassy:おっしゃるとおり、サウンドひとつひとつがすごくはっきりしてるんで、聴きどころがわかりやすいっていうのはあります。
山本:お店とかで流れてても、foxの音はすぐに耳に入ってきますね。
-じゃあ逆に、foxのふたりから見たbohemianvoodooの特徴は?
岸本:もともとPlaywrightのレーベル・カラーでもあるんですけど、僕たちとは違うアプローチで、ジャズとかを聴いてなかった人でも聴ける音楽ですよね。メロディとサウンドの心地よさで聴かせるというか。2000年代のクラブ・ジャズ・ブームのときは、パーカッションが賑やかなアレンジのものが多かったんですけど、bohemianvoodooはガット・ギターとピアノのアンサンブルが特徴的で。
井上:僕もまずメロディが聴きやすくて、入りやすいところだと思う。あと、ドラマー的な視点なんですけど、タクちゃん(山本)はメロディをすごく活かして聴かせるイメージなんですよ。めちゃめちゃ近い場所にタイプが違うドラマーがいるので、ここ何年かbohemianvoodooと一緒にやって、目の前で見たりするなかで、foxをやるときも静かなとき意識して音に気をつけるようになったのはタクちゃんの影響ですね。
-ロックだけを聴いている人も、知らず知らずのうちにSOIL&"PIMP"SESSIONSとかH ZETT Mとかを通してジャズを聴いていたりして、実は遠い存在じゃないんですよね。
岸本:そうですね。ジャズを通ってるといえば、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)の沖(祐市)さんとかも、たぶんむちゃくちゃ上手いと思います。バックグラウンドにジャズとかがあるから、演奏に説得力があるのかなと思ったりしますね。
-bohemianvoodooはbashiryさんのガット・ギターが特徴的ですよね。
Nassy:普通のフルアコとガット・ギターですね。
-その響きが生み出してるオーガニックな感じがあります。
Nassy:そうですね、彼は書く曲もすごくオーガニックな感じです。それがちょっと、芋っぽいとかじゃないですけど、なんか素朴で。
-それが新しいというか。
岸本:ですよね。僕らはクラブ・ジャズ世代なんですけど、そういう世代の人たちが結構、野外フェスでオーガニックな音楽を聴き出しているんですよ。で、bashiryのギターを前面に出すbohemianvoodooのサウンドって、そういう世代の人たちと共鳴するところがあるんじゃないかと。
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