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INTERVIEW

Japanese

ヤバイTシャツ屋さん

2016年11月号掲載

ヤバイTシャツ屋さん

Member:こやまたくや(Gt/Vo) しばたありぼぼ(Ba/Vo) もりもりもと(Dr/Cho)

Interviewer:沖 さやこ

-この曲だけでもわかるとおり、今作『We love Tank-top』はさっきおっしゃっていた"いろんなことをやりたい"という気持ちがかなり実現できた作品だと思いました。過去にリリースされた曲も新録してパワー・アップ。音もだいぶ厚くなりましたね。

こやま:1stシングル(2015年リリースの『そこまでヤバくない』)は買えへん人多いやろなと思ったから、このシングルの曲は全部入れたんですよね。「We love Tank-top」、「無線LANばり便利」(Track.4)、「ZIKKA」(Track.7)はアルバムのために作った曲で、新録した曲はちょっと音を増やしたりして。今までのヤバイTシャツ屋さんがぎっしり詰まった1枚になっておりまして、これを聴けばヤバイTシャツ屋さんのことがわかると思います。......ほんまにばっちり。

-そう思います。おまけに『We love Tank-top』は今までのヤバTだけでなく、"ヤバTってこんなこともやるのね"、"こんな側面もあるのね"というところまでみっちり詰まってるんですよね。小出しにしない、この出し惜しみのなさ。

こやま:惜しまないです、むしろ過剰に出します(笑)。このアルバムで出し切っちゃったので、ヤバいんです。「無線LANばり便利」とかこのアルバムのあとのシングルに取っておけば良かった(笑)。ほんまに曲が思いつかへんかったら、次のCDは「無線LANばり便利」をシングル・カットします!

-今の時代にシングル・カットは夢があります(笑)! 「無線LANばり便利」は珠玉のメロディを持ったヤバT初のラヴ・ソングですから、シングルで出してほしい気持ちもあります。

こやま:「無線LANばり便利」いい曲ですよね? 最後いいでしょう? 最後!

-最後のサビにラップが重なるところ、90年代後半~00年代初頭のミクスチャー・ロックで育ってる身としてはたまらないんですよね(笑)。この曲に限らずヤバTのサウンドはその時代の匂いを感じるんです。音がシンプルなぶん、骨太で硬派だとも思いますし、それなのに歌詞は今までのメロコアではありえないユーモア・センスがあるし、加えてメロディが少しセンチメンタルで琴線に触れる。それが若い音楽リスナーだけでなく、大人たちの心も掴んでいるんだと思うんですよね。

こやま:1周回った感じがあるんですよね。"メロコアがすごく盛り上がってたときみたいな感じやな"と言われることもあるし、ポップなところもあるし。メロディはすごくキャッチーにしたいと思ってるから、CDが売れてた時代みたいな音になってるんかな~と思います。......この曲、間奏もいいでしょう? "わい! ふぁい!(※Wi-Fi)"って(笑)。

-"イェー"も"家"ですしね(笑)。座布団何枚差し上げればいいのか。

もりもと:この曲はライヴをイメージして作ったところもありますね。"Wi-Fi"のところとか、(拳を上げてコールして)盛り上がれるように。

こやま:ほんまに楽しんでもらいたいだけなんですよね。計算高いように思われるかもしれへんけど、CDを聴いてほしいから売れてほしいと思うし。売れてほしいからめっちゃ宣伝するし。ライヴに来てほしいからTwitterで"ここ(チケット)残ってるで"って言うし。ライヴに来てくれたらめっちゃ楽しんでもらえると思うし。

-ヤバTの音楽も活動も全部、その想いから派生するものなんでしょうね。楽しみたいし、楽しんでもらいたい。Track.6「週10ですき家」みたいなおしゃれソングを作るのも、そういう理由ですよね。

もりもと:これは狙ったところもありますね。"こういうのもできるぞ!"みたいな。

こやま:ほんまに初期のころにライヴでよくやってた曲です。そのときはもちろんピアノとか入ってなかったし......ついに入れちゃったな(笑)。レコーディング期間は、ほんまめちゃめちゃ長くて。自主で出してたころなんて2日で3曲録ってたけど、今回は合わせて20日以上かけたんです。レコーディングってこんな時間かかるんや! と思いました。

もりもと:今は演奏面に関しては成長過程なので、自主でリリースしてたときに比べると単純に楽器に慣れたというか(笑)、できることが増えたと思います。(フレーズやパターンを)ひねり出しました(笑)。

こやま:ベースもつけ足したりしたしな。「ウェイウェイ大学生」(Track.9)とか。

しばた:はい、頑張りました。エンジニアさんに"こういうふうにしたい"と言ったら、"こういうのもあるよ"といろいろ案を出してくれたし、教えてはくれたんですけど――

こやま:最終的な決定権は全部僕らでした。なので、いろいろ試行錯誤しながら作業していきましたね。

-今の事務所やレコード会社とタッグを組んだ結果、ヤバTの思ったように作れる、すなわち鍛えるような制作環境を与えてもらえたと。

こやま:ほんまありがたい。嬉しい。だからCDをちゃんと売りたいんですよね。

-そうですね。おしゃれな「週10ですき家」やヘヴィなリフが印象的な「ZIKKA」を筆頭に、こやまさんはちゃんと曲に合ったヴォーカルを当てているところもヤバTの長所だなと。

こやま:やっぱり曲によって、それぞれに自分の好きなアーティストからの影響があるので、ヴォーカルもそれに影響を受けてるところがあるのかな......と思うんですけど。出ちゃう。つい出ちゃう。「ZIKKA」は引っ越しをしたくて作った曲で、昔話題になった"騒音おばさん"のテイストを出したくて作りました(笑)。

しばた:騒音おばさんが言うてた"引っ越し! 引っ越し! さっさと引っ越し!"っていうの、あれやりたい~って。ベースは難しくてゲー吐きました。手ぇつりそうになるし。でもこのフレーズがかっこよかったんで、やりたいと思って。頑張ってずっと弾きました。


常識の真逆を行きたい


-Track.12「流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い」は最も意外性のある曲でした。ヤバTといえば"あるあるネタ"の歌詞のイメージがあったけれど、自分たちの心情をここまで歌うんだ、と思って。

こやま:でしょう? タイトルだけ見たら誰かをディスってるのかなと思うけど、聴いてみるとそれがただただうらやましいという曲で。この曲を作ったのは1、2年前で、ほんまに大学内でしかライヴをしたことがない時期でした。サークルのバンドなんで、言うてもそこまでモチベーションは高くなくて。ライヴをやるのも3ヶ月に1回くらいやし、やる気はそんなにないけど、一丁前にいいライヴをしたいというプライドがあるし。でもここで無理したら楽しくなくなるし。だから"できる範囲で行けるところまで行こう"というのがヤバTらしいんかな、という深い意味が込められています。バンドやってると悩むこととか絶対出てくるんですけど、"楽しくない"と思ってしまったらヤバTは終わってしまいそうな気がする。ほんまに"できる範囲で"と考えていないと、仲も悪くなると思うし。そんなヤバTのスタンスを歌ったような曲やと思います。