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INTERVIEW

Japanese

カフカ

2016年09月号掲載

カフカ

Member:カネココウタ(Vo/Gt) ミウラウチュウ(Gt) ヨシミナオヤ(Ba) フジイダイシ(Dr)

Interviewer:秦 理絵

カフカが9月7日にリリースする、生まれるべくして生まれた傑作『あいなきせかい』が届いた。"生活の場所=東京"をテーマにした前作アルバム『Tokyo 9 Stories』を経て、そこに根付く人間の"愛"をテーマに掲げた今作に、カフカは絶対的名盤を完成させる覚悟で臨んだ。サウンド・アプローチは前作に引き続き、エレクトロな質感にもこだわり、80'sの煌びやかなムードや、シティ・ポップの洒脱で軽やかな空気感も導入。あくまでギター・ロック・バンドであることに自負を持ちながら、それだけにこだわらない解放的なバンドのムードと飽くなき探求心、そのすべてはカフカ8年目の名盤へと向かう必然だった。

-作品のテーマが、ずばり"愛"ですね。収録曲にはラヴ・ソングもあれば、普遍的な愛の歌もあって。まずこのテーマを掲げた経緯を聞かせてください。

カネコ:前作『Tokyo 9 Stories』(2015年リリースの5thフル・アルバム)では、自分の身近なものの大切さに気づいて、生活にフォーカスした作品を作ったんです。そこでは自分のありのままの生活を歌っていて、愛についてはナチュラルな感じだったんですけど。そのツアーでも改めて生活について突き詰めていたら、その中心にあったのが"愛"だったんです。やっぱり人間にとって、なくてはならない宿命みたいなものだし、そこを放棄できないなっていう。

-たしかに今作で歌われてる愛って、『Tokyo 9 Stories』で歌っていた生活の延長にある、素朴な愛なんですよね。それはすごく感じます。

カネコ:やっぱり、ふと愛の曲を書こうだなんて思わないから、前作がなかったら辿り着けなかったテーマだと思います。あとは"愛"ってひと言で言っても、いろんな愛があるんですよね。恋愛だけじゃなくて、家族愛とか、妬みや嫉妬も愛の裏返しだったりするし。いろんな面から愛を歌いたいなと思ったときに、やっぱり1曲じゃなくて、アルバムとしてトータルでコンセプトのあるものを作ってみたいなっていう気持ちで取り組みました。

-愛をテーマにすることは、最初からメンバーとも共有してたんですか?

カネコ:前回のツアー(※2015年10~11月まで開催した"カフカ「Tokyo 9 Stories」Release Tour【LIVE 9 CITIES】")が終わったときに、一度みんなで話し合ったんですよ。朝4時ぐらいにコンビニの前で(笑)。そのときに、"セルフ・タイトルを作るぐらいの気持ちで挑もう"、"名盤を作りたいね"っていう話をしたんです。そこに対しての妥協は一切なしっていうことを誓って動き始めました。

-これまでもカフカは決して妥協したものは作ってないですよね。そのうえで今回"セルフ・タイトルになるような名盤"というものに向かったのはなぜですか?

カネコ:やっぱり自分たちでハードルを上げたかったんだと思います。今まではハードル自体がなかったんですよ。結果的にいいものができて満足してたんですけど。

ヨシミ:でも常に"次はどうしようか?"っていう話はしてるので、もっと上に行きたかったら、そのためには完璧なものを作るしかないなと。自分たちでハードルを上げて、そこに向かって行かないとダメだっていう気持ちが強かったですね。

ミウラ:だから別にハードルを高く設定するのもギリギリな感じじゃなくて、健康的なことだなと思うんです。前作『Tokyo 9 Stories』、前々作『Rebirth』(2014年リリースの4thフル・アルバム)と変わったアプローチをしてきて、やりたいことも、できることも増えていく中で必然だったと思います。前のめりっていうか。

フジイ:ちょっと名盤ができそうな感じもしていたんです。各々のスキルも上がっているので、それを自ら言葉にすることで、もうひとつ上に行けるなと思ったんですよね。

-名盤ができる予兆ってすごいですね。それだけバンドが良い状況なんですね。

ミウラ:うん、ムードは良かったと思います。

-そういうバンドの、前のめりな空気って周期的に来るものなんですか?

カネコ:うーん......でも、今回はかつてない感じですよ。

ミウラ:僕は初めて感じてます。一番バンドが良いときだと思います。

-サウンドの方向性は前作とはまた変わってて。ちょっと大雑把な言い方ですけど、明るいですよね。こういう雰囲気は自然にできあがったんですか?

カネコ:前回と同じでエンジニアを采原(史明)さんにお願いしたんです。信頼できる人だから、絶対にもう一度やりたいっていう想いがあって。前作を作ったとき、その出会いが運命かなと思ったんですよ。カフカのことをよく考えてくれてましたし。だから今回もリラックスして試行錯誤できたし、音楽そのもので遊ぶ感じを共有できたんですよね。なので、采原さんも含めて全員でカフカっていうチームができたなと思ってます。

-カフカがアルバムで2作続けて同じエンジニアにお願いするのは――

カネコ:初めてですね。その安定感もあって、普段は"これは違うな"っていう、カフカらしくないところもモノにできたなと。ちょっと余裕があったかもしれないです。