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INTERVIEW

Japanese

シキサイパズル

2016年06月号掲載

シキサイパズル

Member:Shuntaro Tsukui(Gt/Prog) Ayako Urano(Vo/Key) chaosgroove / Yoshihiro Kato(VJ)

Interviewer:吉羽 さおり

光が溢れ出るようなまばゆく美しいレイヤー・サウンドと、Ayako Uranoのチャイルディッシュで詩的なヴォーカルが、イマジネイティヴな音の世界へといざなうシキサイパズルが2ndミニ・アルバム『reflect memory on sphere』をリリースする。そしてこの6月より、アート・チーム"westronica"からVJの3人を正式メンバーとして迎え、7人編成での活動をスタートさせる。エッジの効いた音でいながらも、どこか懐かしい琴線に触れるサウンドと、その感覚を視覚化する映像チームとのタッグで、"シキサイパズル"というバンド名に相応しいマジカルな体験がより明確になっていく。今後の展開が楽しみとなるシキサイパズルの新しい始まりだ。

-VJのchaosgrooveさんは6月から正式なメンバーになるということですが、以前から一緒にライヴをしていたんですね。

Tsukui:そうですね。westronicaという5人組のVJチームと直接ライヴで関わりだしたのが、2013年に開催した2nd EP『triangle』のリリース・イベントだったんです。もともとwestronicaのHayato君(Akagiri)がうちのベースの(Tasuku)Shiomiと同級生で、その縁でやってもらうことになって。そこから、自分たちの企画やイベントを打つときに、一緒にやってもらうというスタイルがスタートしたんです。去年、『predawn』というTOWER RECORDS限定の1stシングルをリリースしてツアーを回った際は、chaosgrooveさんがすべて同行してくれました。1年間一緒に動いてきて、僕らの中ではメンバーとして迎えたいなという気持ちではあったんですけど、もともとwestronicaというチームで活動しているので、誘っていいものかどうかという探りがあったんです。でも、chaosgrooveさんの方から、"一緒にやれたら"と言ってくださったので、正式メンバーとして迎え入れました。今作の制作もほとんどレコーディングに立ち会ってもらって、いろいろと意見を言っていただいたんです。

chaosgroove:すいません(笑)。

Tsukui:僕らはセルフ・プロデュースでやっているんですけど、特に僕は曲を作っているので、客観的に見られなくなってしまうことが多くて。自分では絶対に自信があった意見も、他の3人が"うーん"という感じで納得しない場合は僕自身が折れることも多かったんです(笑)。

Urano:そういうこともあるね(笑)。

Tsukui:誰も味方をしてくれない中で、chaosgrooveさんが中立的な感じでいてくれると、"ああ、僕が言っていることも意図は伝わっているんだな"ということがあって、嬉しかったんですよね。

chaosgroove:ダメ出しもしたりね。

Tsukui:そういうことも言ってくれるんです。それは、去年1年間一緒にいた時間も長かったぶん、忌憚のない意見を言ってくれる関係性ができあがっているうえでのスタートだったので、制作面においては、僕としては助かってます。僕以外のメンバーもそこは感じているんじゃないですかね。

-VJとしてはライヴを一緒に作り上げていくことになりますから、音の面でもいい影響はあるでしょうね。

chaosgroove:たぶん、お客さんよりも僕らVJの方が、映像を合わせるためにサウンドを聴き込んでいるので。そういった意味でも期もしているし、一緒にやっていると、"もうちょっとこうした方がいいんじゃないか"って思うことはありますね。

-chaosgrooveさんは、もともとシキサイパズルをどういうバンドだと捉えて、一緒にやっていきたいと思ったんでしょうか。

chaosgroove:これはまだメンバーには話してないんですけど(笑)。最近では、VJが入っているバンドも多くなってきていて、古くはdownyのメンバーにVJがいたり、amazarashiも大きなステージでは映像演出があったり。最近仲が良くなったflower in the vasementもVJを入れたライヴをしているので、演出面では目新しいものではないですけれど。曲としっかり合わせて照明さん以上のことを演出し、いい空間を作りたいなと思っているので、シキサイパズルに貢献できるんじゃないかなと思って、入りたいなと。

-音楽的にも、想像しやすい世界観があるような?

chaosgroove:歌詞が抽象的で、いろんな解釈ができるものでもあるので。そのニュアンスも汲み取りながらやってますね。僕らは、あまり写実的な映像は出さなくて、幾何学的なものだったりぼやけた絵だったり、色のイメージはこういう感じだろうなというのは、合わせながらやっています。

-サウンドと映像面とで、"こういう演出で"と具体的にすり合わせてライヴをやっていたわけではなかったんですね。

chaosgroove:もともと、(シキサイパズルが)スタジオに入るときは極力行くようにはしていて。スタジオを真っ暗にして投影しながらリハをやったりしていましたね。それで、"今のところはもうちょっとこうなるように"とか修正を加えて。

Tsukui:ざっくりとしたリクエストはあります。でも基本的には、westronicaのフィルターを通して出してもらっていて。僕らで言えば、楽器のようなものですよね。絶対こうしてほしいというよりは、"自分たちの中ではこういうイメージ"という感じです。それを、一緒に合わせながら構築していくのが合ってるのかなと、僕個人としては思っています。視覚的なものは、わかりやすい写実的なものをポンと提示するだけなら簡単だと思うんです。でもそれを選択せずに、幾何学的なものでアプローチしてくれるというのは、初めて一緒にやったときは意外性があって、面白いなと思いましたね。

chaosgroove:ああ、そうだったんだ。

-実際に、Tsukuiさんが曲を作っているときには、何かしら映像や色合いが浮かんでいるものなんですか。

Tsukui:僕個人ではありますね。曲作りは基本的に、僕が曲の種を持っていってメンバーと一緒に作るというスタイルなんですけど。その曲の種を作るときに、コードやメロディを繋いでいると、最初は一点だけだった映像が徐々に広がっていったり、逆にかっちりとイメージがあって、それにBGMをつけていく感覚で作ることもあったりと、2パターンあるんです。最近はどちらかというと、小さいものを徐々に広げていく方が多かったですね。今作に収録の「fluorite」(Track.3)は、逆光のあのまばゆい感じが常にあるようなところからスタートしています。そういったところから、"こういうアレンジにしたい"とメンバーに話したり、実際にやってみたりして。その伝え方がなかなか――僕が100まで言うのは簡単なんですけど、そうなると意見がぶつかるので(笑)。それだったら、70くらいに留めて、余白部分を作っていった方がいいのかなって感じてます。余白を作っておいた方が、僕自身も想像を超えたものができたときの楽しみがあるので。