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INTERVIEW

Japanese

TRASH AUDIO

2016年06月号掲載

TRASH AUDIO

Member:長谷川 力族(Vo/Gt) 桑尾 哲郎(Gt) Andy(Ba) 西村 一晟(Dr)

Interviewer:松井 恵梨菜

-中でも、ギター・リフがより曲を引き立てているように感じました。リフはどのようなインスピレーションから生まれることが多いのでしょうか?

桑尾:「未来時計」(Track.1)のようなメロディ的なリフは鼻歌からです。歌メロに負けないもの、曲を印象づけるものとして1回聴いただけで記憶に残るようなものを意識しています。

-Track.2「パレードはツヅク」はリフもそうですが、大サビ前の間奏で各パートがせめぎ合うようにして炸裂する感じがインパクト抜群でした。この曲をアレンジした際のエピソードを教えてください。

長谷川:この曲は、僕がメロディから歌詞、アレンジまで全部考えたうえでスタジオに持っていきました。そこでこういうリフが欲しいということを伝えて、スタジオでたまたまギターの桑尾が一瞬弾いたフレーズがあったんです。そして"今のめっちゃいいじゃん! もう1回弾いてよ!"って弾いてもらったのがあのイントロのメインのリフです。なので、わりと直感的でした(笑)。

桑尾:バンド・セッションの中で生まれたリフだからこそ、僕のギターを始めたルーツがガッツリ出てきたと思います。意識してなくても、根本にあるギター・ヒーロー的なリフが出てくるんですかね。ギター・ヒーローになりたいので(笑)。

-アッパーな曲もじっくり聴かせる曲もありますが、曲調にかかわらず、長谷川さんの歌は言葉が聞き取りやすく、且つわかりやすい言葉がセレクトされているように思いました。歌う際や作詞する際にこだわっていることはなんでしょうか?

長谷川:歌詞カードを見ながら音源を聴くときはいいんですけど、やっぱり僕らのようにライヴハウスで勝負している身としては、ライヴという環境の中でもちゃんと歌詞が聞こえるバンドでありたいと思っています。なので、聞き取りにくくなるような言葉は無意識に避けているかもしれませんね。

-特にTrack.3「ONE」は、歌詞もメロディも普遍性があり、勝負の1曲にもなり得るのではないかと思いました。"ヒトの歩み"を絵に喩えたという曲になっていますが、曲を作るうえで意識されたことなどありましたらお聞かせください。

長谷川:実はこの曲が生まれるまでに20曲以上作曲して、ようやくこの「ONE」ができたんです。このアルバムの収録曲のほとんどはメロディと歌詞を同時に作ったのですが、唯一、「ONE」だけはメロディと歌詞を分けて作った曲なんです。なので、メロディで意識したのは今までの僕らの中にはないメロディのキャッチーさと、聴いていてグッとくるポイントを散りばめたところですかね。そして何より歌詞は本当に時間をかけました。歌詞を書く前から歌いたいことは自分の中で決まっていて、"僕らの音楽を聴いてくれるあなたがいるから僕はこうして歌が歌える"ということ。ここに僕自身の葛藤や気づきを、どう歌詞として表現しようかなと悩んで、そこから歌詞にしたい言葉を見つけていったんです。その先に"有り触れた答え"や"1枚の絵"といったこの曲の核となる言葉が生まれました。

-「未来時計」は、"信じて走る"というワードなど、2015年にTOWER RECORDS札幌ピヴォ店限定シングルとしてリリースされている「無名のランナー」ともリンクするように感じました。「未来時計」にはどんな思いが込められているのでしょうか?

長谷川:僕自身、"まだ夢見てんだねー"とか"現実見ないで楽しいことだけやれるのも若いうちだけだしねー"とか、周りに散々言われてきたんです。この曲の主人公はやりたいことがあるはずなのに、"心の思い出"というフィルムにしまい込もうとした思いを"未来時計"という言葉に喩えました。そして周りのロボットみたいな人たちのようになりたくないと、誰かの言葉なんて関係ないと気づけたとき、あの日しまい込んでいた未来を刻む時計が動きだすという歌です。世の中で言われる常識や世間体なんて関係なくて、自分の道は自分の意思で走るしかないという思いを込めました。

-ラストのTrack.6「解き放って」はサウンドの突き抜け具合が心地よく、歌詞も"君"を鼓舞するような、特にメッセージ性の強い楽曲だと感じました。こういったTRASH AUDIOの楽曲が、リスナーにとってどんな存在になればいいと思いますか?

長谷川:この曲は野球の球種で言うとまさにストレートです(笑)。アレンジは勢いと圧みたいなものを意識しましたね。歌詞はもちろん、隠喩を使用したものや、小難しくした方がかっこいいときもあるのですが、なんかそうじゃなくて、何も飾らないまっすぐな言葉がすんなり心に入ってきてくれるときってあるじゃないですか。"泣きたくなるくらい頑張ったんだよ君は/間違いじゃない君は弱くないから"――思わずひとりで泣いてしまう夜に、僕の飾らないこのまっすぐな言葉が、聴いてくれる君の背中を優しくさすってあげられるような曲になってほしいです。

-"One of the Timeless"というアルバム・タイトルもそうですが、TRASH AUDIOの曲には未来と過去をモチーフに描かれている楽曲が多い印象を受けました。歌でどんなことを表現したいと考えているのでしょうか? タイトルに込めた思いも併せてお聞かせください。

長谷川:僕自身、"過去、今、未来"というものが、人が自分の道を歩んでいくときにいろんな作用をもたらすと思っていて、過去がなければ今がないし、今がなければ未来は来ない。その逆もまた然りで、未来を信じられないで今を全力で走ることもできないと思うんです。その中でも過去と未来の真ん中にある"今"がすごく僕の歌いたいことで、今を生きている中でたくさんの感情や壁と出会っていくと思うんです。そういうときに寄り添える曲や、僕の歌が代わりにその気持ちを叫んであげられるような曲を作りたいなと思ってます。タイトルは僕がつけたのですが、"Timeless"という単語には"何年経っても美しいもの"、"色褪せないもの"という意味があって、僕らにとって初めての全国流通のミニ・アルバムであるこのCDが、たとえこれから何枚CDを出させてもらえたとしても、僕らが歩き続けていったとしても、やっぱりこの1枚目を作ったときの初々しい気持ちや僕らの音楽の原点がこの1枚に詰まっていてほしいなと。良い意味で、"やっぱりTRASH AUDIOの1枚目(のミニ・アルバム)って良いよね"って言われ続ける1枚になってほしいと思いこのタイトルにしました。

-今作はバンドにとって大きな一歩になるのではないかと思いますが、最後に、今後の展望について教えてください。

長谷川:そうですね......今はまずたくさんの人に聴いてもらえるようになりたいです。実はこれってすごく難しいことで、特に僕らが活動の中心にしているのは北海道という離れた土地ですし、世の中はTRASH AUDIOを知らない人たちがほとんどです。なので、もちろん"大きなステージでやりたい!"とか"メジャー・デビューしたい!"などの大きな目標もありますが、今はひたむきに音楽と向き合って、僕らの音楽に出会ったときにひとりでも多くの方々に好きになってもらえるように、楽曲もライヴも磨いていきたいです。そうやって一歩ずつ僕らに色をくれる仲間を見つけていきたいです。