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INTERVIEW

Japanese

豊永利行

2016年06月号掲載

豊永利行

Interviewer:秦 理絵

役者、声優、パーソナリティなど様々な分野で活躍する豊永利行が、メジャー1stミニ・アルバム『C"LR"OWN』をリリース。声優のメジャー・デビュー作と言うと、とかく音楽ファンの見る目はシビアだと思う。だが、それも承知で、豊永が全曲の作詞作曲を自ら手掛けて勝負する今回のミニ・アルバムは、声優として出演するアニメ"デュラララ!!"のテーマ曲を中心にアダルトでハードボイルドな1枚を目指したという。今回インタビューで豊永が見せたストイックなその姿からは、ミュージシャンとしての彼の本気度が十二分に伝わってきた。

-豊永さんと言えば、やはり声優としての活動がメインですよね?

役者業を中心にやらせていただいているので、端的に言うと、声優も俳優もお芝居をする、表現をするお仕事だと思ってます。自分の中では、声優っていうカテゴリー分けはしてなかったんですけどね。でも、世間のみなさんがカテゴリー分けをする中では、声優っていうところに身を置かせていただいている。それは光栄だなと思いつつ、普段はお芝居という表現の仕事をメインにやらせていただいています。

-子役から俳優としてご活躍されてますけど、俳優業を始められたのはどういうきっかけだったんですか?

最初のころは子供なので、どうしたって発想がチープですから、お金持ちになれるっていうのと、モテるっていうことだけですね。あとは家が母子家庭で、あまり裕福ではなかったので、家計を支えるっていう意味でも"お金持ちになれたらな"と、当時9歳とか10歳のころに思ってました。子役から俳優をされてる方は"親御さんが応募したら受かっちゃった"みたいな方が多いと思うんですけど、僕は自分の意志だったんです。ませてたなと思いますね。

-そういう役者キャリアの中で、豊永さんにとって音楽はどういう存在なんですか?

もともと僕は子役のときからミュージカルの舞台などにも出てたので、お芝居の延長に歌があって、それを使って何かを伝えるっていう位置づけがあるんです。だから、音楽はどちらかと言うと、普段言えないことや、抵抗のある言葉もソフトに伝えられるのかなと思っていて。芝居で何かを伝えることとベースは一緒だと思うんですね。

-ベースは一緒......。私のイメージだと、監督がいて脚本があるようなお芝居と、すべて自分で作詞作曲をする音楽とでは、そもそも違う意識なのかな?と思ったのですが。

なるほど。たぶん芝居をするという表現だけじゃ我慢できなかったんでしょうね(笑)。ずっとお芝居をやらせていただく中で、自分の伝えたいことが溜まっていて。それを自分の声で発信したいなと思ったときに、もしかしたら演出家や脚本家になって、芝居を1本書いて伝えるっていう表現もあったのかもしれないんですけど、たまたま僕は音楽も好きなので、音楽に行き着いた感じかもしれません。

-いつか音楽をやりたいなという思いはあったんですか?

ありました。もともと学生時代にバンドを組んでドラムをやっていた時期があったんですよ。いろんなロック・バンドやアーティストのカバーをやってたんですけど、他のメンバーが"オリジナルをやろう"って言うくせに、誰も曲を書こうとしなかったんです。学生バンドあるあるなんですけど(笑)。それで、"じゃあ、僕が作るよ"って。そのときにギターもちょっとだけ練習して、それから、曲作りはわりと趣味に近い存在でやり続けていたんです。

-それから30代で本格的に音楽活動を始めたきっかけは?

年齢的なタイミングもありますね。30歳を目前にしたタイミングで僕が歌で表現したいっていうことにたまたま賛同してくださる方がいらっしゃったので。あとは、僕自身が飽き性なので(笑)。"今までやってなかったことはなんだろうな?"と考えたときに、自分で曲を作って歌い、大々的に発信したことがなかったなと思ったんです。

-ちなみに学生のときに、バンドでコピーしたのはどんな曲でしたか?

GLAYとかL'Arc~en~Cielですね。あと、最初にコピーをやるときに、ギターの子が"X JAPANの「紅」をやりたい"って言ったんですよ。でも、ツーバスじゃないですか(笑)。それをドラムも叩いたことのない初心者がいきなりやるっていう無茶な事態になりました。僕は槇原敬之さんやDEENが好きだったので、ちょっとJ-POP、ポップ・ロック寄りの曲をやったりしてましたね。

-メジャー・デビュー前の話になりますが、本格的な音楽活動をスタートさせるにあたって、豊永さんはライヴハウスで活動したり、手売りのCDを作ったりしてますよね?

そうですね。

-2013年には8ヶ月間、毎月1回単独ライヴをしたり。それはどういう思いでやっていたんですか?

言葉を選ばずに言うならば、純粋に"なめられたくない"っていう思いが強かったんです。やっぱり俳優、声優っていう職業の人が曲を出すとなると、音楽だけをやってる人に失礼だなと思ったんです。やるなら僕も声優、俳優という肩書きを全部捨てて、アーティストとしてステージに立たないといけないと思ったんですね。それで、バンドの方々はライヴハウスで対バンなどを経験されてるので、そこの大変さや、楽しさを知りたいなって思ったんです。

-そのライヴ活動プラス、曲も書いて、お芝居のお仕事と両立させていたんですよね?

そうですね。"毎月新曲を1曲書く"っていうのを自分に課して。それが他のお仕事もやらせていただきながらなので......たしかに大変でしたね(笑)。体力的なところも含めて、あと10年ぐらいしたら、そこまで無茶もできなくなると思うので。そういう意味で、最後の無茶をしようかなと思ったんですね。

-わかりました。では、今作『C"LR"OWN』のことを訊かせていただきたいのですが。インディーズ時代のアルバム『MUSIC OF THE ENTERTAINMENT』(2014年リリース)に続くミニ・アルバムということで、どんなことを意識して作ったんですか?

インディーズ時代のアルバムと、メジャー・デビューをしてからの楽曲制作で、一番大きな違いはタイアップかと思います。タイアップさせていただいてるアニメ"デュラララ!!"のイメージ・カラーと、僕がやってきた音楽の色をうまいこと混ぜたいなっていう思いが、根底にあって。タイアップのアニメ作品が好きな方にも楽しんでもらえる作品にしたいなって考えていました。

-直接タイアップになっているのはシングル曲「Reason...」(Track.2/2014年リリースのメジャー・デビュー・シングル表題曲)と「Day you laugh」(2015年リリースの2ndシングル/今作には「Day you laugh -latin style-」として収録)と、表題曲の「C"LR"OWN」(Track.1)ですけど。その3曲だけじゃなくて、今回のミニ・アルバム全体がアニメ"デュラララ!!"の世界観で統一されている、ということですか?

全体としては、そういうカラーになっていると思います。全部で6曲入っている中で半分がタイアップ曲なんですよ。で、それ以外の3曲に僕の色を入れたんです。"デュラララ!!"っていう作品のイメージが、"ハードボイルド"というか"ワイルド"で、どちらかと言うと渋いイメージだったんですね。そういうのが僕も好きなので、さらにジャズ・ロックやスウィング・ロックをやってみたいという思いもあって。僕の持ってる引き出しの中で、一番"デュラララ!!"に近いのはそこだったんです。

-「C"LR"OWN」は、まさにスウィング感のあるゴージャスな曲ですし。

そうなんですよ。この曲はホーン・セクションを生で入れていただいてるんです。僕が"生がいい!"、"打ち込みは嫌だ!"ってわがままを言って叶えてもらいました(笑)。