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INTERVIEW

Japanese

片平里菜

2016年04月号掲載

片平里菜

Interviewer:吉羽 さおり

2ndアルバム『最高の仕打ち』のリリースから2ヶ月。片平里菜が早くもニュー・シングル『結露』をリリースする。4月よりオンエアとなるTVアニメ"迷家‐マヨイガ‐"のエンディング・テーマとして書き下ろされたこの「結露」は、ソングライターとしてシンガーとしての、片平里菜の神髄に触れる奥深く美しい1曲に仕上がっている。淡い記憶の旅に出るような、あるいは自分の内に深く飛び込んで何か大事なものを拾い上げてくるような、そんな密かな心の宝箱を開けるカギを探す歌が、ヒリヒリと繊細に響く。アニメ作品にとっての福音となる曲でありながら、また片平里菜としても普遍の1曲となりそうなエネルギーがある。

-2月に2ndアルバム『最高の仕打ち』がリリースされて、この取材を行なっているのはまさにそのアルバム・ツアーのファイナル直前(取材日は3月19日)ですが、今回のツアーの手応えはどうですか。2作目のアルバムを経てお客さんの雰囲気や片平さん自身のライヴへの取り組みなどは変わっていますか。

ツアーは順調でいい感じの手応えです。バンド・メンバーは以前と変わってはいないんですけど、今回のアルバムで曲の幅が広がったので、いろんな音を聴かせることができるライヴをしてきたと思います。今回は、ペダル・スティールとかスティールパンとか、変わった音色の楽器も使ってもらっていたので、多彩なサウンドになっているんです。お客さんも、ライヴ慣れしている方が増えたのか、わたしのライヴにいっぱい来てくれて慣れてきてくれたのかわからないんですけど、盛り上がり方が以前とは全然違いますね。

-以前は、じっと聴き入っている方が多かった?

"どうしたらいいんだろう?"っていう感じのお客さんも多かったと思いますね(笑)。手を挙げている人も、ちょこちょこといたけど。

-昨年は夏フェスやイベント出演も増えて、そういうところ知ってくれたお客さんがツアーにも来てくれたりというのも多かったかもしれないですね。

そういうのは、すごくあったと思いますね。

-というアルバム・ツアーのファイナルも迎えないうちに、早くも新曲「結露」ができ上がって、リリースというかつてないスピード感です。

はい(笑)。この曲をレコーディングしたのが、アルバムのリリース直後だったんですけど。

-今回の「結露」は、初のTVアニメのタイアップ曲ということですが、これまでの作品やアルバム『最高の仕打ち』での雰囲気とも違う、シンプルながらも奥行きのあるすごく良い曲ですね。タイアップということで、どのように作り上げていった曲だったんですか。

"迷家‐マヨイガ‐"というアニメのエンディング・テーマなんですけど、この作品が人それぞれのトラウマと向き合っていくような、人間模様が描かれたものなんです。今の段階で、どこまで内容のことを話していいのかわからないんですけど(笑)。監督さんも、"フォークな感じで、しっとりとしたもの。番組の最後に流れてほっとするような曲がいい"ということを言っていたので。これはわたしの得意分野だなと。

-そうですね。まさに弾き語りで出てくるような。

夜中にポロンと出てくるような曲ではあったので。なので、あまりアニメであったりテーマに縛られずに、自分の気持ちで書くことができましたね。もちろんアニメに出てくるキャラクターに寄り添えるような、誰にでもあてはめやすいような言葉でというのは、心がけました。

-実際にアニメの映像やエピソードをいくつか観て進めていったんですか。

曲を作った時点ではまだ映像は上がっていなくて、台本のみで。予告編は上がっていたので観ました。特に"迷家‐マヨイガ‐"は原作があるわけではない、オリジナルのアニメなのでどんな結末になるのかは、曲を書いているときにはわからなかったんです。

-これまでも、CMやテーマ・ソングなど題材ありきで作ることはあったと思いますが、ここまで明確にストーリーがあるものに対して曲を作るというのは、なかったですよね。

ないですね。以前のものは、野球中継のテーマ・ソングであったり、受験生に向けての曲っていうテーマはしっかりしていたものだったんですけど、今回はまた全然違うというか。作品に対して作品を作るということへの挑戦だったので、作品同士がいい関係になるようなものを作りたいなって思いました。

-スタートとしては片平さん自身の得意分野となるような曲ではあるけれども、アニメの映像やストーリーを観て、サウンドの雰囲気としてこうしたいというものはありましたか?

アニメ自体が、ちょっとスリリングな内容なんですよ。それもあってエンディングで流れたときに、心があったまるような曲にしたかったので、音もなるべく、アコースティック・ギターがメインで鳴っているものにしたいなというのはありました。今回は、『最高の仕打ち』で「煙たい」のサウンド・プロデュースをやっていただいた石崎光さんにアレンジをお願いしたんですけど、実験的な感じで進んで。古いシンセサイザーとかを持ってきてくださったり。

-懐かしい鍵盤の音もいいアクセントになっていますね。

奥野真哉さん(ソウル・フラワー・ユニオン/Key)に弾いてもらったんですけど、"ああ、この音いいね!"って言いながらやっていきました。タイトルが"結露"なので、どこかウェットな音にしたかったんです。