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INTERVIEW

Japanese

ハシグチカナデリヤ

2015年11月号掲載

ハシグチカナデリヤ

Interviewer:吉羽 さおり

ヒゲにメガネ、派手な柄on柄のファッションの濃いスタイルそのままに、万華鏡的なロック・サウンドを奏でる男、ハシグチカナデリヤ。完成した1stフル・アルバム『その名はハシグチカナデリヤ』では、多彩な音色やフレージング、コード感の妙によるギター・オリエンテッドなサウンドを展開。ソウルにファンク、またスペイシーでサイケデリックにとさまざまに変化しながら聴かせていく。ギターとループ・マシンを相棒に、実験的且つキャッチーさを失わない音楽を生み出していくアーティスト、ハシグチカナデリヤ。その原点や音楽観について訊いた。

-この、"ハシグチカナデリヤ"というのはどういうふうにして始まったんですか。

そもそも、"ハシグチカナデリヤ"というものがいわゆる、リニューアル・オープン的なものでして。前までは全然違う雰囲気の、失恋の曲とか、泣ける曲やさしい曲みたいな、いわゆるシンガー・ソングライターと聞いて思い浮かべる音楽をやっていたんですけど。いろいろあって飽きてきて、リニューアル・オープンしようと。2013年にカナダのYOUR FAVORITE ENEMIESの来日でオープニング・アクトをやる機会があって、そのときは以前の名義だったんですけど、このころからハシグチカナデリヤのモードにはなっていて。なので、わりとここ最近の話なんですよ、"ハシグチカナデリヤ"というのは。

-シンガー・ソングライター時代は"歌モノ"ということですよね、ギターは今のような感じではなく?

"多少ギター・ソロも弾きますよ"みたいな、ちょっとギターの弾けるシンガー・ソングライターという感じですよね。

-先日ライヴにお伺いしましたが、もはやギターがメインじゃないかっていうくらい弾きまくっていますよね。そういう自分のプレイヤー魂が沸々と湧いてきたんですか。

そうですね。30代になって、爽やかな感じで"いい感じの歌モノ"と言われる音楽をやっていても、なかなか難しいなと思っているところがあったんですよね。理由はいっぱいあるんですけど、爽やか系みたいなのでいくとどうしても賞味期限があるじゃないですか。もう昔からのお客さんからには好かれなくなっても致し方ない、なのでリニューアル・オープンしようと思ったわけです。なので、今の方がはっきりしていると思います。好きな人は好きだろうし。前の方が、10人中9人ぐらいは"結構いいね"って思うような音楽だったと思うんですが、これじゃあな......と思って。10人のうち9人ぐらいが"全然好きじゃない"と言っても、その中のひとりが"めっちゃ好き、人生で1番好き"くらいになってくれる音楽にしようと思ったんです。

-今の音楽と、自分のルーツみたいなものは繋がっているんですか。

もともとは、THE BEATLESや RADIOHEADといったUKロックが好きで。国内のアーティストでは、その雰囲気があるMr.Childrenやスピッツも好きでしたね。でも昔から、歌モノと今やってるような曲もたまにあって、自分の中でも二極化していたんですよね。これを同一のミュージシャンとしてやるのはちょっと厳しいかもしれないから、どちらかを極めた方がいいと思ったんですね。例えば、中華屋でカレーがあるみたいなことになってるより、何屋かはっきりさせた方がいいと思って、この方向に振り切ろうと。

-振り切ってからのお客さんのリアクションとか、新たについてきている人は目に見えて変わっているんですか。

目に見えて変わりましたね。最初のころは、その時点までの名曲たちがあるわけで、そいつらを封印することになったわけですから。中華屋をやると決めて、中華屋ではカレーは出さないと。でもカレーのクオリティは高いんですよ。"あのカレーをもう作らないのはもったいないよ"、"悲しい、やって欲しい"と、ミュージシャン仲間からもお客さんからも言われましたよ。でも自分の中に、今のこんな感じになるイメージがあったので、無視しましたね。

-そのカレーに手を加えて、中華風にというのはなかったわけですか。

中華風になるカレーもありました。でも、どのようにアレンジしたところで、もともとが歌モノで。たくさんの楽曲がありましたけど、すべてボツですよ。

-すごい振り切りようですね。でも今はこれまでとはまったく違ったファン層も掴んでいる。

ファン層は違うタイプになりましたよ。自分から見ても好きな人が集まる感じになりましたね。あとは男の人も結構来てくれてましたね。あれは嬉しかったな。

-プレイヤーとして惹かれるものもあるんでしょうね。

だといいですね。

-ギターを始めた原点というのは。

1番始めにギターに触れたのは、友達がGLAYの「BELOVED」(1996年リリースの9thシングル)を弾いていて、"うわーすごい、教えて"っていうところからですね。スピッツやMr.Childrenをコピーしたり、"B'zやX JAPANは難しいらしいよ"って言われると、"じゃあやってみよう"とか。"外国にはMR.BIGというもっとすごいのがいるらしいよ、でもこれはできない"みたいな(笑)。いたってまともな、誰もが通るような感じですよ。

-まさに"ギター少年"的な入り口ですね。

そもそも私はギタリスト志望で上京して、2008年ごろまではSECADEというバンドのギタリストとしてやっていたんです。そのバンドがなくなって、歌うのはものすごく好きだったので、自分で歌い出したんです。そこでまず"あのギタリストは歌うの?"っていう反応がありましたよね。で、本名でシンガー・ソングライターをやっていて、2013~2014年あたりにスタイルを変えようと思って、ハシグチカナデリヤになって。そこでまた、"もうあの曲たちはやらないの? 悲しい"ということで、リニューアル・オープンをちまちましているんですよ。