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INTERVIEW

Japanese

NICO Touches the Walls

2015年09月号掲載

NICO Touches the Walls

Member:光村 龍哉(Vo/Gt) 古村 大介(Gt) 坂倉 心悟(Ba) 対馬 祥太郎(Dr)

Interviewer:山口 智男

バンドにとって実りあるものになった2年ぶりの全国ツアーを経て、NICO Touches the Wallsがリリースするニュー・シングル『渦と渦』は前作『まっすぐなうた』を上回るストレートなロック・ナンバーだ。曲調のみならず、歌詞にも表れた反骨精神と不屈の闘志が彼ららしい。"まだまだ負けられない"と歌いながら、未来に向かって走り続ける4人が今回のシングルに込めた想いと熱いラーメン愛を語る。年末年始には大阪城ホールおよび3度目の日本武道館公演も決定。アルバムの制作も順調に進んでいるという。

-7月19日に東京国際フォーラム ホールAでファイナルを迎えたベスト・アルバムのツアーはかなり実りのあるものになったようですね?

光村:そうですね。久しぶりの全国ツアーだったから僕らも楽しめたっていうのもあるんですけど、それ以上に自分たちの未来と言うか、ここから先、自分たちがこうしていきたいんだってことを明確に示せたツアーになったんじゃないかと思います。だから、ただ楽しいだけじゃなくて、いろいろ手応えもあったし、実験もいろいろできたし、そういう意味では本当に実りのあるツアーになりましたね。

-実験って例えばどんなことですか?

光村:今年は、僕らの中では、歌の世界の中でどれだけ見せきれるかというライヴを追求していて、もちろん2月のアコースティック・ライヴもそうだったんですけど、ミュージシャンとしての可能性も含め、そこをメインに据えて勢いよくやっていこうっていうところでは自信もあったし、そういう面を大袈裟に見せてきたんですよ。ただ、アコースティック・ライヴ以降、ちょっとずつ自分たちが作ってきた歌のメロディそのものが軸にあるからこそ、こういう遊びもできるし、ああいう遊びもできるしってことがわかってきたので、それを証明できるライヴにしてみたくて。だから1曲目もいきなりドカンと盛り上げるのではなく、「雨のブルース」みたいな静かなバラードで始めるっていうのも僕らの中ではものすごい実験だったし、小さいところでいうと、「口笛吹いて、こんにちは」で会場のお客さんに口笛を吹かせるとかね(笑)。ものすごく派手な演出とか仕掛けとかはないんだけど、身近なことで作れる多幸感っていうのも僕はもっともっとやりたいと思ってたから、ツアーの中でやってみました。ツアー中すごく嬉しかったのが、周りのスタッフから聞いたんですけど、ライヴが終わって会場を出たらお客さんがずっと口笛の練習をしてたって(笑)。そういう光景がどの会場にもあったっていうのがすごくよかったです。

-口笛を吹いてもらうのはツアーの初日からやっていたんですか?

光村:やってましたね。とにかく歌とメロディが残るライヴにしたかったから。

-MCで言っていた"磨けば、まだまだ光る曲がいっぱいある"っていうのは、歌とメロディのことだったんですね?

光村:そうです、そうです。

-東京国際フォーラムでは2階席で見せてもらったんですけど、お客さんが飛び跳ねたもんだからものすごく揺れたんですよ

対馬:みたいですねぇ(笑)。

-驚きました。もう笑っちゃうぐらい揺れたんですよ。

光村:東京国際フォーラムではあれ以上、煽らないでって言われました(笑)。でも、(アコースティック・セットでやった)アンコールのときの揺れがすごかったらしいから、アコースティックってそれだけね、ホールでお客さんを盛り上げられるって、僕らにとっても自信になりましたけどね。

-その東京国際フォーラムでライヴ初披露した今回のシングル表題曲「渦と渦」は、100曲目の楽曲だそうですね?

光村:ライヴの練習をしているときに、たまたま対馬君が気づいたんですよ。100曲目で、"まだまだ負けられない"って歌ってることになんか笑っちゃいましたけどね。

-僕はその"まだまだ負けられない"ってところにグッときました。

光村:あ、ホントですか? 不器用なバンドだなってことを思って笑っちゃったってことなんですけど。100曲目でもまだ"負けられない"とか"急げ"って歌ってるって(笑)。でも、それが真実だから歌わずにいられなかったし、100曲作ってきても、まだこんなもんじゃないって思ってることも事実だし。でも、それをやっとストレートに皮肉に思わずに歌えるようになったと言うか、音楽の前ではウソをつけないっていうのがここ2年ぐらいで強まってきてるんで、自然と、こんなところに止まってちゃいられないって気持ちが出ましたね。

-歌とメロディが残る、いい曲を作るバンドなんだけど、同時に持っている反骨精神や不屈の闘志が今回、歌詞にもはっきりと表れましたね?

光村:結構すんなりできたんですよ。前回の「まっすぐなうた」」(2015年6月リリース、17thシングル表題曲)が自分の中から出てきて、今は、この歌をまっすぐに届けることだけに全神経を注いでいけばいいと思ってたところだったから、曲に関しては、その勢いで書けたんですよ。でも、歌詞については、じゃあ今、自分の中の1番ピュアな気持ちって何だろうっていうことを考えたんですよね。新人だったら大袈裟に夢とか希望とか歌ってても様になると言うか、何もわかっていない無知さが逆に強さになり得るし、かっこいいと思うんですけど、僕らもうしっかり中堅だし、100曲目だし、そうじゃないだろうって。実際、音楽やってても楽しいことばかりじゃなかったし、どうやったら自分たちの音楽の中身が伝わるかって考えたし、平たい話、もっと売れると思ったのに売れなかったこともあったし(笑)。理想を抱きながら、厳しい現実もいっぱい経験してきたって意味では、新人のころとは明らかに違うんですけど、でも、それは僕らだけじゃなくて、同じ想いをしてる人たちは同世代の友人や知り合いにもいっぱいいるんですよね。だから、まっさらなと言うよりは、ちょっと砂埃かぶってるとか、細かいキズが入ってるとか、そういう絵は自分の中にイメージとしてあったんですよ。歌詞の"つむじ風"とか"渦"とかはそういうところから来てるんです。風も砂埃を巻き上げてるようなね。でも、ちゃんと吹いてる。ちゃんと蠢いてるという感じは、僕らの中にもちゃんとあって、その気持ちを歌にしたいと思ったことが最初、歌詞を書いたきっかけでした。意外とね、そういう細かい傷がついてるとか、砂埃をまとってるとか、そういう人のほうが酸いも甘いもわかっていて、そこから出す本当の力って、ピュアな何も知らない力よりもよっぽど力強いんじゃないかって。その気持ちを自分の中でも爆発させたかったし、それを言葉にできたら、自分と同世代の人たちの気持ちも奮い立たせるような曲になるんじゃないかという僕なりの、今だからこそ歌いたいストレートな気持ちっていうのを意識したんです。